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魔女で野獣〜悪になりきれない魔女は愛する青い瞳と共に国を救う?〜  作者: 小野寺雀


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8/17

7.



カチャ___



「ねえ最近話題になってる本知ってる?」


「あぁ〜、あの人気の恋愛小説を絵本にしたってやつね?もちろん知ってるわよ〜。まだ見たことないけど。」


「絵がとても綺麗で、字が読めない庶民でもわかりやすいって話題なってるのよね?私も一度見てみたいわ〜。」




「…………はあぁ〜。」




コレットはいつものように自身のカフェでお客の話を盗み聞きしているが、窓の外の青空をぼーっと眺めたまま、話の内容なんてものは全く頭に入っていない。



「…彼はなんなの?なんでこんなに頭から離れないの?あ、もしかして魔法…?いやでも使われた痕跡はないわ。え………一目惚れ?…この私が?…いやいや!ありえないわ!?……はぁ〜もう…なんなの…ほんと………。」


(けどもう彼に会うこともないわね。魔女に水ぶっかけられて睨まれたのよ?今度こそ怖がってもう近づいては来ないでしょう…。)


「コレット〜。」


「………。」


ドンドン___


「お〜い!コレット!」



ベルナールがキッチンの外から何度もドアを叩き声をかける。



「っ!…な、なに?」



急いでコレットは立ち上がりキッチンを出る。



「おい、新規のお客さんだ。」


「あぁ、わかったわ。」



コレットはパンパンとスカートをはたきゆっくりとお店の入り口へと向かった。








「いらっしゃいませ…。ようこそ、カフェ・ド・ブーシェへ。ここは様々な方が集う憩いの場となっております。ですので、危ないものはこちらでお預かりいたします。」



流れ作業のように声をかけながら入り口に立つ男性に向け手を出す。



「…………。」


「ん?…ご安心ください。何かあればそこにいるうちの用心棒であるベルナールが…。」



コレットは動く様子のない男性を不思議に思い、顔を上げた…。



ギュッ…チュッ___



「ッ!?な、何をするの!?って貴方…。」



顔を上げきる前に差し出した手を握られ、その甲に軽い口づけをされる。



「やぁ!ショコラのお嬢さん?…また会ったね。」


「おいお前!」


「ベルナール大丈夫よ…。決して良くはないけど。」



コレットは急いで手を引っ込めスカートでごしごしと拭きながら、後ろから出てこようとするベルナールを反対の手で制止する。



「貴方なぜここに?悪いけどここは"私"の店よ。わかったならさっさと帰ってちょうだい。」


「もちろんわかってるさ。オンドリが導いてくれたんだから…ね?」



と彼は胸のポッケからわずかに黒いカードを見せコレットにウインクをする。



「…もうそれ返してちょうだい。」


「そんなまさか…。これは君との大事な思い出でもあるんだ…。」


「ベルナール…。やっぱり大丈夫じゃないわ。この人を外へ放り出して。」


「わかった。」


「ちょっ!待ってくれって!お客にそんなことしていいのか?」


「貴方はお客ではないわ。立派なストーカーよ。」


「おいそんなこと言っていいのか?君が本当は何なのかここで…。」


「ベルナール待って…。」


「ん?こいつ放り出さなくていいのか?」


「少しふたりで大事な話をしたいの…。中へ戻っていいわ。」


「大丈夫か?」


「大丈夫よ。仕事に戻って…。」


「わかった…。なんかあればすぐに呼べよ?」


「ありがとう。」



とベルナールを2階へと見送り、持ち上げた頬を1番下へと下げながらゆっくりと後ろを振り向く。



「………はあぁ〜。貴方って本当になんなの?」


「あぁ、怒った瞳も綺麗だね。」



と今度はコレットの髪へと手を伸ばす。



「気安く触らないでちょうだい。で?この私を脅してどうするつもり?貴方、タダで済むとお思い?」



が、コレットはそれをするりとかわし青い瞳の彼を睨みつける。



「俺はただ君ともっと話がしたかっただけさ。脅すような形になってしまったのは申し訳ない。いやまさか君がこんなお店を街に開いてたとわね?」


「………やっぱダメか…。」



彼のポッケに入っているカードをこちらへと引き寄せてみるがまったく手応えがない。



「ねぇ、貴方本当にただの貴族?もしかして貴方も魔法使いなの?」


「はは。そんな訳ないだろ?魔法が使えてたら俺はきっともう君から離れないよ…。」


「………そういうのほんとにやめてくれない?見ればわかるでしょ?私遊んでる暇はないの。」


「俺だって遊ぶ気はないって最初から言ってるだろ?俺は本気だ。」


「ッ…よ、よく言うわ。」



コレットはふと笑顔がなくなった真剣な彼の青い瞳にドキッと体が跳ね、反射的に顔を逸らした。



「二度と来ないでと言ったのにまた現れて、私を脅すような人の言葉を信じられる?」


「誰だ?そんな最低な男は…。」


「………貴方よ。」


「あぁ、俺か…。」



視線を戻すともう彼はいつもの軽い笑みを浮かべていた。



「なら誓おう。俺はもう君を脅したりは絶対にしない。君が悲しむところは見たくないからね。」


「そんな軽い誓いなんて意味ないわ。」


「お…貴族の誓いは絶対だ。俺は君に誓う。」


「そんな話聞いたことないわ。貴族なんてますます信用ないわ。」


「…貴族でも位の高い物の中でしかない決まりだ。だからそもそもよっぽどのことがない限りは誓わない。」


「………へぇ〜貴方がそんなに位が高いようには見えないけど…。」


「あの夜はちゃんと決まってだろ?」


「もう…いいわ。この店は1階と2階で男女分かれているの。男性は2階をご利用ください。」


「俺の誓いを信じてくれるのかい?」


「ただめんどくさくなっただけよ。コーヒー飲んでさっさと帰って。面倒だけど、貴方が言いふらしたところでこの街とはおさらばしてまた違う街でやるだけよ。とっても面倒だけど…。」


「はは。強気な君も素敵だね。」


「いいからさっさと行って!」


「ははは…。」



コレットの怒号が響き渡る中、彼は気にもせず笑いながら上へと上がって行った。



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