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27.獅夜(シヤ)

――楽しかった♪――

それが瀧の正直な感想だった。

大変だったのは確かだが、それを突破するためにあるこれと考えることはなによりも楽しかった。

しかもその相手は自分と同等で、相手は5人もいたのだ。

武者震いすら感じる状況だったのは確かだった。

――やっぱりバスケは好きだな――

そんな事を思いながらもいつもよりかなり遅くなった帰路を歩いていく。

「ドロボー!!!!」

と切羽詰まった声が聞こえたのはそう遠い場所の出来事ではなかった。

キョロキョロと辺りを見回してみると、一箇所に視線が集中しているのがわかり、そのまま一直線に遠ざかっていく人影もわかる。

どう考えても犯人に間違いないだろう。

瞬間瀧の足は動いていた。

バスケ部で鍛えた今だ衰えぬフットワークで人波を擦り抜け、最短と思われる距離を一直線に走っていく。

幸にも犯人は人波を掻き分けるのが不得手らしく、瀧が犯人に迫るのは容易だった。

機敏さには自信もある瀧は、最近テレビか何かでちらっと見た護身術をかける。

正面から瀧を掻き分けようとする相手の腕を掴み、相手の速度と自分の腕力を力いっぱい使って後ろ手に捻り挙げる。

走っていた所を急に阻まれ体制を崩した犯人は呆気なく不様に倒れた。

それを押さえ込んで呆然としている辺りの人間に声をかけ、数人の人に押さえてもらいながら、男が手放した女物のバックを手に取り、座り込んでいる女性の方へと歩いていく。

人垣が自然に別れるがそんなことに気を配ったり、怖じけづいたりはせず、唯真っ直ぐに女性の傍らに屈み込むと、そっとバックを差し出した。

ゆっくりと上げられる女性の顔を直視した途端、瀧は瞬きを繰り返した。

「―獅夜(しや)さんっ―!?」

「―…瀧ちゃん…?」

瀧を真っ直ぐに見つめるその女性は、長い漆黒の髪と誰かに似た顔立ち――何度か会ったことのある慎埜のお姉さん――神林獅夜だった。


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