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#071 「披露宴の始まり」

チャペルでの式を終えると、会場は披露宴ホールへと移った。

白いクロスのかけられた丸テーブルが整然と並び、天井からは大きなシャンデリアが輝いている。

6人はSP君の同僚たちと同じ卓に案内された。


「わぁ……料理、すごい」

いちかが目を丸くする。

テーブルの上には色鮮やかな前菜が並び、グラスにはシャンパンが注がれていた。


「こういうのって、テレビでしか見たことなかった……」

はるなも興奮を隠せない。

美弥は冷静にカメラを構え、「一応、記録」と呟いて写真を撮った。


やがて司会者の声が響き、披露宴が始まった。

「新郎新婦の入場です!」


扉が開き、SP君と花嫁が姿を見せる。

花嫁は先ほどよりもリラックスした笑顔を浮かべ、SP君も柔らかな表情で隣に立っていた。


「おめでとう!」

隼人が声を張り上げると、会場全体からも拍手と歓声が広がった。


乾杯の音頭を取ったのは、SP君の直属の上司だった。

「本日は我らが同僚、そして未来を担う若者の晴れ舞台です」

そう言ってグラスを掲げると、会場に大きな拍手が湧いた。


「未来を担う……?」

想太は小さく首をかしげた。


すぐ横で同僚たちがひそひそと話しているのが耳に入る。

「まだ新人なのに、あの子たちを呼べるなんて……」

「やっぱり只者じゃないな、SP君」


その声に、花嫁が驚いたように隣を見上げた。

「えっ……そんなにすごいことなの?」


「もちろんだよ。あの6人は久遠野でも特別な存在だ」

同僚の一人が誇らしげに答える。

「彼らを参列させられるなんて、もう出世は約束されたようなものだ」


「……」

花嫁は息を呑み、SP君の横顔を見つめた。

寡黙で頼りないと思っていた彼が、実は大きな未来を背負っているのだと、初めて強く実感した。


「ほんと、すごい人なんだね……」

花嫁のつぶやきに、SP君は少しだけ照れたように視線を逸らした。


「おいおい、俺たちってそんな有名か?」

隼人が照れ笑いを浮かべると、美弥が「自覚しなさいよ」と冷たく突っ込む。


要はグラスを手に取り、静かに言った。

「注目されるのは悪くない。だが、それに値する行動を取る必要もある」


「う……重いなぁ」

想太が苦笑すると、はるなが小声で「でも、そうだね」と頷いた。


料理が次々と運ばれ、会場は祝福と笑顔で満たされていく。

華やかな音楽、笑い声、そして未来を語る大人たちの声。

その中で6人は、自分たちの立場と役割をあらためて意識していった。


――披露宴の始まり。

それはSP君の門出であると同時に、6人の未来を映す鏡でもあった。

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