30.（オマケ）謝罪より感謝を
番外じゃないけど…続き風〜♪
「ゴメン…。もう平気だから――」
涙が落ち着いた頃を見計らって、瀧は慎埜の腕から逃れた。
あれからどれくらい時間が経ったのかはわからない。
しかしかなり長い時間が経ったのは確かだった。
「――なんで謝るんだ？」
「ぇ？」
いきなり振られた言葉は瀧の予想にないものだったので、反応することが出来なかった。
「なんで謝ったんだ？」
どうやら謝ったことが慎埜の気に触れたらしい。
さっきまで笑っていただろう顔が険しくなっている。
「なんで？」
「ぇ…と別に…、なんとなく…」
「悪いと思ってるんだ？」
「……ぅん」
慎埜が何を言おうとしているのか、瀧にはわからなかった。
ただ今までの彼とはあまりに違うその態度にいくらか不安になる。
「―瀧にとって俺の前で泣くのは悪い事なんだ？」
怒っているのは確かだが、どこか――本当にほんの少しだけど寂しそうに見えた。
瀧はなんて答えたらいいのか言葉に困る。
茫然と立ち尽くしている瀧の腕を慎埜が引っ張り、またその腕の中に閉じ込める。
「俺の前では……泣きたくない…？」
抱きしめた瀧の耳元に届く抑えた声。
慎埜にしては珍しく少し掠れたその声。
「…泣くのは…いや…か？」
「――…に言って…」
「俺に……迷惑はかけたくない？」
「…迷…惑……？」
「だから謝ったんだろ？」
悲しそうな顔だった。
寂しそうにも似ている気がする。
「―俺は別に構わないよ…。瀧が俺以外の奴の前で泣くぐらいなら…俺の前でだけ泣いてほしい…」
『俺の前で瀧は泣いたことがないから』
不意に屋上での光景がフラッシュバックされる。
『俺の前では瀧は弱いところ見せたことがないから』
あまりその言葉について深く考えた事はなかった。
『俺は頼って欲しかったけど…』
その時だけの言葉として、瀧は処理していた。
でも……。
「…謝らなくても…いいって事？」
「そういう気遣いはいらない」
仏頂面だがその顔にはもう、怒りは見受けられなかった。
「わかった…。―ありがと」
謝罪の言葉を感謝の言葉に直して――、そのままの体勢で慎埜を見上げた瀧は、その顔の近さに心臓が止まりそうになりながらも、とても綺麗な笑顔を浮かべた。
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マタネー♪(ｏ・ω・)ノ))
