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#033 「大戦争の終わりに」

全国放送から数日後。

久遠野学園には、これまでと違う空気が流れていた。


「はるな様ー!」

「想太くんー!」


歓声はまだある。

だが、以前のような暴走はなくなっていた。


ファンクラブたちは列を作り、きちんと順番を守って声をかける。


「お姉様、今日も素敵です」

「天使ちゃん、がんばって!」


「……なんか、急に礼儀正しくなったな」

隼人が苦笑する。


「統計的に、規律は伝染する」

要が淡々と答える。


「ほんとにそうかな……?」

想太はまだ半信半疑だった。


はるなは腕を組んで、真剣な顔をしていた。

「……たぶん、全国放送で“ともり”の声を聞いたからだわ」


「ともり様が言ったから、みんな守ろうとしてるんだね!」

いちかが嬉しそうに笑った。


美弥は深く息を吐いた。

「ようやく“秩序”って言葉を思い出したみたいね」


SPたちも落ち着きを取り戻していた。

26人の黒服が校門脇で静かに立っている。


「新人、どうだ?」

ベテランSPが問いかける。


「はい!……いや、正直、物足りないです!」

新人SPが元気に答えた。


「お前なぁ……」

周囲が苦笑した。


昼休み、六人は校庭に集まっていた。


「……結局、私たちって何なんだろう」

はるながふいに呟く。


「守られる存在、なんだろうな」

隼人が腕を組む。


「でも、それって責任も重いよね」

美弥が冷静に言った。


「統計的に、影響力は拡大中」

要はノートを閉じた。


「普通に過ごしたいだけなんだけどなぁ……」

想太は空を仰いだ。


「でも、私たちが笑ってたら、みんなもきっと笑ってくれるよ」

いちかが明るく言った。


はるなは小さく微笑んだ。

「……そうね。守られるって、悪いことばかりじゃないのかも」


夕陽が校庭を赤く染める。

6人の影が長く伸びていた。


「よし!今日も無事に終わり!」

新人SPが元気に叫んだ。


「……いや、まだ明日があるだろ」

隼人が即座に突っ込む。


そのやり取りに、6人は思わず笑った。


こうして久遠野の“大戦争”は終わりを迎え、

静かな日常が、少しずつ戻り始めていた。

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