僕が君に出会った日、君は僕に出会った。
なんだろうな。
自分で読んでもわかりづらく感じます。
でも直し方がわからない。
わからにゃいにゃー。
さて、説明不足も甚だしいので少しだけここで説明をしようと思う。
あれはいつだったか。確か、二週間ほど前。梅雨も明け、うだるような暑さの日だったことを覚えている。
ただただ、蝉の声がうるさかった。
暑い…。
学校からの帰り道、セミの声がうるさく、イライラを増加させる。
汗ばんだシャツは肌に張り付き、その感触が気持ち悪い。
護身用としていつもガスガンを忍ばせている通学カバンがやけに重く感じる。
そんな簡単なことで世界に大して恨みを抱くような、どこにでもいるような高校生が俺だ。
俺の名前は齋藤飛鳥。
漢字は飛鳥時代の飛鳥。
よく女みたいな名前と言われるが、結構気に入っている名前である。
しかしまぁ、なんで夏っていうものはこうも毎年毎年律儀に暑くなるのだろうか。
少しは意外性というものを出して欲しい。
なんなら雪でも降ってくれるくらい寒くなれば、少しは夏に対する印象もかわってくるのではないか。
…何よりもなぜうちの学校には水泳がないのだろう。
そうすれば、こんな暑い日も少しだけ学校に行くのが楽しみになるというのに。
何より水着姿の女の子が拝める。
それだけで夏というものが好きになるだろう、と、俺はそう考える。
…いや、わかっているのだ。もしも本当に寒くなったりしたら、『夏は夏らしく暑いほうがいい』と俺は思うのだろう。
それくらいには自分のことは知っている。
それでも、この暑さには、そのくらいのことを思っていないとやっていけないと思う。
そんなことを考えている間に家につく。
この時間に親はいない。
オヤジは仕事、母親は習い事。
ちなみにこの日は五分で鍵が見つかった。
しん、とした家の中に入り、そのまま階段を登る。
俺の部屋は二階にあり、そこで最近買ったゲームをやるのだ。
倒せないボスがいる。
友達に借りたゲームだったが、思いの外はまってしまい、今では家にいる時間のほとんどをゲームにつぎ込んでいる。
今日こそは倒すと心に決めて。
扉を開けると。
そこには女がいた。
…え?
「は?」
あまりの急展開で皆ついてこれてないだろう。
大丈夫、俺もだ。
この時の俺は、本当に頭が真っ白にあるっていうことがあることを、実感していた。
フリーズ。
何も考えることができない。何をしていいのかわからなくなった。
そして、それは女も同じようで、止まっている。
あまりの急展開で皆もついてこれてないだろう。
大丈夫、俺もだ。
おい、どうした斎藤飛鳥。
こんな時のために普段から想像力を働かせて対処法を考えているんじゃないか!
体は熱く、頭は冷やせ。
止まるな、動け。それがお前の今することだ!
頭の中の対処法を開く。
大丈夫、どんな場合でも動けるようにイメージトレーニングはバッチリだ!!
対処方24!!家の中に見知らぬ奴がいた場合!!
俺は即座に通学カバンに手を突っ込み、ベレッタを取り出す。
カバンを相手に向かって投げて牽制し、その隙にセーフティーを外し、装填す
「動かないで」
…装填する前に、女にスプレー缶のようなものを向けられていた。
このスプレー缶は知っている。
前に俺が通販で買った、痴漢撃退用のスプレーだ。いつも枕の下においてある。
つまりはあれか?
時間稼ぎの為に投げつけた俺のカバンを女は華麗に躱し、枕元に置いていたスプレーを取り出し、俺に向けたと。
対処法36。泥棒が押し入ってきたときの対処法。そのイメージトレーニングどうりの動きである。
確かに効果的、さすが俺。伊達に非常事対処法を108つも考えたわけじゃな
「何にやけてるの」
あぁ、なんだ、にやけてたのか、俺。
別にいいだろ。そんなこと泥棒…この女は泥棒だろう。多分。
そんな奴に指摘されるのもなんだかむかつく。
いやだって、自分がされたとはいえ、こうもうまく動けなくなると、俺の考えは間違ってなかったって思って…。
「…なぁ」
「何?」
「お前もにやけてるぞ」
「ば、え?…にやけてない」
「いや、ニヤけてる。なんでだ」
「…別にいいじゃない。私がにやけてようとなんだろうと。
女は一度深呼吸。
「…それより、あんた誰」
「それは俺のセリフだ。お前こそ誰だ」
「強盗に聞かれて答えると思う?」
「誰が強盗だ。お前こそ泥棒だろうが」
「人の部屋に勝手に入ってきて、なんて言い草」
「こっちのセリフだ。ここは俺の部屋だ」
「はぁ?馬鹿言わないで。ここは私の部屋」
「それこそこっちのセリフだ。馬鹿言うな。ここは俺の家の俺の部屋。時狭間三丁目25番地6。齋藤家次男、飛鳥の部屋だ」
「そうね。たしかにここは齋藤明日香の部屋よ。でも次男じゃない。次女の部屋。私の、部屋よ」
「…」
「…」
「はぁ!?それは一体なんのギャグだ!?」
「こっちが言いたいわ!なに!?どういうこと!?」
「なんだそれ。なんだ?!ドッキリか!?カメラでもあるのか!?看板でも持ってくるんのか!?」
「あんたこそなによ!ふざけんな、カメラとか信じられない!乙女の部屋を盗撮して何する気!?てことはもしかしてさっきの着替え撮られてるの!?」
「なら証拠見せてみなさいよ!」
「机の引き出し三番目の奥に1万ある!」
「なんでそんなことあんたが知ってるのよ!?」
「俺の部屋だからだ!!」
「私の部屋だって言ってんでしょ!!」
「お前の部屋だってんなら網戸がない理由を答えろ!」
「ゴキジェットとライターで火炎放射器って遊んでたら燃えたからよ!」
「人から改めて聞くと馬鹿だな!」
「うるさいわね!!」
「ならあそこの扉を開けると屋根裏が…」
「ふざけんな!それは開けてはいけないパンドラの…」
その後十分、言い合いは続いた。
あぁ実のところ、わかっていた。
頭でなく感覚で。
理解せずとも納得し、疑問を持たずに答えを得た。
そうでなければもう少し慌てている。
知らない女が自分の部屋にいたのだ。それなのに、俺は割と落ち着いている。
それは、多分、分かってしまっていたからだ。
「つまり、なんゲホっ。なんだ?」
「あんたは、ゼー、この部屋に、ゼー、住んでるの?」
「そうだよ。…ふぅ。俺はこの部屋に住んでいる」
「す-…はぁ。ねぇ、あんたの名前は?」
「あ?さっき言っただろ。斎藤飛鳥だ。斎藤は難しい漢字の齋に、藤の花の藤。飛鳥は飛鳥時代の飛鳥だ」
「私の名前も斎藤明日香。…でもちょっとだけ違うんだね。苗字は同じ。難しい齋藤。だけど、漢字は、明日、香ると書いて明日香」
それは、その名前は。
頭の中が、引っかかれる。
その名前は、知っている。
「あぁ、それ、知ってるぞ。その名前。オヤジに聞いた」
「私もあんたの名前、知ってる。お父さんに聞いた」
「俺が生まれたとき、性別を聞かなかったらしい」
「だから、男が生まれても女が生まれても大丈夫なように名前を付けた」
「だけど、漢字は変えた。女の子だったら。ふと忘れても、まるで懐かしい香りのように。思い出を導いて、明日を歩ける原動力となるような、優しい女の子になって欲しいから」
「男だったら。大空をとぶ鳥のように。どこまでも自由でいて欲しいから」
「だから、明日香。明日、香ると書いて、明日香」
「だから、飛鳥。飛ぶ鳥と書いて、飛鳥」
分かってしまっていたんだ。
あぁ、つまり。
「そういうことなんだ…。」
君は、俺で。
「あんたは、私なのね。」
ここにいるのは、俺。女の子ではあるが、間違いなく、俺であると。
第六感でも霊感でも直感でも虫の知らせでもなんでもいい。
頭ではなく、心で。
こいつは、俺だとわかったんだ。
誤字脱字、感想等お待ちしております。