#021 「派閥会議」
放課後の図書室奥。
なぜか机を囲んで集まる影があった。
「はるな様派を代表して来た!」
男子が拳を握りしめる。
「想太派をなめるな!」
女子が立ち上がった。
「美弥お姉様軍団を軽視しないで!」
冊子を抱えた女子が前に出る。
「いちか天使連合は癒しを広める!」
野太い声が響いた。
「隼人×要連合は譲れない!」
妄想ノートを持った女子が興奮している。
「ともり派こそ至高!」
端末を掲げる生徒まで現れた。
図書室の一角がカオスと化した。
「……これ、完全に派閥会議だな」
隼人が呆れたように呟く。
「統計的に、会議は長引く」
要は真顔で分析する。
「何の統計よ!」
はるなが机を叩いた。
「静かにしてください!」
司書の先生が注意するが、誰も聞かない。
「はるな様こそ至高!」
「想太くんこそ救い!」
「お姉様に従え!」
「天使の笑顔を守れ!」
「兄弟BLを公式に!」
「ともり様万歳!」
叫び声が重なり、机が震える。
「……カオスだな」
想太が小声でつぶやく。
「むしろ面白いかも!」
いちかがきらきらした目で見つめる。
「いちか、ノリすぎ」
美弥が冷たく制した。
「決を取ろう!」
誰かが叫ぶ。
「一番尊いのは誰か!」
投票用紙まで配られ始めた。
「やめろーーー!!!」
6人は同時に叫んだ。
「静かに!図書室です!」
司書の先生が再度注意する。
「無理です!」
ファンクラブ全員が返した。
教室ではなく図書室に響き渡る異様な大合唱。
「これ、どう収拾つけるんだ……」
隼人が頭を抱えた。
「統計的に、崩壊寸前」
要が冷静に答える。
机を囲んだ派閥会議は、収束の気配を見せなかった。




