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【第二章11】夕食間の考え事

 バクバクと破裂しそうな心臓を抑えて、数回深呼吸をする。落ち着け、外は風が強くて真横でもない限り小さな独り言が聞こえることはないはずだ。


「僕は手紙を出しに来ただけですけど…それより、橙恩さんはなんでここに?というかいつから居たんです?」

「私?私はいつもの巡回でたまたまお坊ちゃまを見かけたから気になって着いてきちゃいました。いつからいたかと言いますとねぇ、お坊ちゃまがドアに手をかける少し手前ぐらいですかねぇ」


よかった、命拾いはした…!


「もう手紙は出しましたから、すぐに戻りますよ。家族に到着した旨の連絡ぐらいはしたほうが良いでしょう?」

「えぇそうですねぇ。お坊ちゃまは実に親孝行な方だ」

「いえいえそんな、褒めすぎですよ」

「はははっ、そろそろ食堂が閉まる時間だけれどもお坊ちゃまは夕食を取ったのかい?」

「え、まだです。そんなに早く閉まるんですか食堂って」

「ここでもう少しお話してから戻るってなったら確実に閉まりますよぉ。私は巡回の時間上、早めに取っているけどもお坊ちゃまは?まだなら早く行ったほうが良いのでは?」


そんなに早く食堂が閉まるだなんて聞いていなかった。いま夕食の時間を逃がしたら今夜空腹に耐えながら寝るしかなくなる、それはどうにも御免被りたい。


「すぐ行くことにします。ありがとうございます橙恩さん!」

「行ってらっしゃいませお坊ちゃま〜足元にはくれぐれもお気をつけて〜」


急いで詰め所を飛び出し、雪で滑らないように気をつけながらも走る。しかしふと、橙恩はどうしたのだろうかと気になり、振り返ってランプを少し掲げて目を細めた。橙恩のものらしいランプの光はまだ詰め所の中で光を放っていた。やはり巡回は寒さが堪えるのだろうか、詰め所の中でちょっとした休憩を取るついでに暖を取っているのかもしれない。


「っといけない、夜中に腹を空かしたくないから早く行かなきゃな」


そう、今は橙恩のことを気にする暇はないのだ。僕の大切な夕食が待っているのだから。


 もうほとんどの人が食べ終わっている中、一人でスープを啜る僕は明らかに浮いている。悲しいことに監査員という役職上、周りの人との関わりが恐ろしく希薄なのだ。その上、僕は前任の尻拭いに加えて新しい書類の認可もしなければいけないので、中将ほどではないが忙しい。

 自分の仕事量を振り返ると、やはり中将の仕事量、運動量は異常だと毎度思う。だって日々の報告書、日誌、来客対応や物資の在庫確認の報告を受けたりもするのだ。建物の状態などは中将の意向で中将自身が報告された場所の確認に行くし、修理の手配も中将を通す。このような『中将』としての仕事に加えて訓練も怠らないので中将がゆっくりとしている姿は朝方と夕食後ぐらいしか見れないのである。


「もしかして朴さんでは?夕食にしては遅いですね。忙しかったんですか?」


野菜炒めの汁に饅頭(まんとう)をなすりつけていたら前を通りかかった蘭慶が驚いたように目を見開いて足を止めた。


「あぁ蘭慶さんですか、奇遇ですね。それが…色々あって遅くなってしまいまして」

「へぇ大変ですね。しかもお一人とは…」

「な、なんですかそんな憐れむような目で見て…僕だって時間が合えば一緒に食べる相手ぐらいいますよ」

「俺は別に何も言っていませんよ。そうだ、あの約束もまだ果たせて無いですし、今質問に答えましょうか」


僕の前の椅子を引いて座る蘭慶を見ながら、自分で自分の首を締めてしまったことを後悔する。あぁ蘭慶の視線が痛い…本当は一緒に食べる相手なんていないことなどとっくに知っているのかもしれない。今はまだ来たばかりだし、たった1年しか勤務しないのだから別にそんな気にする必要なんて…必要…必要だよなぁ…


「約束って…あ、歓迎会の時のあれですか」


自分の孤独さに目を背けつつ、記憶を掘り返すと3つの内1つだけ質問していたことを思い出す。たしかにまだ質問が2つ残っている。だが…


「今のところ質問は無いんですけども…それじゃあ、良然が蘭慶さんの礼物を聞いてもいいですか?蘭慶さんは情報管理部なのにどうして侵入者の対処をしてたんです?」

「侵入者の対処…ああ、あの話ですか。俺は礼物で人の記憶を書き換えられるんですよ」


蘭慶はポケットから小さな紙束を取りだし、ペンを走らせた。

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