#030 「それぞれの言葉」
体育館。
六人がステージに立つと、空気が爆発した。
「はるな様ーー!」
「想太くーん!」
「お姉様ーー!」
「天使ーー!」
「兄弟ーー!」
「ともり様ーー!」
歓声と拍手で天井が震える。
SP26人が両脇で必死に警備していた。
「では、順番に一言ずつ」
校長がマイクを差し出す。
トップバッターははるなだった。
「……勉強の邪魔はやめなさい!」
顔を真っ赤にして叫ぶ。
「ツンデレだーー!」
男子たちが号泣した。
次は想太。
「俺は普通だから!……放っておいてくれ!」
「普通が尊いーー!」
体育館が揺れた。
三人目は美弥。
「落ち着きなさい。あなたたち、冷静さを忘れてるわ」
「お姉様ぁぁぁーーー!」
女子たちが崩れ落ちた。
四人目は隼人。
「……俺たちだって、ただの生徒だ」
「カッコよすぎーー!」
歓声が鳴り止まない。
五人目は要。
「統計的に、混乱は長続きしない。必ず収束する」
「分析カッコいいーー!」
拍手が湧き上がる。
最後は、いちか。
「えっと……みんなと仲良くなりたいな」
「天使ーーー!」
体育館の空気が爆発した。
6人は並んで深く頭を下げた。
そのとき──
カメラのフラッシュが一斉に光った。
「……マスコミ?」
はるなが顔を上げる。
体育館の後方、テレビ局の取材班が並んでいた。
「全国に流れるかもしれないな」
隼人が小声で呟いた。
「えええ……!」
想太が青ざめる。
「でも、仕方ないよね」
いちかは小さく笑った。
《……未来はもう、動き出してる》
ともりの声が端末から響いた。
体育館の熱気とフラッシュの光の中で、
六人の姿は鮮やかに焼きつけられていった。




