#018 「美弥お姉様軍団」
翌朝の登校時間。
特別教室の前に、異様な光景が広がっていた。
「お姉様こそ至高ーーー!!!」
廊下に響き渡る女子たちの大合唱。
大きな横断幕には《美弥お姉様ファンクラブ》の文字。
その下で生徒たちが手作りの冊子を配っていた。
「昨日の朗読、完全に書き起こしました!」
「模写もあります!」
冊子の表紙には、美弥の横顔イラストが並んでいる。
「……何これ」
想太が青ざめた。
「完全にカルトっぽい……」
はるなは半歩下がった。
「お姉様……!」
女子たちは美弥の姿を見つけるなり、両手を合わせて拝んだ。
「……もうやめて」
美弥は額に手を当て、ため息をついた。
「朗読CD出してくださーい!」
「目を合わせてください!」
「俺、お姉様軍団って名前が怖いんだけど」
想太が小声でつぶやいた。
「完全に組織化してるな」
隼人は苦笑した。
「これは宗教的熱狂の典型」
要は冷静に分析する。
「すごーい! 私もお姉様って呼んでいい?」
いちかが目を輝かせた。
「あんたはそれが普通でしょ!」
美弥が即座にツッコミを入れた。
「ツッコミまでお姉様!」
「本物すぎる!」
ファンクラブはさらに盛り上がった。
「違うって!」
美弥は顔を真っ赤にした。
「尊い……! 照れてるお姉様も尊い!」
女子たちは次々と涙を流す。
「……無理だ、止まらん」
隼人が首を振った。
「統計的に、この熱狂はしばらく続く」
要は真顔で断言した。
そのとき、SP新人が人ごみをかき分けて現れた。
「……俺ら、もう警備じゃなくて信者整理ですよね?」
「ほんとそれ!」
6人が声を揃え、教室中が爆笑に包まれた。




