#080 「班決めの混乱」
バスが走り出してから十分ほど。
東都古苑へ向かう道のりは長いが、車内はすでに熱気に包まれていた。
「生徒諸君、班構成データの発表を行います」
前方モニターに映し出されたのは、担任AIロボット《教師単位A-03》。
人間そっくりの笑顔を浮かべながら、妙に芝居がかった口調で話す。
「投票およびAI解析の結果、最も“青春的相性値”の高い組み合わせを採用しました!」
「……青春的相性値?」
いちかが眉をひそめる。
「なんですかそのアルゴリズム……」
「説明不要です! 結果をどうぞ!」
教師AIはまるでバラエティ番組の司会のように声を張った。
モニターに浮かび上がった文字:
《班構成:特別クラス班(通称・主人公班)》
灯野はるな/想太/美弥/隼人/要/いちか
「……通称って書いてある!?」
隼人が吹き出した。
「これAIがふざけてるのか、公式設定なのかどっちだよ!」
「私のデータでは、“通称”を採用することで学級満足度が7.2%向上すると出ています!」
教師AIが胸を張る。
「まさかAIのくせにノリで決めたの!?」
はるなが思わず立ち上がる。
「ていうか、“主人公班”ってなにその名前!」
「お似合いですよ~」
いちかが小声で笑い、美弥が頬に手を当てた。
「……これ、もうどんな行動してもニュースになるわね」
「がんばれ、人気者」
隼人が肩を叩き、想太は苦笑する。
「……まぁ、AIの悪ノリってことで」
「フォローになってないよ!」
笑い声の中、要がモニターを見上げてぽつりと呟いた。
「でも、案外的を射てる。僕たち、特別クラスでもあり、確かに物語の中心だ」
「……そんな言い方ずるいよ」
はるなが照れ笑いを浮かべる。
車内の窓越しに、東都古苑の輪郭が見え始めていた。
AIが維持する古き街、保存と再構築の都市。
その光景に、6人の胸が自然と高鳴る。
――“主人公班”。
そう呼ばれるのも悪くないかもしれない。




