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雅びに、そして幸ある道を
――断末魔。
真っ白に輝く銀世界。舞い散る銀の結晶は、全てを洗い流すように静かに積もっている。
人里離れた山奥、そこに人ならぬ者の地鳴りのような、重い咆哮が響き渡る。
葉が落ち今は枯れてしまった木のそばで独り、無表情にそれを聞く男がいた。烏帽子を被り、鼠色の狩衣を纏った男。
彼の者――名を安倍晴明という。
咆哮とともに消えた妖しの跡に、真っ白な産着に包まれた赤子を見つける。
「この子は……!」
赤子がうっすらまとう瘴気は、気づく者もそういないだろう。ごく僅かの瘴気は、彼に全てを語った。
「天は赤子を運命という鎖で繋いでしまわれたか…」
ならばせめて、赤子の歩む道がこの京に舞い降りる雪のように、雅びに、そして幸ある道となることを……