ルシウスの雷鳴2
~アルトロス大陸の最北端~
黒尽くめ
「くっそ!!あれから、3年か!!時間が経つの早くないか?」
マントを着たり脱いだりと忙しい男が喚く。
「どう?」
ネズが座っている方向に目線をやる。
ネズ
「光ってる。」
あまりにも下手くそな黒の姿に笑いが堪えられない。
白尽くめ
「あかん。お腹痛い。さっきからケツ、ばっか、、光るやん。」
苦しそうに笑い転げる白。
黒が、マントを着なおして透明になる度にお尻が光る。
「しかも、ずっとじゃないのが、たまらん。」
黒
「うっさいな。好きで光ってないんやで。そんなにキラキラしてるの?」
マントを外してお尻を見ようとしたら、全身が光ってしまう。
ネズ
「ユウキ、お前がやったら?今日の作戦、コイツ無理やで。」
ネズは涙目を拭く。
ユウキ
「いや、俺強くないやんか。足も遅いし、フード被っても自分自身の魔気を消せないからさ。結構リスクじゃないかな?ほら、クロノス、あっ、黒の方が気配が消せてる。尻が光るだけなんだし。なんとかならないの?俺、嫌だよ。」
純粋な魔人が嫌な顔になる。
戦闘力が単純に低いのだ。
滅びの燈に所属している幹部の中でも一番最弱なのだ。
滅びの燈、ルシウスの崩壊を願う、神と魔が手を組んだ過激派組織。
本構成員600名程の秘密結社。
仮を含めた人数は未知数、誰も把握しきれていない。
白
「ユウキは、参謀タイプやもんな。頭はめっちゃ切れるけど、、あと手先も器用!だから後、戦闘力あれば完璧なのにな。よりによってコイツしかおらんのが辛い所やな。」
白は黒を見る。
黒
「一応さこれでも魔王やで私。額に浮かぶ数字を見せる。」
額には1003の番号が浮かぶ。
ネズ
「俺は信じてないから。」
笑い疲れた声で深い深呼吸をする。
ユウキ
「間違えなく魔王ですよ。俺にとっては神様みたいな強さですよ。」
羨ましそうに額を見つめる。
自分の長所が強さじゃい事を悔やむ。
魔族はネームドクラスには番号が割り振れている。
この番号が彼らの全てなのだ。
二桁の番号が与えられた魔族は魔神と名乗る事を許される。
三桁は、魔帝として君臨する。
そして四桁は、魔王として恐れられる。
魔族の人口が4000万人いる中でこの番号を与えられている事が名誉なのだ。
白
「ふっ。魔王なんて、子供も一緒だよ。」
白は偉そうに黒の事を鼻で笑う。
黒
「ほんまに、お前っていつも偉そうやね。」
黒は白を睨みつける。
ネズ
「でもさ、実際強いよな。お前らって。」
白のローブを羽織った3人組を見つめる。
椅子に座ってる白尽くめのローブには分かりやすい様に金色の刺繍が縫い付けられており、後ろの2人は従者なのだろう。
ピクリとも動かずに後ろに控えているのだ。
神族、この世界で絶対的な権力を持つ者たちの総称。
神気を纏い神気を練り武力にも知力にも長けた、このルシウスで魔族と対をなす存在。
多種多様な人種から構成されてはいるが、人口が10万にも満たない少数民族なのである。
金の刺繍
「だろ?あたり前のことを言うなよ!まぁ、俺らでいう成人したて位が魔王クラスになるわけだから、自慢しなよ。クロノス、時の魔王さんよ。」
小馬鹿にしながら、黒尽くめを褒める。
クロノス
「俺を本名で呼ぶなよ。幾らお前でも、殺すぞ?」
金の刺繍が入ったローブを剥ぎ取ろうとする。
無言の白尽くめ1
クロノスの腕を掴んで止める。
無言の白尽くめ2
クロノスの喉元に刃を突き立てる。
クロノス
「冗談よ!冗談。そうマジになるなよ。」
おちゃらけた顔になり握られた手を振り解く。
骨に響く激痛が腕にはしったのだった。
クロノスは今だにこの神族の正体を知らなかったのだ。
この滅びの燈、初期メンバーからの付き合いになるのだが、今だに素顔を見た事が無かった。
金の刺繍
「おい、仲間に手を出すなよ。」
自分を庇った白のローブ2人を拳で殴り付ける。
恐ろしく鈍い音が二つ鳴り響く。
そう、この男、恐ろしく強いのだ。
白尽くめ1・2
黙ってその鉄拳制裁を受け入れる
クロノス
「おいっ。そいつら、お前を庇ったんじゃないのか?」
自分が殴られるものかと身構えるのだが、まさかの従者を殴り付ける金の刺繍に驚く。
金の刺繍
「んっ?俺に黙って動くゴミにはお仕置きがいるだろ?そもそも、俺が不覚をとる筈が無いだろ?庇うって事は俺はコイツらよりも格下の存在なのか?あり得ない。」
ローブ越しからでも伝わる背筋が凍る殺気が場を支配する。
「まっ、こいつらもさ。この程度で屁古垂れる程弱く無いしな。」
ニコッと急に笑顔に切り替わる。
クロノス
「ハハっ。」
もう、乾笑いする位しか反応の仕様がなかった。
ネズ
「もう、いっそ。そちらの従者にお願いした方が早くない?」
直ぐに話題を変える。
金の刺繍
「魔気のセンスが0。ほんまにゴミだから、論外。」
ばっさりと切り捨てる。
ユウキ
「うーん。となるとさ、このケツ光に頑張って貰わないとダメなのか。もう、いっそ。明日の計画、延期しない?」
練りに練った作戦の失敗を恐れる。
クロノス
「それは、そうしたいが、そうもいかないんだろ?」
金の刺繍を見る。
金の刺繍
「そうだね。明日が、ラストチャンス。明後日には、調印式が始まる。そしたら、俺の野望が潰えるよ。」
神族の機密文書を机に広げる。
そこには和平協定の四文字が書かれていたのだ。
クロノス
「でもさ。その情報って確実なのか?俺らすら聞いた事無いで?魔族と神族が和平協定結ぶなんて噂。想像つかないんだが、ましてや、魔火の原初と聖火の原初を共同管理するなんて、初耳やわ。」
その機密文書の最後に書かれている文言を指差す。