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「デューク」(江國香織)を読む6~センター試験に挑戦!

最終問です。


問6 「次のa~gのうち、この小説における表現や手法の効果についての説明として、適切なものの組み合わせはどれか。」


「a 別れの時を夕暮れという境界の時間に設定していることで、少年との一日のデートの終わりと、愛犬との永遠の別れとが幻想的に重ね合わされている。」…正解だそうです。

 この文章は主述がうまく呼応していないため、文章の趣旨が分かりにくい。「設定し」の方がいい。また、「幻想的」は、青年という実在が、次の瞬間には夢のように消えてしまったことを作問者は言いたいのだろう。しかしここも、「~永遠の別れとを重ね合わせ、幻想的に描いている」とすべきだ。「少年との一日のデートの終わりと、愛犬との永遠の別れ」とを、「幻想的に重ね合わ」せているわけではない。やはり、文章として難がある。

また、「幻想」は他の選択肢にもあり、作問者はこの物語をそのように読んでいるようだが、青年という存在が実はまぼろしであったということは、それまでのふたりの出会いとデートは、他者から見ると、実は女性ひとりで行動していたとも読める。


「b 「少年」の行動や面影にデュークの思い出を何度も重ね合わせて、「少年」がデュークの化身であるかのような感覚を読者に与え、不可思議な幻想の世界を見せることで、一日の出来事が「私」の夢であったことを表している。」…不正解だそうだ。

デュークという存在が幻想であるという作問者の読みの上には、このような解釈も可能だろう。正解でない理由がわからない。


「c 「少年」と行動をともにするうちに、現実にはありそうもない経験を重ねることによって、幻想の中に救いを求めるようになっていく「私」の意識の内側を読者に印象深く示している」×


「d 「私」の混乱した心情を際立たせるために、同じ言葉を反復使用することは、一見稚拙な表現のようだが読者の心に強く印象付けられるという効果がある。」〇

これは例えば、「デュークが死んだ。私のデュークが死んでしまった」や、「泣けて、泣けて、泣きながら~、泣きながら~」や、「デュークはもういない。デュークがいなくなってしまった」などを指している。


「e 年の瀬のあわただしい時期に愛犬の死を設定することで、ひっそりと死んでいった愛犬に対する「私」の痛切な気持ちが強調され、クリスマス前という時間設定が、新たな恋の始まりを効果的に示唆している」×


「f 「少年」とのデートの中にデュークの好きだったものを散りばめることで、デュークとの交流を「私」が無意識のうちに再び体験していることを読者に示している」…正解だそうです。

 「「少年」とのデートの中にデュークの好きだったものを散りばめること」は、「デュークとの交流を「私」が無意識のうちに再び体験していることを読者に示している」わけではない。少年とデュークの共通性は伏線となって散りばめられている。だがそれは、「デュークとの交流を「私」が無意識のうちに再び体験している」ということではない。デュークが女性のもとに現れたのは、女性に愛と感謝を伝え、励ますためだ。


「g 同じ言葉の繰り返しや登場人物の行動の克明な描写は、サスペンス映画のように一つ一つのシーンを読者に印象付けるという効果をもち、物語の展開をスリリングにしている。」

「サスペンス」…次はどうなるかと思って、はらはらさせる作り方。(三省堂「新明解国語辞典」第六版)

「はらはら」まではいかないが、「次はどうなるか」とは思っただろう。

「スリリング」…ぞっと(はっと)するような感じがする様子だ。(三省堂「新明解国語辞典」第六版)

最後の場面は「はっと」はしたが、「ぞっと」はしないだろう。

従って、△くらいの選択肢だ。不正解だそうだ。


作問者の「幻想的」という用語の意味内容がぼんやりとしており、それも読み取る必要が、受験生にはある。受験生が作者と作問者のふたりを相手にしなけばならない所以だ。選択肢の表現が曖昧で、作問者の文章力に難がある。特に正解は、明解な表現にすべきだ。


 数十万人が受けるセンター試験(現在の共通テスト)の問題に、以上のような多くの疑問点があることは、受験生にとって不幸なことだ。


※次回最終回は、noteでご覧下さい。

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