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帰宅

少しでもあなた様の暇を潰せる事を祈って。

最近地球は壊れてきたんではないかと思う。


なぜそんなことを思うのか。

だって考えても見ろ。

今は七月だぞ?


なんで七月の中盤にもなって長袖を着なければいけない。

俺は正直暑い時期は熱くなければ気が済まないタチなんだ。


それだけじゃない。


ゲリラ豪雨もしかり。他には、えーと、あー。あれだ。いろいろあるだろう。

パッと思いつかないけど、10年前などには全くなかった災害が色々とこの地球には溢れている気がする。


本当にこの世界は壊れてきたんではないかと、俺はそう思う。


つまりは夏のくせに寒いと感じるほどのこの気温が悪い。

つまり政治が悪いのだ。

いいかげんにしろ。小遣いが安いのも部屋で隠していたチョコレートにカビが生えていたのも全部全部、政治が悪いのだ。


あぁ、もう、寒い!!



とまぁ、そんなのは家に帰るまでの暇つぶしのようなものだ。

気づくと家の前にいた。

少し都心部から離れたよくある二階建て一軒家。


家の前には母親が少しだけはまっていたガーデニングの植木鉢が置かれている。


ちなみに今は何も生えていない。

飽きたのだ。母親が。


その植木鉢をひっくり返す。


その下をみるが、


「…今日は違うところか…」


そこにあったのは、『外れ』と書かれたプラスチックの板。


うちの母親は世間様いわくお茶目らしい。

その一端がこれだ。


最初は普通に家の鍵を植木鉢のしたにおいていた。

しかし、あるとき、警察密着のあれか何かを見たらしく、防犯意識に目覚めたら

しい。


その場合、よくあるのは家にいるひとりひとりに鍵を持たせ、他人が手に入ると

ころには鍵を置かない、というものが普通だろう。


うちの母親は違った。


よくある隠し場所に、ダミーの鍵と、外れと書かれたプラスチック板をおいたのだ。


その数数十個。


そして、毎日母親の気分で本物の鍵の隠し場所は変わる。

最近お気に入りだった植木鉢のしたは、残念ながらなかった。


…さて、今日は何分で家に入れるだろうか…。




結果、15分でした。

学校から帰ってくる時間よりも鍵を探している時間の方が長かった…。




探し出した鍵を差し込み、家に入る。

しん、とした空気が俺を出迎えた。



ただいま。



返事はない。この時間は両親ともに居ない。学校からまっすぐ帰ってきたこの時間、父親は会社だし、母親は…なんだ?多分何かの習い事だ。

しんと静まり返った家に上がり、今日体育で使った体操着を洗濯場へ放り出す。


うちの学校に水泳が無くてよかった。


もし今日の体育が水泳だったらと考えると、本当にそう思う。

多分俺の唇は紫色になっていたのは間違いないだろう。


体操着を洗濯場に投げた俺は台所により、飲み物とコップを持って階段を上がる。


自分の部屋の扉の前に立ち、一息つき、そして扉を開けた。


ただいま。


最近地球は壊れてきたんではないかと思う。

俺がそれを思う最たる原因は、俺の部屋にある。

俺が今持っているのは、通学カバンと、飲み物、そして、コップが『二つ』だ。




「おかえり」




誰もいるはずのない部屋から返事が返ってきた。俺のいつも部屋着にしているジャージを着て、そこには俺が居た。


いや、それは俺じゃない。


パーツパーツは俺によく似ている。


でも、ぱっと見ただけで違うとわかる。

そいつは俺でありながら俺じゃない。


…だって、そいつは、女なんだから。


俺の部屋には女の『俺』が住んでいる。










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