#012 「隼人と要の反応」
放課後。
昇降口へと向かう廊下に、二人の姿が並んでいた。
隼人と要。
背丈も雰囲気も違うが、兄弟らしく歩調が揃っている。
「……やっぱり兄弟で並ぶと絵になるな」
女子のひとりがぽつりと呟いた。
「隼人先輩ーー!」
「要くんー!分析してー!」
廊下は一瞬で歓声に包まれた。
生徒たちが両側に群がり、通路は人の壁となる。
「……進めないな」
要が冷静に観察する。
「まぁ、有名人だしな」
隼人は肩をすくめて笑った。
その余裕の態度にさらに黄色い声が飛ぶ。
「キャー!隼人先輩かっこいい!」
「要くんの冷静さ尊い!」
そして──
「兄弟で歩くだけで尊い!」
「要×隼人想像してみて!」
「いやいや、隼人×要のほうがしっくり来る!」
「キャーーー!!!」
BL好き女子たちの妄想が一気に爆発した。
隼人と要は同時に固まる。
「……おい、俺たち兄弟だぞ?」
隼人が額に手を当てる。
「誤解の拡散速度が異常だ」
要は真顔で呟いた。
「今の分析も尊い!」
女子たちはさらに盛り上がる。
「要くんはクール受け!」
「隼人先輩は俺が守るって言いそう!」
「ちょっと待て!」
隼人が慌てて手を振った。
「……完全に話が捏造されている」
要の冷静な声が、逆に熱狂を呼ぶ。
「尊い!」「公式にしてほしい!」
歓声が廊下を揺らした。
「派閥が増殖しすぎて整理できません!」
新人SPが人波の中で悲鳴を上げる。
「……俺たち、芸能人じゃないんだけどな」
隼人が苦笑する。
「いや、現状はそれ以上かもしれない」
要は淡々と答えた。
二人の会話に、再び歓声が湧き起こった。




