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#066 「移動の車内で」

結婚式当日の朝。

6人は指定された送迎バスに乗り込んだ。

窓には白いリボンが飾られ、どこか祝いの雰囲気が漂っている。


「うわぁ……なんか、もう特別って感じ!」

はるなが座席に腰を下ろしながら声を弾ませる。


「ほんとだね。普段の遠足バスとは全然違う」

いちかも目を輝かせて辺りを見回した。


「リボンが揺れてるの、かわいいな」

美弥は小さく微笑んだが、すぐに表情を引き締める。

「でも、結婚式って……やっぱり緊張するね」


「俺なんか胃が痛くなってきた……」

想太はネクタイをいじりながら呻いた。


「おいおい、まだ始まってもないぞ!」

隼人が豪快に笑い、背もたれに身体を預ける。

「大丈夫だ。俺のタキシード姿で全部場が和む!」


「和むというより、浮くだろうな」

要が淡々と突っ込む。


車内には笑い声が広がり、緊張が少しだけ和らいだ。


窓の外では、街並みが少しずつ変わっていく。

学校周辺の賑やかさを抜け、落ち着いた住宅街へ。

さらに進むと、緑の多い郊外の道に出た。


「式場って、こんなところにあるんだ」

はるなが息をのむ。


「結婚式場って非日常を演出するために、こういう場所に建てるんだよ」

要が静かに解説する。

「日常と切り離すことで、印象が強く残る」


「なるほどなぁ……なんか大人っぽい」

想太は感心しながら外を眺めた。


「でもさ……結婚かぁ」

隼人がぽつりと呟く。

「正直、全然イメージできねぇ」


「私も」

美弥が小さく頷く。

「でも……いつか自分の番が来るのかな、って考えちゃう」


「……」

はるなはその言葉に胸が高鳴った。

窓の外の緑が揺れ、心まで揺れるようだった。


「僕はまずネクタイ慣れかな……」

想太が苦笑すると、いちかがくすりと笑った。

「似合ってるよ。心配しなくて大丈夫」


「そ、そうかな……ありがとう」

想太は赤面し、はるなは少し拗ねたように前を向いた。


バスはやがて広い道へと抜け、遠くに白い建物が見えてきた。


「……あれ?」

いちかが指さす。


「たぶん、あれが式場だ」

要が即座に断言した。


高台にそびえる白いチャペル。

青い空と重なり、輝くように見えた。


「すごい……本当に、おとぎ話みたい」

はるなが呟いた瞬間、車内は一斉に息をのんだ。


――まもなく、SP君の結婚式が始まる。

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