1.魔女の日常
昔々のそのまた昔…。
あるところにコレットと言うそれはそれは美しい魔女がおりました。
「ん〜…はぁ…。ほんと太陽の光って眩しく鬱陶しいわね。いっそのこと消してしまおうかしら。」
しかし、その魔女は実に乱暴で自惚れやで口が悪くおまけに部屋も汚く、人間の欲に漬け込み日々魔法でお金を稼ぐそれはそれは野獣のような悪い魔女…
「ちょっとミロ!朝からうるさいわね!野獣のような悪い魔女ってなによ!!それにこの部屋のどこが汚いっていうの!?」
と勝手に語り始めた魔法の鏡に向かって魔女は怒鳴った。
「はぁ?どこがだって?…どこもかしこも汚いじゃないか。ローブも薬草も出しっぱなし!昨日使った大窯も洗わず!夕飯の食器だってそうだ!それに…」
「ああ〜もううるさい!その顔粉々にして二度と喋れないようにしてあげましょうか?」
とうっすらと青白い顔が浮かぶ大きな鏡に向かって杖を振り上げる。
「おぉほら怖い怖い…。フェマレンに言いつけるぞ!」
「ちょっと師匠に言いつけるなんて卑怯よ!ほんと悪い鏡ね!」
「はっ!どの口が言ってるんだか…。」
「あぁもう…。せっかくいい夢を見てたのに…。最悪な朝だわほんとに。」
と愚痴をこぼしながらやっとベッドから身体を離す。
「……………。」
そして魔女は部屋を見渡し。
「…………チッ。」
と舌打ちしパチンと指を鳴らすと床に散乱していたものがカタカタと動き出し、自ら棚やゴミ箱へ目掛け部屋の中を飛び回る。
そしてほうきやモップはまるでワルツを踊るかのように動きサッサと掃除をしていく。
「ほらこれでいいでしょ?」
と片手を上げながら綺麗になった部屋を鏡に見せつける。
「はあぁ〜…。大事なのはこれを維持することだ!」
「なに?まだ文句があるわけ?ほんとうるさい鏡ね。」
「おい!まだ話は終わってないぞ…。」
「もういいわ。じゃ…洗い物はよろしくね?」
「あ…ほんとだ残ってる…っておい!」
とまだ何かを言っているうるさい鏡を残し、魔女は家を飛び出した。
「あぁ〜ほんとうるさい…。森は静かでいいわね…。」
と朝しか咲かない魔法の花や朝露に濡れる薬草を摘みながら朝食用の木の実も一緒に摘み取る。
近くを流れる川からは綺麗な水を汲み、家に戻るため歩いていく魔女のその後ろではたっぷり水の入った重いバケツがふよふよと溢さないように慎重に宙を浮きながら着いていく。
そして出て行った時よりさらにピカピカになっている気持ちのいい部屋で今日も魔法を調合し、色とりどりの魔法の小瓶や魔法の粒をどんどんと作っていくのだ。
「今日はやけにたくさん作るな。何かあったか?」
と鏡が自分に映り込んでいる部屋に出来上がった物をじろじろと覗き込む。
「今夜は舞踏会があるのよ?うちのお店を宣伝するいい機会だわ…。しかもただの舞踏会じゃないの…。仮面舞踏会よ!好き勝手し放題じゃない?」
「おいおい…。ほどほどにしろよ?魔女だってバレたら後がめんどくさいぞ?」
この世界では魔女は良い悪い関係なく忌み嫌われている。
「でもみんなこの私からたくさんの魔法を買っていくのよ?自分に都合のいい物は受け入れるんだから…。まあどうせバレてもみんなの記憶を消しておさらばすればいいんだからなんてことないわ?」
と魔女はニヤリと片方の頬だけを持ち上げ、鏡に向けワザとらしく片手を振る。
「はぁ〜…。まあ気をつけていけよ。」
とため息をつく鏡の前で鼻歌を歌いながら魔女はどんなドレスを着て行こうかと心躍らせていた。




