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魔女で野獣〜悪になりきれない魔女は愛する青い瞳と共に国を救う?〜  作者: 小野寺雀


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4.カフェ・ド・ブーシェ



森に近い街の外れに、密かな人気店となっている一軒のカフェがある。



2階建てのその建物は木の温かみが感じられるようなごく普通の庶民的なお店で、入り口の扉の上には『カフェ・ド・ブーシェ』と書かれた看板が風に揺れている。





チリンチリン___



「いらっしゃいませ…。」



扉を開けると若い女店主が使い古された、しかし清潔感のある短いドレスで迎え入れる。


中にはさらに扉があり、その手前にはカーブを描く2階へと続く階段が見える。


そして男性は2階へ、女性は1階の扉へと案内されるのだ。

この国では男女によってカフェの利用用途は異なり、そのためキッチリと分かれているのである。



「すみませんお客様…。それはこちらで預からせていただきます。」



と店主が男性の腰にぶら下げていた短剣を受け取るように手のひらを出す。


その後ろでは2mはあるであろうガタイの良い男が腕を組みお客である男性達を睨む。



「あぁ、そうだったな。」



と皆素直に差し出し、木製のテーブルとイスが並ぶ2階へと案内される。




チリンチリン___



「いらっしゃいませ…。」



次にこの店を訪れたのは街に住む若い女性達。



「今日は何にしようかしら。」


「コーヒーのいい香り。」



入り口からキャッキャとはしゃぐ彼女達を店主は1階の扉へと案内する。



「あぁ、ここはいつ来ても素敵ね…。」



開いた先には外観とは違い、パステルカラーでまとめたれた豪華な空間が現れる。


2階とは違い1階は女性達の為に明るく煌びやかに飾られ、貴婦人達の集まるサロンのような内装となっていた。


そしてそこでコーヒーや小さなお菓子と共に会話を楽しんだり、刺繍をしたりと貴族の真似事をして皆気分を楽しむのである。



街の人々だけでなく、たまに貴族達の密かな集い場所としても利用されるここは…。





「ごゆっくりどうぞ…。」



ニヤリと上がる笑みを隠すようにお辞儀をする"魔女"が密かに営むカフェなのである。





「おい、コレット。これもう持っていってもいいか?」


「ええお願い。」



さっき腕を組みコレットの後ろに立っていた大男はベルナールと言い、このお店の用心棒であり2階の給仕もしてくれている。



彼は街でコレットが変な男に絡まれているところにたまたま出くわし、豚にでも変えてやろうかと考えていたコレットをか弱い町娘と勘違いし助けてくれたのである。


そしてそれがきっかけで彼はそのまま店の用心棒となり、今では知らず知らずのうちに魔女にこき使われているのである。


見た目に反して優しくお人好しな彼をコレットは思いの外気に入り、ある程度の信頼を置いていた。






「さぁ、今日はどんな感じかしら?」



とキッチンはひとりでに動く食器達に任せ、コレットは聞こえてくる声に耳を傾ける。




「あぁもう嫌になるぜ。俺らは何でこんなに一生懸命働いてるのに貴族どもは女追いかけて遊んでるんだ?」


「そんなのは全部、贅沢三昧な王と王妃のせいだろうよ。」


「王妃なんてこの前の舞踏会であの着飾ったデカい頭に馬車を乗っけてたらしいぜ?」


「それは流石にないだろ。俺は頭に小麦をたっぷり使ったパンを飾ってたって聞いたぜ?」


「なんだって!?俺らから搾り取った小麦をそんなことに使うなんて…。」



(あらあら、2階はいつも通りね…。)



一般的にカフェで男性が集まってするといえばコーヒーの香りを楽しみながらのんびりと…なんて穏やかなものではなく、政治や貴族への不満を込めた熱い討論会だ。



その勢いのまま喧嘩に発展すると面倒なので、危なそうな武器は体から離し、2階にベルナールを配置している。



コレットはこうやって庶民や貴族達の話を盗み聞きし、情報収集をする為このカフェを開いたのである。



「ねぇ知ってる?王妃様この前の舞踏会でまた新しいデザインのドレスをお召しになってたらしいわよ?」


「いいわねぇ〜。でもそうしたらまた綺麗なドレスが私達の方に回ってくるんじゃない?」


「それも嬉しいけどやっぱり私は、最新のドレスを仕立てて着てみたいわ〜。」


「そんなの無理よ!一着いくらすると思ってるの?」


「そうよ。そんなの夢のまた夢よ。私たちがチクチクと一生懸命縫ったドレスを王妃様が着てると思うだけで幸せと思わなきゃ。」


「あぁ〜私も一度でいいから長いドレスをふわっと広げて宝石で着飾って、舞踏会に行ってみたいわ〜。」


「そして王子様と踊ったりなんかして?」


「そしてそして王子様に惚れられちゃったりなんかしたりして?」



「「「キャーーー!」」」



「うるさいわねぇ〜。そんなことあるわけないでしょ?そもそもこの国ももうそんな王家の贅沢のせいで危ないって言われてるじゃない。そんな王族に嫁いだって死にに行くようなもんよ。」


「えぇ〜それでもいいから私は贅沢三昧な生活してみたいわ〜。」


「ほんとよね〜。あぁ王妃様が羨ましい。」


(ふふ。彼女達はいつもほんと可愛らしい会話をしてるわね。貴婦人達の会話はこんなもんじゃないけどね…。)



なんてコレットは聞こえてくる黄色い声に微笑みながら、カチャカチャと色とりどりの小瓶を並べ夜に向けた準備を始めた。




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