#026 「六人の会議」
放課後の特別教室。
ようやく外の騒ぎから逃れて、6人は机を囲んで座っていた。
「……はぁぁぁ」
想太が深いため息をついた。
「まさか“彼女宣言”するとは思わなかったわよ」
はるなが要を睨む。
「統計的に、早めに事実を公開する方が混乱は減少する」
要は淡々と答えた。
「減少してないから!」
想太が即ツッコミした。
「でも……ちょっと嬉しかった」
いちかが顔を真っ赤にして言った。
「公式化ってやつだな」
隼人が腕を組んだ。
「そのせいで“2番目彼女希望”とか出てきたんだよ?」
美弥が呆れ声を上げた。
「……俺の時もそうだった」
想太が机に突っ伏した。
「“普通が尊い”とか言われてたもんね」
はるなが苦笑する。
「いや……あれは本当に意味がわからない」
想太は頭を抱えた。
「要くん、かっこよかった!」
いちかが素直に言った。
「当然のことをしただけだ」
要はぶれずに答える。
「キャーーー!とか言われてたけどな」
隼人が皮肉っぽく笑った。
「尊い……って泣いてる子もいたわ」
美弥が肩をすくめる。
「俺、罪深い男になった気がする」
要がさらりと言った。
「自覚あるの!?」
全員が即ツッコミした。
「はるな様はどう思う?」
美弥がふいに尋ねた。
「……混乱しすぎ。もうちょっと普通にしてほしい」
はるなが小さく呟いた。
「普通が一番難しいんだよな」
想太が苦笑した。
「……ともりはどう思う?」
いちかが端末を見た。
《混乱も未来の一部だよ》
ともりの声が静かに響いた。
6人は顔を見合わせ、ふっと笑った。
騒がしい外とは対照的に、教室には小さな安堵が広がっていた。




