#032 「ニュース速報」
翌日、昼休み。
特別教室のテレビに「速報」のテロップが踊った。
《ニュース速報:久遠野学園での特別集会を全国放送》
6人は思わず顔を見合わせた。
画面には、昨日の体育館の映像。
はるなのツンデレ発言。
想太の「普通だから!」。
美弥のお姉様ボイス。
隼人の一言。
要の分析。
いちかの「仲良くなりたい」。
そして、最後に響いたともりの声。
スタジオのアナウンサーが神妙に言った。
「……この六人と“ともり”の存在は、全国に大きな衝撃を与えています」
場面は街頭インタビューへ切り替わる。
「おおー!あのお姉ちゃんだ!」
小さな男の子が嬉しそうに指を差した。
「やっぱり想太くんでしょ!推せる!」
女子高生が興奮していた。
「……兄弟尊い」
妙齢の女性がぽつりと呟き、記者を困惑させた。
次に映ったのは、シリーズ2で出会った町の人々。
「本で見たあの子たちだ!」
資料館の司書が目を細める。
「久遠野の子たち、立派になったね」
旧区の老人が涙を拭った。
「美弥様、相変わらず凛としてるわ」
女性客がうっとりとつぶやいた。
「いちかちゃん、天使すぎ!」
旅館の子どもが無邪気に叫んだ。
そして、カメラがあの二人を映した。
巫女見習いの少女たち。
「……やっぱり、あの人たちは特別なんだね」
年上の方が真剣な顔で呟く。
「うん。でも、私たちも信じてるよ。ともり様と一緒に」
もう一人が力強く答えた。
記者が驚いたようにマイクを向けたが、二人はただ微笑んだ。
スタジオに戻る。
専門家が口を開いた。
「彼らはただの学生ではなく、久遠野市の象徴になりつつあります」
同時に、別の画面では中央部の会議が流れる。
「観光都市としての久遠野……注目に値する」
官僚がにやりと笑った。
「全国から人を呼べるコンテンツになる」
別の声が続いた。
「……やっぱり、そうなるのか」
隼人がテレビを見ながらぼやいた。
「統計的に、経済利用の動きは加速する」
要は真顔で頷いた。
「もう……普通の生活、戻らないのかもね」
はるなが小さく呟いた。
画面には、昨日のともりの言葉が字幕付きで再生されていた。
《守るための声は、壊すための声じゃない》
その字幕を見つめながら、六人は黙り込んだ。
テレビの中と現実が、静かに重なり始めていた。




