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#041 「要といちかの視点」

中庭のベンチ。

要といちかは並んで座り、同じジュースを飲んでいた。


「ねぇねぇ、要くん」

いちかがストローをくわえたまま、にやっと笑う。

「想太くんとはるなお姉ちゃん、もうバレバレだよね?」


「統計的に、観測者全員が同じ結論に至っている」

要は真面目な顔で答えた。


「でしょ〜! ふたりとも素直じゃないんだから」

いちかは足をぶらぶら揺らしながら笑う。


「……しかし」

要はジュースを置き、少し考えるように言った。

「彼らが騒がれる一方で、僕たちはほとんど話題にならない」


「え? なんで?」

いちかが首をかしげる。


「単純に、すでに確定事項だからだろう」

要はさらりと断言した。


「えへへ。そうだよね、もう恋人同士だし」

いちかはけろっと笑って言った。


「……!」

要の耳が一瞬で赤く染まった。


「わっ、照れてる〜!」

いちかが嬉しそうに身を乗り出す。


「統計的に、これは……不意打ちだ」

要は目を逸らし、真顔で誤魔化す。


「もう、素直じゃないんだから」

いちかはからかうように笑い、彼の肩に寄りかかった。


その姿は、はるなと想太のぎこちなさとは対照的で、

見ている人間が思わず微笑んでしまうほど自然だった。


「……ねぇ、要くん」

いちかが小さな声で囁く。

「私たちが一番にゴールしちゃった感じ?」


「統計的に、順序はどうでもいい。

 大事なのは……今、隣にいることだ」


「……っ!」

いちかの顔がぱっと赤く染まり、次の瞬間にはにかみ笑いになった。


二人の会話は、周囲のざわめきとは関係なく続いていく。

はるなと想太の恋模様を見守りながら、

すでに自分たちの答えを出している二人の時間が、

静かに流れていた。

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