#061 「勝敗の行方」
午後の競技も次々と終わり、校庭には再び緊張が走っていた。
アナウンスが高らかに響く。
「現在、赤組と白組の得点は同点! 勝敗はこの最終種目に委ねられます!」
観客席がどよめき、応援団の声がいっそう熱を帯びる。
「おおーっ!」
「最後だーっ!」
最終種目は大玉送り。
赤と白の巨大な玉が校庭いっぱいに転がされ、どちらが早くゴールに到達するかを競う。
「マジか……まるで漫画みたいな展開だな」
想太は呆れ笑いを浮かべる。
「漫画だろうと現実だろうと、勝つしかない!」
隼人は拳を握り、目を輝かせた。
「冷静に動かないと崩れる。全員で力を合わせろ」
要の声が響き、全員がうなずく。
「……頑張ろうね」
はるなが小さく呟くと、想太は微笑んで頷いた。
スタートの合図が鳴る。
「いけーっ!」
掛け声と共に、巨大な玉が転がされる。
赤組と白組、両方の玉が校庭を揺らす。
観客席は総立ちになり、声援が渦を巻いた。
「押せーっ! もっと右だ!」
隼人が号令をかけ、想太が必死に押す。
はるなも女子生徒たちと力を合わせ、汗を流した。
「がんばれー!」
美弥といちかも声を張り上げ、応援に熱を込める。
赤組の玉が少しリードする。
だが白組も必死に追いすがり、差は縮まらない。
「想太、もう一踏ん張り!」
はるなの声に、想太の背筋が震えた。
――ここで負けられない。
全員の力が一つになり、赤組の玉はラストスパートへ。
ゴール直前、白組とほぼ並走する。
「いけぇぇぇっ!」
隼人の叫びに合わせて最後の力を振り絞る。
ドン――!
赤組の玉が先にゴールラインを越えた。
「赤組の勝利です!」
アナウンスが響いた瞬間、校庭は歓声の渦に包まれた。
「やったーっ!」
美弥が飛び跳ね、いちかが抱きつく。
要は小さく頷き、隼人は両手を高く突き上げた。
想太はその場にへたり込み、空を見上げる。
「……ほんとに、できすぎだな」
「でも、最高だったよ」
はるなが隣に腰を下ろし、笑顔を向ける。
汗だくの彼にタオルを差し出し、その視線を真っ直ぐ受け止めた。
二人の間に、言葉にできない達成感と温かさが広がる。
――勝敗の行方は、仲間と共に掴んだ勝利。
そして、はるなと想太の心もまた、確かに一歩近づいていた。




