表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
79/108

#079 「出発の日」

朝の駅前は、早朝とは思えないほど賑わっていた。

制服姿の生徒たちが笑い声を上げ、バスのエンジン音が響く。

カメラを持つ教師、忘れ物を取りに走る生徒──まさに修学旅行の混沌だった。


「おーい、こっちこっち!」

想太が手を振ると、はるなが駆け寄ってきた。

「おはよう、想太くん。なんか……人が多すぎて落ち着かないね」


「そりゃあ、全学年合同だからな」

隼人が荷物を肩にかけて笑う。

「でも、これだけいてもさ、結局あいつらが目立つんだよな」


視線の先には、すでに人垣を作っている女子グループ。

――「灯野はるなファンクラブ」「美弥推し連盟」「いちか守る会」。

いつの間にか三大勢力が結成され、現地集合前から熱気が爆発していた。


「うわ……もうポスター持ってる……」

いちかが引きつった笑顔を見せる。

「これって、修学旅行じゃなくてライブじゃない?」


「ライブだな、これは」

要が腕を組み、冷静に分析する。

「バスの号車ごとに“担当”がいるらしい。僕たちの班は――」


「――A号車、“はるな班”だって」

美弥がため息混じりに告げる。

その声に、周囲から歓声が上がった。


「……え?」

はるなは一瞬固まる。

「ちょ、ちょっと待って、それ私、車内でずっと見られるやつじゃん!」


「がんばれ、人気者」

隼人が肩をぽんと叩き、想太は苦笑いした。

「……まあ、いつものことだよ」


「フォローになってないよ、それ!」


笑い声が広がり、車内への案内放送が流れる。

はるなは深呼吸しながら、自分の荷物を抱え直した。

バスのドアが開き、行先表示のプレートが輝く。


『修学旅行:東都古苑行き』


「さあ、出発だ!」

隼人が声を上げ、6人は並んでバスに乗り込んだ。

窓の外では、黒い車列がゆっくりと動き出す。

久遠家のSPたちが別ルートで並走し、旅の安全を確保している。


想太の端末に一瞬だけ通信が入った。

『護衛班A、問題なし。みなさん、良い旅を』


短いその声に、6人は自然と微笑みを交わす。

誰にも見えないところで、自分たちを支える人たちがいる。


――久遠野から外の世界へ。

少しだけ大人になった彼らの旅が、静かに動き出していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ