私立用賀女学園スクールアイドル部はじめ〼(ようじょ!)2nd season - 夢woiベロシティ -
本作はニコニコ動画にて行われた「架空アニソン祭2024」に向けて執筆されました。
https://www.nicovideo.jp/watch/sm43742055
この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係がありません。
なお設定にご協力いただきた用賀の店舗は実在いたします。
用賀を訪れた際はぜひお立ち寄りください。
■Special Thanks
ビストロ穏屋
Cafe Bar QP's
かとぅ家。~neo asian cuisine~
うおはん
用賀 山本屋
用賀のみなさま
■第一話「続・スクールアイドル?」
用賀は都会なのに人の繋がりが深い、どこか村のような街。エモいお店や飲食店もあって、歯医者と美容院、、あとパン屋がいっぱい(笑)。
でも、ドミナントな世界にはまだまだ。
このアタシ、砧夜羽が私立用賀女学園のスクールアイドルとなって、この世界を全員しもべにしてやるの。
柊木二子ちゃんと真福寺アリアちゃんで前回そう決めた。
(二人は「しもべ」じゃなくて「元気」にするって言ってるけど)
今日もアタシのサブドミナント達が、スクールアイドル部のパフォーマンスを心待ちにしている。
輝きは用賀から始まるのよ!
さああなたたち、ついて来なさい!
ちなみにヨハネじゃなくて夜羽!読みは同じでも字が違うの!
ドミナント〜!
◝( ゜∀ ゜ )◟キメ!
■第二話「新たなフォーメーション」
アタシたちのファーストステージはわりと上手くいった。
初めてなのに用賀の人たちは盛り上がってくれたし、失敗も少なかったと思う。
でも、もっと質を上げないと、アタシのサブドミナント達に愛想つかされちゃう!
てことで今日はダンススタジオ「QP's」で新たなフォーメーションを会得するべく墜天、、じゃなくて降臨したの。
いろいろと模索しながら、足掻いていたら、
スタジオ店長のひろこさんが何やら裏からDVDを引っ張り出して
きてアタシたちに手渡した。
「実は昔私もスクールアイドルをやってみたくて、考えたフォーメーションがあるの。
よかったら試してみて!」
アタシたちは声をあげた。
「ドミナントー!!◝( ゜∀ ゜ )◟キメ!」
設定協力
・Cafe Bar QP's
■第三話「何度?難度?軟度?」
「あーあ、ヨッピーは開脚180度なんてできる?」
商店街のドラッグストア「アレカラファイソ」前を歩いていたら、用賀のゆるキャラが商店街にいたので二子ちゃんが話しかける。
アタシ達の街、用賀にはヨッピーというご当地キャラクターがいる。
商店街の人がある日サルスベリの木から落ちて泣いていた彼?を助けてあげた経緯があるらしい。それ以来商店街を手伝ってるとか。
なんとも受験生には危うい設定だ。
ヨッピーは開脚をトライしてみるものの、ズッコケてしまった。
危うく頭が吹っ飛び中から大量の液体が流れだして神化するところをなんとか踏みとどめた。
やっぱり受験生にはキケンだ。
ひろこさんから借りたDVDのフォーメーションはすごかった。
あれは相当な鍛錬と体の柔軟さがないとできない。
アタシたちは愕然とした。ぴえん。
そしたらアリアちゃんが
「夜羽タソ!いまどき『ぴえん』なんて言わないよ、メンブレ~」
なにそれ、ドミナント〜!!◝( ゜∀ ゜ )◟キメ!
■第四話「朝礼にて」
アタシたちのいる用賀女学園は、少し離れた坂上にある六呂田国際と統廃合になることが決まっている。
といっても廃校するのは、六呂田側なんだけど。
それでもアタシには脅威だ。
なんてったって、インターナショナルで強烈なインバウンドの波が用女に降りかかるわけだから、陰キャのアタシにとっては世知辛い環境になるってことよ。
月初に行われる、用女の朝礼でアタシはそんなことを考えていた。
壇上で話す、齋藤学長の話なんて一切入ってこない。
齋藤学長は、そもそも話が明後日の方向に飛ぶことで有名なの。
一部では「シャンク齋藤」って呼ばれているらしい。って藤谷先生も言ってた。
どうにかしてこのウェーブにしっかり乗って、アタシたちスクールアイドル部を飛躍させたい。
なんかいいアイデアないかなぁ。
そ、そうだ!◝( ゜∀ ゜ )◟キメ!
■第五話「メン募と焼鳥とサブドミナント」
アタシが思いついたアイデアを二子ちゃんアリアちゃんに話してみた。
「新メンバー募集のためのライブ?」
そう、思いついたのは六呂田国際で行われる、閉校祭でのライブだ。
「アタシたちのパフォーマンスを見てもらって、新メンバーを募集するの。きっと、サブドミナントだって増えるはず!」
二子ちゃんとアリアちゃんは顔を見合わせて
「サブドミ?」とハテナ顔だ。
夕方のFOJIスーパーに加え二人の呑気なハテナ顔が絶妙な哀愁を感じさせた。焼鳥のいい香りもしてきた。ここは東京か。
「サブドミナント!アタシのワンフーのこと!ファンのこと!」
「二人は知らないと思うけど、アタシの親友の陸子ちゃんがバイトしてるこのスーパー隣2階の焼き鳥屋大将だってアタシのサブドミナントなんだからね!◝( ゜∀ ゜ )◟キメ!」
二人の顔がハテナ顔から苦笑に変わった。
設定協力
・用賀山本屋
■第六話「マンボー豆腐はじめました」
「新曲は順調みたいだね、振り付けはどんなのにしようかな?」
アリアちゃんが踊りの構想を練っている。
アタシ達は彼女のバイト先「かとぅ家。」にてお茶をしていた。
閉校祭への参加は、藤谷先生の推薦もあってすんなり話が進んでいる。
新曲はさらにその先のステージで披露するために作っている。
でもまずは、アタシ達のデビュー曲、「虹の架け橋」のパフォーマンスとしての質を上げないとダメだと思う。
それを六呂田のみんなに見てもらって、スクールアイドルの魅力を知ってもらうんだ。
そんなとき店主のかとぅさんがアタシたちのために料理を振る舞ってくれた!
「腹減っただろ?マンボー豆腐食べてきな!特製やで!」
マンボー豆腐ってなんだろう?
シャイ煮って食べ物は聞いたことあるけど。
ていうか「かとぅ」っていうから、異国の人かと思ったら、ゴッツ日本人だった。。
設定協力
・かとぅ家。neo asian cuisine
■第七話「うるとらそー!はい!」
みんなと別れて、ひとり用賀二丁目公園で練習を始める。これがアタシの日課だ。
実はファーストステージの動画を録ってくれた人がいて、アタシはそれをみて驚愕した。
テレビで映ってる、アイドルたちのパフォーマンスとは雲泥の差だったからだ。
アリアちゃんのダンスはキレッキレだ。でもアタシのはまだまだ。
そもそもテレビのアイドルには、振り付け講師、プロデューサー、、あらゆるその道のプロが彼女たちのパフォーマンスを上げるべく暗躍してるはずなんだ。
ひろこさんからもらったDVDのフォーメーションは、まだアタシには無理だ。
だから、この子供達が遊んでる小さな公園で一人トライ&エラーを繰り返して、高めていくしかない。
気持ちだけは、誰にも負けないんだから。
まずはこの硬い体をなんとかしないと!超魂でやってやる。
「うるとらそー!はい!◝( ゜∀ ゜ )◟キメ!」
子供達「ウルトラソーってなに?」
「し!知らないの?! 『はい!』と『へい!』で意見が分かれるんだから!」
■第八話「続・アイドル論」
帰り際、うおはんの前を通ったら、二子ちゃんがバイトをしていた。
店長の美智子さんと、またアイドル話で盛り上がっているようなのでちょっと加わってみる。
「アイドルってのは可愛さで押すのもあるけど、今の時代はやっぱり人に勇気を与えられる存在でないとダメよ。勇気爆裂しないと。」
美智子さんは遠い目をしながらそういった。
その先には最近ハマったアニメ「勇気爆裂ドーンドドドドーン!」のポスターが。
確かに、アイドルって本当に難しい存在だと思う。
人の感情に寄り添うには、一体どうしたらよいのだろう。
なんとなく、そこの答えが見えないまま活動しちゃってる感じもするんだよな。
「輝きたい」と二子ちゃんは言ってるけど、それが世間が欲してるものと重なるとも思えなくって。
すると美智子さんが
「そりゃあ、人気を獲得するってのはさ、『三方よし』じゃないと上手くいかないもんさ」
設定協力
・うおはん
■第九話「三方よし」
「だって自分よし、相手よし、世間よしって難しくない?それをアイドルでやるって」と二子ちゃん。
結局、『三方よし』のアタシ達なりの答えは出なかった。
そもそも、アタシ達は「輝きたい」という自らのやりたいことだけでここまでやってきた。
それは「自分よし」ってやつなんだろう。
じゃあ「相手よし」。
アタシ達ができることは、パフォーマンスってことになるんだと思う。
アイドルっていいな、元気でるな。。って思ってもらえるパフォーマンスか。
それはきっとまだできていないんだ。
その先の「世間よし」なんて程遠い。
アタシ達にできることってなんだろうな。
きぬた公園を歩きながら考える。新緑の季節はまだもう少し先。
閉校祭ライブはもう、明日。
今はまず、いいパフォーマンスをしてメンバーが増えることを祈りたい。
■第十話「閉校祭」
六呂田国際の閉校祭当日。
「今、全力で輝こう!」
あたしたちのパフォーマンスが始まった。
精一杯の笑顔で、みんなが元気になれるよう!そして、スクールアイドルって素晴らしいんだってことを伝えたい。
でも、なんだろう。この違和感は。
全然盛り上がってない。どころか、みんなの顔は少し浮かない感じ。
微笑みの中に悲しみが溢れていた。
そりゃあそうだ。六呂田国際は廃校になっちゃうんだから。
「ありがとうございました!用女スクールアイドル部はメンバーを募集しています!」
結局、あたしたちのパフォーマンスは最後まで盛り上がらず、拍手もまばら。
なにがいけなかったのか。
それは、アタシ達の生半可な気持ちだったのかもしれない。
そう思った夕暮れに、六呂田国際の校舎が寂しく佇んでいた。
■第十一話「応募者ゼロ」
その後、スクールアイドル部の連絡先には何も音沙汰がなかった。
応募者は0ということだ。
ニ子ちゃん、アリアちゃんは塞ぎ込んでしまった。
応募者0人ということや、盛り上げられなかったこと、六呂田側の気持ちを十分理解せずに突っ走ってしまったことに。
悔しさとか後悔とか、さまざまな感情が胸をよぎっているんだろう。
「夜羽ちゃんは、どうしてそんなにいつもと変わらずいられるの?
うらやましい。。」
。。。はぁ。もう、キャラじゃないんだけどな。
「アタシだってやるせ無いさ!めちゃくちゃに悔しいさ!
でも悔しいってことは、強烈にアイドルが好きってことだ。
そうなんだよ、本当の挫折ってのは強烈に好きなことがないと味わえないんだ。
その挫折は、絶対に今後の糧となる。
悔しいと思うなら、まだ輝ける。とっとと練習いくよ!」
ザク!!!!
二人の胸になんてことない言葉の矢がブッ刺さる音がした。
■第十二話「ヨハネのマジ2」
用賀二丁目公園にみんなで来た。
正直アタシの言葉で何かが変わるなんて思っていない。もっと行動で示さなきゃ。と思い発破をかけて公園に連れてきたけど。
アタシがしてきた努力なんて大したことない。
ひとまず、アタシが日課にしてたメニューをみんなでこなしてみる。
するとアリアちゃんが、
「す、すごいよヨハネちゃん!こんなの毎日やってたの?私でも結構きついメニューだよこれ」
二子ちゃんはしんどすぎるのか、悶絶している。。
アタシは、ひろこさんが教えてくれたフォーメーションをなんとか実現したい。そのために、いろんな本で柔軟について研究してメニューを作った。
まだ変化はないけれど。
その話をすると、二子ちゃんが羨望のまなざしで、
「ヨハネのマジトゥーだね!」
「なにそれ!「かとぅ」さんみたいに言わないで!あと、ヨハネじゃなくて夜羽!ってやめてよ!これ言うと一部界隈から怒られるんだから!」
澱んだ水が流れ出した気がした。
■第十三話「インターネッツしゅごい」
あれから、柔軟を続けているけども一向にアタシの身体は柔らかくならない。用賀神社で毎日、お礼と目標を言いに来てるけど、イマイチ進化しない。
作曲なら得意なんだけどこればっかりは。。
うまく行かないときは、やり方を変えないといけない。
とはいえ、これ系の先生って学校にもいなくてなぁ。
担任の藤谷先生は専攻体育だっていうのに逆上がりできないらしいし。。
そんなときふと、二子ちゃんとアリアちゃんが上げたチックタックの動画をみていると。
アタシの心を読んでいたかのごとく柔軟に関する動画がレコメンドで流れてきた。
その名も「やばぺいメソッド」。
黒縁眼鏡をかけた「やばぺい」お兄さんが解説する2週間でタコのような体になれるメソッドだ。
「クックック...」
思わず笑みが漏れていた。これが現代技術よ。離れていても繋がれる
インターネッツしゅごい!
これであのフォーメーションだって絶対ものにしてやる!
■第十四話「穏やかに穏屋」
ある日、アタシは新曲のデモを聴いてもらいに二子ちゃん家「穏屋」にお邪魔していた。
あれから、やばぺいメソッドをこなしたアタシの体は段々と柔らかくなってきていて、練習を続ければきっとあのフォーメーションだってできるはず。そう、三方よしの『相手よし』が見えてきているのだ。
「でもさー、それができても、『世間よし』って難しいよねぇ」
。。。そうだった。『相手よし』はパフォーマンスを突き詰めれば見えそうだけど、『世間よし』ってのが未だに見えない。
ふと見渡すと店内には、大食いのチックタッカー達のサインが。
この人たちも有名になって、視聴者を驚かせ、飲食店の宣伝にもなる。『三方よし』がしっかりできてるんだよなぁ。。
アタシたちになにかできることは。。
そんなとき、常連の一人である可音子さんがアタシ達に話しかけてきた。
「今度の日曜ゴミ拾いサークルの活動あるんだけど参加する?」
みんな「ドミナント〜!!◝( ゜∀ ゜ )◟キメ!」
設定協力
ビストロ穏屋
■第十五話「中の人」
活動に誘われたアタシたちは、さっそく日曜日にゴミ拾いサークルに参加した。
集合場所であるマツ酒店に行ってみると、ヨッピーもいた。
用賀はとってもきれいな街だけど、きっとこういう活動が昔からあるからキレイなのかもしれない。
ゴミ拾いを可音子さんと始める。
ゴミ袋と清掃トングをもって街を歩き始めた。
ヨッピーは大丈夫だろうか。また頭が吹っ飛びそうにならないのだろうか。
と心配していたら、案の定ズッコケた。
すると中から青いハットの。。所謂中の人がお目見えしてしまったのだ。
「て、てへ!用賀くんだよ!ノッポさんじゃないよ!」
まさか、ゆるキャラの中にゆるキャラがいるなんて。マトリョシカじゃないか。用賀マトリョシカか!
「しょーもな!」
声に出てた。
■第十六話「用賀よし」
用賀のゆるキャラの中には「用賀くん」というシン・ゆるキャラが入っていた。
用賀カラーの水色のハットの中央に四つのボタン。なるほどその帽子で用賀の用を表しているのか。ノッポさんてなんだろう?
身軽になった「用賀くん」と名乗るゆるキャラは、ヨッピーという抜け殻を放置してゴミ拾いを始めた。
もはやその抜け殻が◯ミなんじゃ。。
午前中には、街のゴミをあらかた拾い終えた。
すると、商店街の人から
「いつもありがとう」
そんな言葉をもらった。
そうか。
アタシ達には、何もないと思っていたけれど、アイドルだけじゃなくって貢献できることがあるんだ。
これがもしかしたら、『世間よし』に繋がるのかもしれない。
可音子さんと、アタシ達はキレイになった用賀の空を見上げた。
◝( ゜∀ ゜ )◟キメ
■第十七話「新たなチャンス」
それから、アタシたちは事あるごとに街のイベントに参加するようにした。
なんてことないと思っていたこの街も、実はたくさんの人に愛され、この街をよくしようと考え、行動していることを知った。
アタシたちが参加する度に、知り合いも増えていき、アタシたちがスクールアイドル活動をしていることも認知されてきている。
地域貢献とスクールアイドルか。その発想はなかったけど、なんか動き出した気がする。
そんなとき、商店街関連の方からうれしい提案をいただいた。
「今度、用賀でスプリングフェスみたいのやるんだよ。前回君たちが出たやつよりもっと大きい、学生主体のイベントなんだよ。
特設ステージとか作るから、出てみないかい?」
。。。
キター♪───O(≧∇≦)O────♪
ついにアタシのサブドミナントたちに、ドミナントな世界を見せるときが来たのよ!◝( ゜∀ ゜ )◟キメ
あれ、どうして周りは苦笑いなのだろうか。
■第十八話「新曲とベロシティ」
ダンスの練習や、地域貢献活動をしつつもアタシは作曲も進めていた。
聴いてもらってOK出たデモからコードをリハーモナイズして、今回はブラックアダーコードも使っちゃうんだから!これでシレっとステルス転調なんかもしちゃって、それで曲の要部分に〜
(´∀`∩)ドミナント~!
でも歌詞はどうしようかな。。なんかモチーフになるようなもの~。
アタシはふとDAWの画面をのぞき込んだ。
「そういえばベロシティって一体なんなんだろう。音の強さだと思ってたんだけど」
ふと調べてるみると意外な言葉が。。
「速度」
そう、「強さ」ではなく「速度」だったのだ。
これは使えるかもしれない。。
早速ニコちゃんにLIME。メインの歌詞担当はニ子ちゃんだ。
「YO〜YO〜、こちら夜羽〜、今からお前に歌詞のテーマを贈呈〜」
このアプリ使うと韻を踏みたくなるのなんでかしら。
二子「 ( ̄Д ̄) 」
■第十九話「新曲完成」
出来上がった伴奏とメロディーを二子ちゃんに送る。
LIMEで伝えたのは「速度」をモチーフにしたもの。
思えばここまで来るのは本当に光の速度のようだった。
元々一人で作曲してボカロに歌わせてたアタシが、二子ちゃんアリアちゃんと出会って、スクールアイドル始めて。。
ステージも2回経験させてもらった。
楽しいことと、悔しいことの両方を知った。
一人じゃできなかった。けどみんなとならやれるんだ。
夢を実現させて、その先へ。
そのときアタシのスマホが鳴った。二子ちゃんからだ。
―その夢を追い越すベロシティ 教科書なんてなくても進んでいける
光の色を見に行こう キミを迎えにゆくから―
クックック。。
ついにできた!できたわ!
アタシのサブドミナントたちの心震わす曲がぁ!
あの焼き鳥屋大将だってかとぅさんだって、陸子だって藤谷先生だって、シャンク齋藤だって、やばぺいだってイチコロなんだからぁ!!
■第二十話「夢woiベロシティ」
あれからアタシ達は新曲の歌とフォーメーションの練習を続けた。
今日はその出来をみてもらうために、再びダンススタジオQP'sに来た。
「クックック、ついに来たわね。このアタシの眼帯を外す日が!」
そう、厨二病全開のアタシは常に眼帯をしていて自らの力を封印していた。
日々二人に「眼だいじょぶ?」と突っ込まれながらもけして外したりはしなかった。
でもやばぺいメソッドで覚醒したアタシを解き放つときが来たのだ。
「覚醒夜羽、降臨!」
あれ、密室のはずのスタジオにちょっと寒い風が吹いた気がした。
でも気にしない!おだまりなさい!
「それでは聴いてください!『夢woiベロシティ』」
今回は二子ちゃんの勧めでアタシ、砧夜羽がセンターだ。
歌い出しを終えて、イントロのフュージョン的な分数コードでアタシのキメ。
足を蹴り上げて手をつかずに側転をする側宙【エアリアル】。
それが決まったとき、ひろこさんの口がこう動いた気がした。
「夜羽ちゃん、ありがとうね。」
そうして、アタシ達の二曲目「夢woiベロシティ」は完成したのだ。
。。。
ちなみに奥でみていたひろこさんの旦那さんも
「GO!格だぜ」
と言ってくれた。
設定協力:CafeBar QP’s
■第二十一話【準最終話】「用賀スプフェス」
用賀スプフェス当日。
アタシ達は朝から設営などの手伝いに参加した。
出店するお店は、QP'sやかとぅ家。、うおはん、それに二子ちゃん家の穏屋など、用賀の飲食店が大集合している。
先日日本人と判明したかとぅさんは、朝から寸胴で料理をしている。
どうやら「超マンボー豆腐煮」というものを売るみたい。。
向こうでは美智子さんが「うおはん特性〇ミノ風ピザ」を焼いている。
どういうわけか大手チェーンから粉を仕入れてきたらしい。。
すっかり元の姿に戻ったヨッピーも、写真撮影で大忙しだ。
このイベント自体、用賀を愛する学生たちで企画/運営されている。
もちろん、商店街も協力しているのだけど、それでも学生でこのイベントをやるのってしゅごい。
普段はなんてことない三角公園が、まるでどこかのフェス飯会場になっている。
アタシ達に与えられた特設ステージは、そこから少し離れたウォーターストーン前だ。
しっかりと導線が引かれているから人の集まりも問題ない。
あれから六呂田国際は閉校し、この春休みを終えたら彼女らは用女の一員となる。
悲しい気持ちと、そしてどこかウキウキした気持ちの両方を抱え入ってくるんだろう。
アタシはこの春の陽気と、浮ついた世間の雰囲気が嫌いだった。
何にしても不安のほうが勝つからだ。
でも、今は少しだけそういう感情も理解できる。
これまでの経験や努力、コミュニティとの出会いがアタシをほんの少し成長させたのかもしれない。
入念にウォーターストーン脇で準備運動をしていたら、二子ちゃん、アリアちゃんもやってきた。
「なんかキンチョーしてきた!」
「踊りは完璧なんだけど、ちゃんと音外さずに歌えるかなぁ。。」
今回もこの3人で、ステージに上がる。
「ねぇ久々あれやろうよ!」とアリアちゃん。
3人で手を合わせ青空へ向けて振り上げる。「1、2、3、(´∀`∩)ドミナント~!」
あれから、ひとつ苦難を越えたアタシ達の声がウォーターストーンの階段をこだまし、フェイザーのようなエフェクトがかかった。
■最終話「リベンジマッチ」
勢いよくステージに出る。
もう迷いはない。
ステージに立つことのうれしさだけじゃなくって、厳しさも知った。
ここは誰もが立っていい場所じゃない。
立ちたくても立てなかった人がたくさんいる。アタシ達が立てているのは、用賀のみんなのおかげなのだ。
ステージから客席を見渡す。
右のほうにはひろこさんと旦那さんがサイリウムを持ってくれている。となりにはかとぅさんだ。
真ん中あたりには、藤谷先生とうおはんの美智子さん、そして可音子さんも来てくれている。
左のほうには、陸子と、あと登山のような恰好した焼き鳥屋大将まで。大将ノリノリではないか。。
さすがにやばぺいはいないけど。。
でも知ってるわ!
客席一番後ろで、深くキャップを被っているのは!あなたシャンク齋藤ね!変装がバレバレなのよ!
学長もこっそり来ていることがわかった。
「それでは聴いてください。私達の新曲「夢woiベロシティ」!!」
本当に欲しいものは、いつだって手を伸ばしたそのちょっと先にあるんだって。どこかの誰かが言ってた。
アタシ達の物語はまだまだ続く。というか始まったばかりだ。
これからも悔し涙を流すことだってあるだろう。
それも全部紡いで、アイドルとしてやっていくんだ。
― 本当はわかってるよ一人じゃそう何にもできない幼芽だよ
勇気や希望なんてあるかわからない
だからそれを見つけに行きたいんだ
(夢woi!夢woi!ベロシティ!) ―会場は大盛況だ。事前にお願いしたコール&レスポンスが心地いい。
最後のサビに差しかかるキメ部分でアタシが2度目のエアリアルを決めたその刹那、
ウォーターストーンを流れる水しぶきから、青空に向かって3原色の虹の橋が架かるのが見えた。
私立用賀女学園スクールアイドル部はじめ〼
2nd Season ~夢woiベロシティ~ 完
■エピローグ「新?メンバー」
用賀は都会なのに人の繋がりが深い、どこか村のような街。エモいお店や飲食店もあって、歯医者と美容院、、あとパン屋がいっぱいで、
最近鰻屋ができたw
でも、ドミナントな世界にはまだまだ。
とにかく4月から用賀女学園はもう、インターナショナルで強烈でえげつないインバウンドの荒波が襲来してしっちゃかめっちゃか。
まだ六呂田国際のオシャレ制服姿の知らない子達がわいわいしている。
「インバウンド〜!!!!!○△※∵⌘◆」
空に向かって叫んでしまった。自分の唾が降ってきた。
「夜羽ちゃんが、ご乱心だ!笑」
二子ちゃんがうれしいそうに言っている。
隣でアリアちゃんもニヤリ。
アタシたちのステージは大盛況だった。
六呂田国際での失敗を取り戻すことができたと思う。
「三方よし」のヒントみたいなものもしっかり用賀の人たちから学ばせてもらった。
教室の窓から春の暖かい風が流れ込み、カーテンを撫でる。
「結局、部員は増えずだから部室をもらうのはまだだねぇ」
とアリアちゃん。
そう、部室がもらえるのは部員が4名以上というルールなのだ。
それまではこれまでどおり、ミーティングは用賀の飲食店になるのだろう。
そんなとき、六呂田国際の制服の娘がひとりアタシたちに近寄ってきた。
ツインテールで、いかにもカワイイ系といった感じの娘だった。
普段はフリフリのスカートとか履いてそうだ。
そんな娘がこの陰キャのアタシに何の用だろう。
「あ、あの、ボ、ボク男なんだけどスクールアイドルになれるかな?この前の用賀スプフェスを見て、やってみたいって思ったんだ!」
みんな
「◝( ゜∀ ゜ )◟ドミナント~!!!!!」
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係がありません。なお設定にご協力いただきた用賀の店舗は実在いたします。用賀を訪れた際はぜひお立ち寄りください。