#020 「隼人・要連合の台頭」
放課後の昇降口。
兄弟そろって歩く隼人と要の姿があった。
「隼人先輩ーー!」
「要くんーー!」
大歓声が響く。
その熱量は、はるな派や想太派にも劣らなかった。
「兄弟で歩くだけで尊い!」
「公式カップル感すごい!」
「……おい、俺たち兄弟だからな?」
隼人が額に手を当てる。
「誤解が拡散している」
要は冷静に告げた。
「キャーーー!!」
「冷静なツッコミ尊い!」
「ちょっと待って! 隼人×要ありじゃない!?」
「いやいや、要×隼人でしょ!」
妄想トークが一気に爆発する。
「兄弟BL……尊い……」
涙ぐむ女子まで現れた。
「これは……まずい流れだな」
隼人は小声で呟いた。
「統計的に、カップリング議論は収束しない」
要が分析する。
「……その冷静さが逆に燃料なんだよ!」
隼人は即ツッコミした。
「きゃーー! イチャイチャしてる!」
「尊い! 兄弟推し最高!」
「イチャイチャじゃねぇ!」
隼人の声は虚しく響いた。
教室の窓から様子を見ていた6人。
「……完全に新しい派閥だね」
美弥が呆れた声を漏らした。
「ほんとにカップル扱いされてる……」
はるなが顔を引きつらせる。
「兄弟で人気ってすごい!」
いちかは純粋に目を輝かせた。
「俺まで被害受ける気がするんだけど……」
想太がげんなりした声を出す。
「……もう誰も止められないな」
隼人はため息をついた。
「分析すると、この流れは拡大の一途」
要は真顔のままだった。
「派閥が増えすぎて……俺、処理できません!」
新人SPが廊下で泣きそうになっていた。
6人の笑い声とため息が、昇降口にこだました。




