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私の隣には、もう………あなたは居ない……… 中編

 私が富士に

登りに行ってから、

次の日………。


 私は、一軒の

家の前に居た。


「(うぅ………。


次こそは………)」


 この場所に

遣って来てから、

既に数分程、

時間が経過………。


 何度も、

扉に設置されている、

呼び鈴のボタンを

押そうとしているの

ですが………。


 どうしても、

後、一歩が

踏み出せなかった。


 とは言え………。


 此処まで

来ておいて、

今更、

何もせずに、

引き返す訳にも

いかない。


「スゥー……。


ハァ………」


 覚悟を

決める為に、

私は………。


 何度も

深呼吸を繰り返す。


「(いざ!?)」


 深呼吸をした事で、

覚悟を決める事が出来た、

私は………。


 気合を入れると………。


 扉に

備え付けられている、

呼び鈴のボタンを

勢い良く押した。


 すると………。


 扉越しに、

呼び鈴の鳴る音が

聞こえて来た。


【「はい………?」】


 呼び鈴を押してから、

数秒程、時間が経過………。


 呼び鈴の下に

付属している、

スピーカーから、

私の良く知っている、

女性の声が聞こえてきた。


「あの………。


その………」


 此処に来るまでに、

何を話すのか………。


 色々と

考えてはいたの

ですが………。


 スピーカー越しに

聞こえて来た、

彼女の声を聴いた

瞬間………。


 何を話すのか、

すっかりと、

忘れてしまった。


 そのせいも

あってなのか………。


 何とも曖昧な

返事をしてしまった。


 そんな風に………。


 私が、

ドキドキとしながら、

彼女からの返事を

待っていると………。


 突然………。


 通信が切れる音が

スピーカーから

聞こえてきた。


 何故、

通信が切れたのか、

理由が分からなかった、

私は………。


 取り合えず、

成り行きを

見守る事にした。


 通信が切れてから、

数十秒程、時間が経過………。


 どうした物かと………。


 私が、

成り行きを

見守っていると………。


 扉の向こう側から、

バタバタと………。


 誰かが、

物凄い勢いで

近付いて来る音が

聞こえてきた。


 誰かが

近付いて来る、

バタバタ音が

鳴り止むと、

次に………。


 ガチャ

ガチャと………。


 誰かが、

ドアノブを

思いっきり、

回している

音が聞こえて

来た。


「ヒェ………」


 余りの

勢いに、

恐怖を感じた、

私は………。


 短く

悲鳴を漏らすと………。


 その場から、

一歩、退いた。


 扉の向こう側に

居るであろう、

誰かさんに対して、

私が恐怖を感じて

いると………。


 私の

目の前にある扉が

バン!と………。


 大きな音を

立てながら、

勢い良く開かれた。


 予想以上に、

扉が開いた音が、

大きかった事で、

驚いてしまった、

私は………。


 思わず、扉から

目を背けてしまった。


 扉から目を背けてから、

数秒程、時間が経過………。


 早鐘の様に、

脈を打っている心臓を、

どうにかして平常まで、

抑え込むと………。


 恐る恐る、

勢い良く、

開かれた

扉の方へと

視線を戻した。


 すると………。


 視線を向けた先に

居たのは………。


 私が、今、一番、

会いたいと思っていた、

人物である千鶴の姿が

私の目に映った。


「(あはは………。


久しぶりに、

顔を見たけど………。


変わりは

無さそう………。


かな………?)」


 最後に、

千鶴と会ったのは、

数年も前の事だったので、

若干、記憶が曖昧なの

ですが………。


 最後にあった時は、

肩の高さ位までしか

無かった髪の毛も………。


 今では、大分、

伸びたようで………。


 腰まで届きそうな程、

長い黒髪を頭の後ろの方で、

一纏めにしていた。


「(それに………。


何だか

エプロン姿も

板に付いている

気がしますね………)」


 料理の最中だったのか………。


 無地の

エプロンを装着している

千鶴の右手には、

暖かな湯気を漂わせている

金属製のお玉が握られていた。


 最後に会った時と

比べてみると………。


 ほんの少しだけ、

やつれた様な印象を

受けるのですが………。


 それでも………。


 変わらず、

元気そうな姿を見れて、

ホッとした。


「(そろそろ、

何か喋った方が

良いですかね………?)」


 扉の先から、

千鶴が姿を現してから、

数十秒程、時間が経過………。


 お互い、無言のまま、

見つめ合うだけの時間が

続いていた。


「こ……。


こんばんわぁ~………」


 好い加減、

何かを喋った方が

良いと考えた、

私は………。


 未だに、

荒い息を吐きながら、

私の事を凝視している、

千鶴に向かって、

再度………。


 こんばんはと、

夜の挨拶を口にした。


 すると………。


「こ………」


 挨拶を

返してくれるのか………。


 千鶴の口から、

声が聞こえて来たと思った

次の瞬間………。


「この………!


バカ娘が!!?」


 夜空に浮かぶ、

月にまで届くのでは

ないかと思える程、

気持ちの籠った

雄たけびを上げ乍ら………。


 千鶴は

右手に持っていた、

金属製のお玉を

私の頭に向かって

勢い良く、

振り下ろしてきた。


 突然の自体に、

防御も

回避もする事が

出来なかった、

私は………。


 千鶴が

振り下ろしてきた、

金属製のお玉を、

ただ眺める事しか

出来なかった。


 そして………。


 千鶴が

振り下ろしてきた

金属製のお玉は、

見事に、私の

頭の天辺に命中した。


「いっっっっ!!!?」


 かなりの勢いで

振り下ろされたのか………。


 『ゴンっ!』とも

『ゴンっ!』とも取れる

独特の鈍い音が、

頭の奥深くにまで

響いてきた。


 余りの

痛さに私は、

その場で、

しゃがみ

込むと………。


 先程、

金属製の

お玉で叩かれた、

頭の天辺を

両手で押さえ付けた。


 叩かれてから、

多少は時間が

経過したのですが………。


 痛みが

引く所から………。


 時間が

経つに連れて

頭の痛みは、

段々と増してきた。


「痛いじゃない!!


何をするのよ!?」


 時間が経っても尚、

頭の痛みが

引かなかった事から、

私は………。


 両眼一杯に

涙を浮かべ乍ら、

金属製の

お玉で叩いてきた、

千鶴に向かって

抗議の声を上げたの

ですが………。


「このバカ娘………。


まだお仕置きが

必要の様ね………?」


 そんな、

私に対して、

千鶴は………。


 底冷えする様な

声音を出し乍ら、

金属製のお玉を

持っていない

反対の手で、

私の顔を

鷲掴みにした。


「あの……。


千鶴……、さん………?」


 今までの経験から、

逆らってはダメだと、

本能で理解をした、

私は………。


 頭に感じる

鈍い痛みを

意識の外へと

追いやると………。


 千鶴に向かって、

どうかしたのかと、

お伺いを立てた。


 しかし………。


「あんた………。

明日の予定は?」


 私の

お伺いを完全に、

スルーした千鶴は、

どう言う訳なのか、

私の明日の

予定に付いて

質問をしてきた。


「明日と言うか………。

今週、一杯は、

仕事は休みにしたけど………」


 何故、

私の予定を

聞いてきたのか、

疑問に思った

けれど………。


 逆らう事が

出来なかった、

私は………。


 正直に、

明日以降の

予定に付いて

千鶴に報告をした。


「なら良いは………。


あんたには、

聞きたい事が

山程あるから、

今日は家に泊まって

いきなさい………」


 何が

良いのか………。


 突然、

泊って行けと

言われた。


「いや………。


それは

何と言うか………」


 このまま、

泊っては

危険だと、

私の本能が

囁いた事から………。


 どうにかして、

泊るのだけは

辞退し様としたの

ですが………。


「良・い・か・ら!


泊っていけ!!」


 私の顔を

鷲掴みにしている

掌に力を込め乍ら………。


 有無を

言わさない口調で、

泊って行けと口にした。


「(い………。痛い………)」


 どれだけの力を

込めているのか………。


 さっきから、

私の顳顬(こめかみ)

辺りから、

メリメリと

嫌な音が

聞こえて来た。


 けれど………。


 どれだけの、

暴力に晒されようと、

横暴な態度に

屈する心算は

毛頭なかった。


 断固とした

態度を貫いたの

ですが………。


 それが

癇に障った

のか………。


 時間が

経つ毎に、

私の顔を

鷲掴みにしている、

千鶴の掌の力が

増してきていた。


 好い加減、

返事をしなければ、

リンゴの様に、

グシャリと、

顔が握り

潰されると、

ビジョンが

見えた。


「あい………。


お世話になります………」


 千鶴の

暴力に屈した訳では

ないけれど………。


 今夜は、

お世話になりますと、

返事を返した。


「良し………」


 何が、

良しなのか、

分からないけど………。


 取り合えず、

私の返事に

満足してくれたのか………。


 私の顔を

鷲掴みにしている、

千鶴の掌から、

力が抜けた。


「(た………。


助かった………)」


 未だに、

私の顔から、

手を放しては

くれないけど………。


 握っている力を

緩めてくれた事で、

顔が潰されると言った

事態だけは避ける事が

出来た。


「あんた………。


晩御飯は食べたの?」


 千鶴に

顔を握り潰されずに済んで、

ホッと………。


 安堵の息を

吐いていると………。


 千鶴から

晩御飯は食べたのかと

質問をされた。


 実は、

登山から

帰宅した私は、

そのまま、

自宅で、

一休みした後、

千鶴に渡す予定の

お土産を手に、

この場に遣ってきた。


 なので………。


 晩御飯どころか、

今日一日、何も口には

していなかった。


 ただ、

そこの事を

馬鹿正直に話すと、

また烈火の如く、

千鶴に怒られそうな

気がした。


「(ど……。


どうしよう………?)」


 どうせ、

嘘を付いても、

千鶴には、

見破られる

だけなので、

此処は、

ありのままの事を、

正直に話べき

なのですが………。


 正直に、

話したら

話したらで、

怒られるのは、

目に見えていた。


 どちらにしても、

怒られるならば、

せめて………。


 最小限の

被害で済むのは、

何方の方なのか

考えを巡らせて

いると………。


「その様子だと………。


晩御飯どころか、

今日一日、何も食べては、

いないみたいね………?」


 こう言うのを、

以心伝心と言うのか………。


 私の一体、

何を見て、何を、

どう察したのか

分からないん

だけど………。


 私が

何かを言う前に………。


 今日、一日を通して、

私が何も食べていない事を

即座に見抜かれてしまった。


「まぁ、

良いは………。


食事でもしながら、

あんたが、

今まで、

何処で、

何をしていたのか、

詳しく話を聞かせて

貰おうかしら………」


 この場で、

問い詰めるよりも、

私を逃がさない様にするのが

先決だと判断したのか………。


 私の事を

引き摺り込む様な感じで、

家の中へと招待した。

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