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#070 「祝福のフラワーシャワー」

チャペルの扉が開き、光の中へ新郎新婦が姿を現した。

一斉に歓声が上がり、列席者たちが両脇に並ぶ。

手には色とりどりの花びらが握られていた。


「わぁ……」

はるなが目を丸くする。

花嫁のドレスは陽光を受けてさらに輝き、SP君のタキシード姿は普段以上に凛々しい。


「さぁ、投げろ!」

隼人が勢いよく叫び、両手いっぱいの花びらを放り投げた。

その声につられて周囲の列席者たちも次々と花を舞わせる。


ひらひらと舞い散る花びらが風に乗り、二人の頭上に降り注いだ。

白や赤、ピンクの花弁が光を受け、きらめきながら宙を踊る。


「すごい……本当に映画みたい」

いちかは胸の前で手を合わせ、目を輝かせていた。


「シャッターチャンス!」

美弥はすかさずカメラを構え、夢中でシャッターを切る。

「後でアルバムにしてあげようっと」


想太も花びらを投げながら、どこか気恥ずかしさを覚えていた。

けれどはるなの笑顔を見た瞬間、その照れはすぐに吹き飛んだ。

彼女の頬に花びらがひとひら落ち、その笑顔は光に溶けるようにまぶしかった。


「……きれいだ」

想太は小さく呟いた。

それは花嫁だけでなく、隣にいるはるなへの言葉でもあった。


要は冷静なまま、しかししっかりと拍手を送っていた。

「こうして人は儀礼を通じて祝福を共有する。……悪くない」

その言葉に、隼人が「固いこと言うなよ!」と笑いながら肩を叩いた。


花嫁は少し恥ずかしそうにうつむき、SP君は珍しく列席者へと視線を向けた。

そして、いつになく大きな声で言った。

「皆さん、本当に……ありがとうございます!」


その瞬間、場の空気がさらに温かく包まれる。

滅多に感情を出さないSP君の声に、6人は思わず目を見張った。


花嫁も驚いたように振り向き、6人の姿に気づいて目を丸くした。

「あっ……あなたたち……有名な方々だ!」


「えっ?」

はるながきょとんとする。

「有名って……私たちが?」


「もちろん! 久遠野の街で、あなたたちの話を耳にしました」

花嫁の瞳は純粋な尊敬と驚きで輝いていた。

「まさか本当にお会いできるなんて……!」


「……へへ、聞かれてたんだな」

隼人が照れ笑いを浮かべ、いちかは思わず「すごい……」と呟く。

美弥は小声で「こういうの、やっぱり広まってるんだ」と納得したように頷いた。


花びらはまるで祝福そのもののように舞い、空を覆う。

その光景に、6人はしばし見とれた。


――結婚。

遠いと思っていたその未来が、ほんの少しだけ近くに感じられた瞬間だった。

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