第18話 ザ・スパイシーズは永遠に
自分で言うのもなんだが、相当 厚かましく卑しい性根の私。
しかし、こんなことがあって これから2人と一緒に仕事なんて出来る訳がない。
さすがに、私でもそのくらいの恥じらいはあった。
更に、映画にコネで出演させてくれなんて言えるはずもなく。
例のハリウッド映画の件は、丁重にお断りしてきて帰ってきたという次第だった。
「……私ね、スパイシーズのツアーと重なったって分かった時、“じゃあ、しょうがないか”って自然に思えたの。人からもらったチャンスより、皆と力を合わせて掴み取った現実のほうが私には大切だから」
目の前のシュガソルの2人を見つめ、私は笑顔を浮かべてみせた。
まあ、嘘は言っていない。
全部が真実とは限らない、というだけだ……。
そんな私を、しばし綺羅流と元興は呆然と眺めていたが。
「……例の、アイドルバトルロワイヤルっていつだっけ?」
やがて、ぽつりと綺羅流が呟いた。
「3日後」
「よし、絶対にそれで優勝するぞ」
答えた元興に対し、何故か急に気合いの入った声で綺羅流は言う。
「は?」
「あれでビタハニの奴等に勝って、まろんにこっちで良かったって思わせてやる」
え?
「いや、そんな……」
なにやら突如始まってしまった青春ドラマのような展開に、私は戸惑った。
「そうだな。俺達を選んでくれたことを絶対後悔させないから」
あの元興までもが何だか暑苦しい口調になっている。
「えーと、その……」
「やるぞ!」
「おおっ!」
君達、そんなキャラだったか?
話がへんな方向に転がり、私は困惑した。
本来の計画では、ビタハニの好意は利用しつつ、オーディションは免除してもらい映画に出演、スパイシーズの活動もこなし、あわよくば仕事ももっと貰えたらなぁ。
なんて都合の良い計画を立ててたなんて……とてもじゃないが言えない。
……こうなったら、本当のことは永遠に黙っておこう。
知らぬが仏と、昔の人もそう言ったではないか。うん。
「よし、そうと決まったら今から特訓だ!」
「絶対にザ・スパイシーズで優勝するぞ」
アパートの一室でご近所迷惑に叫び合うシュガソルの2人を見ながら、私は引きつった笑顔のままで固まっていた。