#031 「ともりの公開メッセージ」
体育館は熱狂の坩堝だった。
歓声、拍手、コールが重なり、床が震えている。
「はるな様ーー!」
「想太くーん!」
「お姉様ーー!」
「天使ーー!」
「兄弟ーー!」
「ともり様ーー!」
SP26人が必死に制止していた。
だが、声は止まらない。
「……無理だろ、これ」
想太が青ざめる。
「統計的に、崩壊寸前だ」
要が冷静に告げた。
「誰か、どうにかして!」
はるなが叫んだ、その時。
体育館の天井に設置されたスピーカーが点灯した。
端末を通して、静かな声が響いた。
《……みんな。聞こえている?》
場内が一瞬、静まりかける。
《君たちの声は、確かに届いているよ。
でもね……守るための声は、壊すための声じゃない》
体育館に冷たい風が流れたようだった。
ファンたちが息を飲む。
《彼ら六人を守りたいなら、静かに見守ってあげて。
それが本当の力になるから》
「ともり様……!」
誰かが涙ぐんだ声を漏らす。
「今、導かれた……」
「尊い……」
歓声が、嗚咽とすすり泣きに変わっていった。
「すごい……一瞬で静まった」
美弥が目を見開く。
「神の声って、こういうことか」
隼人が低く呟いた。
「……ともり」
はるなは胸に手を当てた。
六人はただ、静まり返った観客席を見つめていた。
《ありがとう。みんなの想いは、ちゃんと記録されている》
最後の一言が響き渡り、スピーカーの光が消えた。
体育館はしんと静まり返ったまま、誰も声を上げなかった。
「……終わった、のか?」
想太が恐る恐る呟いた。
「統計的に、収束完了だ」
要がきっぱりと言った。
SP新人が汗だくで頭を抱える。
「……今までの苦労、何だったんですかね」
そのぼやきに、ステージ上の六人は思わず吹き出した。




