#027 「ともりの助言」
放課後の特別教室。
今日は珍しく、外が静かだった。
「……やっと落ち着いたな」
隼人が椅子に深く腰を下ろした。
「でもまだ耳に残ってるわ。“ともり様ーー!”って」
美弥が額を押さえる。
「統計的に、あの熱狂は当分続く」
要は真顔で告げた。
「勘弁してくれ……」
想太は机に突っ伏した。
「でも、ファンの人たちって……本当に敵なのかな?」
いちかがぽつりと口にする。
「敵っていうより……暴走してるだけ?」
はるなが少し考えるように答えた。
そのとき、机の端に置かれた端末が光を放った。
《……ファンは敵じゃない》
ともりの声が、静かに響いた。
6人は顔を上げた。
《彼らは君たちを守ろうとしているんだよ。
やり方は間違っていても、想いは敵意じゃない》
「守ろうとしてる……?」
はるなが呟く。
「それなら……少しは気が楽になるかも」
美弥は小さく頷いた。
「守られるだけって、少し悔しいけど……悪くないかも」
はるなは苦笑した。
「でも“2番目彼女”は敵だろ!」
想太が急に叫んだ。
「確かに!」
隼人が即座に同意する。
「“普通が尊い”って言われるのも敵よね」
はるなが突っ込んだ。
「いや、あれは……本当に意味がわからない」
想太は机に額をぶつけた。
「でも……みんなで笑えたなら、それでいいじゃない」
いちかが無邪気に言った。
6人の口元に、自然と笑みが広がった。
そのとき、ドアがノックされた。
新人SPが姿を見せる。
「本日、特別教室は平和でした。」
「信じられない……」
6人の声が重なり、教室には微妙などよめきが広がった。




