25.不利な勝負
「そろそろ始める」
とその言葉を聞いたときには、瀧の身体は汗を噴くほど上気していた。
どうやらコート全てを使うらしく、四方八方に5人が配置されていた。
「馬鹿」
「じゃあ負けて?」
「無理。私は入って欲しいからね」
一番近くにいるのは中学の仲間で、ライバル関係にあった。
2人で軽口を叩きながら、ボールを受け取る機会を探る。
パスを出すのは慎埜を指名し、その一回のパスのみ場所を考えることが出来た。
慎埜なら戸惑うことも、もたつくこともなく、機会を作ればパスを決めるという信頼があった。
五対一。
圧倒的に不利な勝負だが、だからこそ瀧は内心ワクワクしていた。
難しいと言われれば言われるほど、燃えるタイプなのだ。
5人の配置からゴールまでの距離、そして相手の出方。
それら全てを考えながら、瀧は動いた。
ゴールに向かって疾走する。
ボールは遥か背後である。
呆気に取られて動くのが遅れた5人の上を、慎埜の絶妙なパスが通り過ぎた。
「ナイスパス!!」
一気にゴール手前まで進んだ所で慎埜の絶妙なパスを受け取る。
いち早く動いたセンターの一人を除くと、あとはシュートを入れるだけである。
背の高い瀧より高い身長がある。
――下は無理だな――
レイアップやジャンプシュートを諦めると、3Pのラインまで離れて相手を窺う…のもつかの間、何のそぶりもモーションもなく、瀧はシュートを放った。
瞬間瀧はダッシュをかけて一気にゴールに迫る。
――外れた――と確信するのは瀧も慎埜も同時だった。
ボールの軌道を見越して瀧がそちら側に回るも、一拍遅れて防ぐことも出来なかった後の4人も加わり、総勢でゴール下を固めていた。
タンッ――と軽快な音をたてて、ボールは相手の手に渡った。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
この小説は2・3年前に書いたもので、手は加えていません(笑)
バスケ部だった為に(ヘタレでしたが)ちょっと描写がまとも…かな?
何はともあれ残り5話になります。
最後までお付き合い頂けると有り難いです。
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