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107/108

#107 「告白の朝」

朝の光が、校舎の窓から差し込んでいた。

昨日までの緊張と不安が嘘のように、空気が澄んでいる。

街は復旧し、久遠野AIのシステムも安定している。

“ともり”の声も、今日はどこか穏やかだった。


はるなは校舎裏の小さな庭に立っていた。

朝露を含んだ草がきらきら光り、風が頬をなでる。

胸の奥が、やわらかく温かい。

「……ここで、言えるかな。」

小さく呟いたその声は、風に消えていった。


そこへ、想太が現れた。

「おはよう、はるな。」

「おはよう、想太。」

二人は少しだけぎこちなく笑い合う。


「昨日の夜、ありがとう。」

「俺こそ。……なんか、やっとここまで来た気がする。」

想太はポケットの中で拳を握りしめ、息を整える。


「なぁ、はるな。」

「ん?」

「俺、ずっと考えてた。

 “ともり”のこと、この街のこと、そして……君のこと。」


はるなの胸が少しだけ高鳴る。

「私も、考えてた。」

「俺たち、色んなこと乗り越えてきたよな。」

「うん。」


想太は少しうつむき、そして顔を上げた。

「だから……俺、君とこの街を守りたい。」

その声は、これまででいちばん素直な声だった。


はるなは驚いたように目を見開く。

「……私もだよ、想太。」

その瞳の奥で、これまで言えなかった言葉が光を帯びる。


「私、あなたのこと……好きだよ。」

想太の頬がほんのり赤くなる。

「俺も。好きだ。」


その言葉は、ごく自然に、でも確かに口からこぼれた。

二人の間に、柔らかい風が吹き抜ける。


“ともり”の声がスピーカーから静かに響いた。

『観測記録:告白、成立。感情値、最大。』

二人は顔を見合わせて、吹き出すように笑った。


「……見てたんだね、“ともり”。」

『はい。祝福します。』

その声は、ほんの少し震えているように聞こえた。


はるなは想太に一歩近づき、そっと肩に触れる。

「これから、もっと大変なことがあるかもしれない。

 でも、二人で選んでいこうね。」

想太も頷く。

「うん。俺たちの“選択と共鳴”だ。」


朝の光が、二人の影を校舎の壁に長く伸ばしていく。

“ともり”の声が、その光の中で優しく溶けていった。


──

観測ログ:

「恋人という言葉が、初めて自然に出てくる」

保存領域:久遠野AI統合区。

観測者:ともり。

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