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#056 「騎馬戦の乱」

開会式が終わり、いよいよ競技が始まった。

玉入れや徒競走で盛り上がる声が、校庭のあちこちから響いてくる。

そして次にアナウンスされたのは――騎馬戦。


「男子、前へ整列してください!」

先生の声に従い、想太と隼人、それに要も列に並んだ。


「うわ、これ……けっこう危険そうだな」

想太は不安げに隼人を見やる。


「心配すんな。俺が下支えしてやる!」

隼人は豪快に笑い、肩を叩いた。


「俺も参加する。騎馬のバランスは任せろ」

要は冷静な声で言い、すぐに布陣を整え始めた。


「な、なんで想太が上に乗る流れになってるのよ……」

観覧席から見守るはるなは、胸を押さえて小さく呻いた。


赤組と白組、それぞれの騎馬が校庭に集まっていく。

太鼓が鳴り響き、開始の合図を告げた。


「うおおおおっ!」

雄叫びと共に、数十の騎馬が一斉にぶつかり合う。

砂煙が上がり、帽子を奪い合う手が入り乱れる。


「想太、しっかり掴まってろ!」

隼人が肩を貸し、要が下で安定を支える。

想太は震える手で相手の帽子を狙い、必死に体勢を維持した。


「わっ……危ない!」

相手の騎馬が突っ込んできて、体が大きく揺れる。

はるなの心臓は跳ね上がり、思わず立ち上がって叫んだ。


「想太ーっ! 気をつけて!」


その声が届いたのか、想太は必死にバランスを取り戻した。

汗が額を伝うが、視線は真っ直ぐ前を向いている。


「今だ、行け!」

要の合図と共に、隼人が一気に前へ突き進む。

想太の手が伸び、相手の帽子を掴み取った。


「取ったーっ!」

歓声と拍手が湧き起こり、観客席が大きく沸く。


「やったね、想太!」

美弥がはるなの隣で声を上げ、いちかも手を叩いて喜んでいた。


「ふぅ……死ぬかと思った……」

想太は息を切らしながらも笑みを浮かべる。

隼人も「最高だったぞ!」と笑い、要は静かに頷いた。


「……もう、心配させないでよ」

はるなは胸を押さえたまま、小さく呟く。

けれどその目は、彼の勇姿に輝いていた。


――こうして騎馬戦は、大混乱と歓声の中で幕を閉じた。

そして想太たちは、観客からも仲間からも称賛を浴びるのだった。

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