#078 「大人への扉」
ホテルから離れ、駅へと続く道に6人の影が並んでいた。
夜は深まり、街の灯りは少しずつ数を減らしている。
「結婚式って、ただのお祝いじゃないんだな」
隼人が呟いた。
「大人たちの覚悟とか、責任とか……。そういうものを背負う場なんだ」
「確かに。プロジェクトとか部下の育成とか、二次会で聞いた話もすごかった」
想太は思い返し、胸の奥がざわつくのを感じていた。
「でも、どれも素敵に見えたよ」
はるなが歩きながら笑った。
「誰かと支え合って、未来を作るって、すごく勇気がいるけど……きっと幸せなんだと思う」
「私は今日、覚悟を学んだ気がする」
美弥は真剣な声で言う。
「自分だけじゃなく、相手や家族を背負って生きるってこと」
「うん。私も……」
いちかは頷き、要の隣で小さな声を重ねた。
要は静かに言った。
「僕たちも、いつかは同じ道を歩く。大人になるというのは、責任を持つことだ」
「責任、か……」
想太はその言葉を噛み締めながら、はるなを見た。
はるなも視線を返し、頬を赤くして俯いた。
沈黙は気まずくなく、むしろ心地よい余韻を含んでいた。
それぞれが未来を想い描きながら歩く夜道。
街角に差しかかると、少し離れた場所に久遠家のSPの影が見えた。
彼らが守っているからこそ、この静かな時間がある。
6人は気づいても、何も言わず歩き続けた。
「今日は、なんだか背が伸びた気分だな」
隼人が冗談めかして言うと、みんなも笑った。
「うん。大人の世界をちょっと覗いたからかも」
はるながそう返し、自然に拍手のような笑い声が広がった。
駅の明かりが見えてきたとき、誰もが同じ思いを抱いていた。
――もう子どもじゃない。
けれどまだ完全な大人でもない。
結婚式という扉の向こうに、大人の世界が広がっている。
6人はその扉の前に立ち、未来へ進む準備を始めていた。




