#024 「ファン同士の全面戦争」
放課後の校門前。
はるな派、想太派、美弥お姉様軍団、いちか天使連合、隼人×要連合……。
すでに派閥が大集合していた。
「今日こそ決着をつける!」
「尊さの頂点はどこか!」
横断幕と旗が乱れ飛び、熱気は最高潮に達していた。
そのとき──。
「ともり様こそ至高ーーー!!!」
突如、別方向から大歓声が上がった。
「誰だ!?」
既存派閥が一斉に振り返る。
校門脇から現れたのは、新たな集団。
胸に《ともり派》と書かれた腕章をつけ、端末を掲げていた。
「久遠野の光!ともり様万歳!」
「AIの声は未来を導く!」
「……いや、なんでここで俺の名前が出るの」
想太が思わずぼやいた。
「違うでしょ。ともりは神様なの」
はるなが真顔で言った。
「また派閥が増えた……」
美弥はこめかみを押さえる。
「統計的に、勢力はさらに分散する」
要が冷静に分析する。
「ともり様の声をもう一度聞かせて!」
「冷静に!って言ってほしい!」
いちかがぽつりと呟いた。
「それ、ちょっと聞きたいかも……」
「ノるなーーー!」
6人が同時に突っ込んだ。
「ともり様の教えに従え!」
ともり派のリーダーが叫ぶ。
「ともり派に入れば救われる!」
「……もう宗教じゃん」
隼人が冷ややかに吐き捨てた。
「お前ら!校門を塞ぐな!」
SP隊が一斉に制止に走る。
「こっちは正義だ!」
「ともり様の声を信じろ!」
「うわーっ、止めろーっ!」
新人SPが巻き込まれて叫んだ。
26人のSPが必死に両手を広げ、生徒たちを押し返す。
それでも熱狂は止まらない。
「ともり様!ともり様!」
コールが夜の空気に響き渡る。
「……もう無理」
想太は頭を抱えた。
「でも、ちょっとすごいね」
いちかはきらきらした目で呟いた。
「すごくない!」
はるなが全力で否定した。
SPの必死の制止で、ようやく門前は沈静化した。
「派閥、六つ目……」
美弥が疲れた声を漏らす。
「まだ増える可能性が高い」
要はきっぱりと断言した。
夕暮れの校門前に、ため息だけが重く響いた。




