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魔女で野獣〜悪になりきれない魔女は愛する青い瞳と共に国を救う?〜  作者: 小野寺雀


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2.仮面舞踏会



「………よし。」



コレットは馬車の中でふわふわと浮かぶ鏡を見つめ、仮面をつけた美しい自分に向けてウインクをする。


馬車がゆっくりと止まりノックを合図に声をかけると扉は開き、眩いほどの煌びやかなお屋敷が現れる。


「今日はなかなか良い会場ね。」


外で待つ使用人にそっと手を伸ばし、サーモンピンクのスカートを持ちながら優雅に一歩ずつ降りていく。


「ふぅ………。」


コルセットに乗り上げ溢れる谷間に、キュッと引き締まった腰からふわりと広がるスカート。


「おい見ろよ…。あれは一体誰だ?あんな子見たことないぞ。」


会場に入る前からすでに周囲の男性の目はコレットに釘付けとなっていた。


バサッと扇子を広げ口元を隠しつつ流し目を送る。


「今俺を見なかったか?」

「いや、俺の方を見てた!」

(ほんと脳内お花畑さんばかりね…。でもだからこそ私の商売が成り立っているのよ。今夜は顧客大量ゲット間違いなしね!)


と緩む口元を扇子で仰ぎ、小さく弧を描く指先で適当な招待状を拝借していく。



「今宵を心ゆくままにお楽しみくださいませ。」


会場の大きな扉が開くと、跳ねる弦楽器の優雅な音色と共に豪華絢爛なホールが眼前に広がる。


「あぁ。なんて愚かで…なんとも美しい。」


とコレットは扇子に向けため息混じりにつぶやき、すぐ目線を動かして人々を値踏みしていく。


(いくら仮面をつけて着飾っていたとしても所作で見当がつくわ。グループに紛れ込むのが1番ね。)



「今日こそは"猫"を捕まえるぞ。」

「お前には無理だろ。笑」

「お前何匹飼ってるんだ?」

「今は3匹だ。」

「マジかよ。ふざけんなよなんでお前が…。」

(はぁ〜人間の男って実に俗悪ね。)


"猫" とはいわゆる世間一般的な猫ではなく、ここでは愛人や遊び相手の隠語として使われている。


そんな話をニタニタと気持ちの悪い笑みを浮かべながら話す集団にスッとコレットは近づいていく。


「あら、もうなくなってしまったわ。」


と男性陣の側で空になったグラスを傾けつぶやくと…。


「何かお持ちしましょうか?」

「つまめる物も持ってきますよ!」


とすぐに声がかかる。


「私、こういった場所は初めてで…。どうも進んでしまいますわね。」


と気づかれないように自らに鳥肌を立てながら鈴を転がすような声でそう微笑みかける。

すると途端に男性陣は皆鼻息を荒くしコレットに群がり、頭のてっぺんから足の先までを何往復もし始める。


(あぁこれも売上の為よ…。)


と歪む口元を扇子で隠し。


「いったいどんな"猫"をお探しですの?」


と大きな瞳を細め見上げた目線を送る。


「よく鳴くのがいいな。」

「お転婆なのも躾しがいがあって嫌いじゃないぜ?」


とまあ色様々な趣向が出るわ出るわ…。


(興味はさらさらないけど全て新しい商品のアイデアとしてメモはしておかないと。)


頭の中で一通りメモし終わると、ふっと頬を持ち上げ扇子を仰ぎギラギラと眼を光らせる彼らに向けて風を送る。


「なんだ…?とてもいい香りがするぞ。」


とさらに鼻の下を伸ばしているうちに。


「もしよろしければ"オンドリ"の導く方へお越しになってみてくださいな?」


と真っ黒く塗られ隅に金の雄鶏が書かれた小さなカードをそれぞれの服にスッと忍ばせる。


「はい………ってあれ?俺今誰かと話してたか?」

「いや、俺らしかいなかっただろ…。」


(ふふ…お待ちしております。)


と彼らから離れたところでまた口元を扇子で隠す。


「次は女性たちね…。」


そしてコレットは次のターゲットに向けゆっくりとスカートを揺らした。


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