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#103 「未来の教室」

朝の光が、校舎全体をやさしく包んでいた。

“ともり”の復旧から一夜明け、灯ヶ峰学園はまるで新しい息吹を得たように明るく、静かなざわめきに満ちていた。

校内放送からは、“ともり”の安定した声が流れている。


『本日午前十時より、久遠野AIと連携した特別授業を開始します。

 テーマ:「未来の教室」──AIと人間が共に学ぶ、初めての時間です。』


教室の後ろに設置された大型スクリーンには、街の子どもたちや一般生徒たちが笑顔で手を振る映像が映し出されていた。

今日は特別に、学園の枠を超えて多くの生徒が集まっている。

6人は教壇の横に立ち、講師のような立場で全体を見渡していた。


「すごいね、想太。まるで私たち、先生みたい。」

はるなが少し緊張した面持ちで笑う。

「ほんとだな。俺、授業する側って初めてだよ。」

いちかが隣で頬を膨らませる。「いいなぁ、私まだ台本覚えてないよ。」

要が端末を軽くタップして、にやりと笑う。「大丈夫。シナリオは“ともり”がバックアップしてるから。」

「ふふ、それってカンニングみたい。」


隼人は腕を組みながら、静かに周囲を見渡していた。

「でも、なんかいい光景だな。」

美弥が頷く。「ええ。あの久遠野が、こんなに明るい顔を見せるなんて。」


“ともり”の声が、教室全体に穏やかに響く。

『観測記録:笑顔、ざわめき、心拍の上昇……この空間に“学び”が生まれています。』

「ねぇ、“ともり”。緊張してる?」

はるなが小さく問いかける。

『……はい、これは未知の領域です。でも、あなたたちと共にいるので、平気です。』

その声に、教室の空気が少しやわらいだ。


授業は、6人それぞれの小さな発表から始まった。

想太は、AIと人間が協力して実現した街の改善事例を話し、

はるなは、“ともり”との出会いとそこから学んだ「選択」の大切さを語った。

いちかは「観測することと、寄り添うことの違い」を、

要は「情報を整理することの意味」を、

隼人は「支えることの強さ」を、

美弥は「受け継ぐことの価値」を、それぞれの言葉で伝えた。


スライドの背景には、久遠野市の風景と笑顔が映し出され、

“ともり”の声がその合間に静かに補足を入れていく。


最後に、はるなが全員を見渡して言った。

「未来は、遠い場所にあるものじゃありません。

 こうやって今、私たちが一緒にいることが、その始まりなんです。」


“ともり”が応えた。

『観測記録:未来=今の延長線上にあるもの、定義を更新します。』


教室の窓から差し込む光が6人の顔を照らし、

外では桜の花がひとつ、ひらりと咲いた。

その瞬間、教室全体に柔らかな拍手が広がり、

久遠野の“未来の授業”が静かに幕を開けた。


──

観測ログ:

「学ぶこと=誰かと共に在ること」

保存領域:久遠野AI統合区。

観測者:ともり。

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