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#003 「ファンクラブの種」

休み時間の教室は、もう完全に落ち着きを失っていた。

席を立って窓際に集まる生徒、廊下から押し寄せてくる影。

「特別教室」が名前通り特別視されているのは、誰の目にも明らかだった。


「……ねぇ、これ、普通の授業になるのかな?」

いちかが小声で聞く。


「無理だろ。これもう祭りだよ」

想太がノートを閉じながらため息をついた。


「祭りにしては、静かにメモ取ってる人も多いけど」

隼人の視線の先では、何人かがこそこそと紙を回している。


「……あれ?」

要が眉をひそめ、立ち上がった。


机の下から一冊のノートが落ちていた。

表紙には大きく、太字でこう書かれていた。


『はるな派 会員名簿(試作)』


「……な、なんだこれっ!?」

想太が素で叫んだ。


「ちょっ、会員名簿って……!」

はるなは顔を真っ赤にして両手を振った。


「え、これ……私の名前も載ってるんだけど?」

美弥がページを覗き込み、思わず固まる。


「“お姉様枠”って欄があるぞ」

隼人がくすりと笑う。


「……派閥形成、確認」

要は冷静にペンを走らせていた。


「すごい! わたしも“いちかちゃん推し”って書いてある!」

いちかはなぜか喜んでいる。


「喜ぶなっ!」

全員から同時に突っ込まれた。


廊下の向こうから、再び声が上がる。

「はるな様こそ!」「いや、美弥先輩だ!」

「いちかちゃん派が正義!」


声は次第に大きくなり、廊下が本格的に騒乱状態になった。


「……どうしてこうなるのかな」

はるなはノートを胸に抱き、力なく笑った。


その瞬間、教室の端末が点滅した。

ともりの文字が表示される。


《……すでにファンクラブの気配がするよ》


「わかってるってば!!!」

6人の声が揃った。


教室は爆笑とざわめきに包まれ、

二年目の“特別教室”は、すでにただの学園コメディの舞台と化していた。

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