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女子高生時代の恋愛体験は非常に重要です。

作者: 墓穴

「何も食べずに1キロ増える事とか、あんの」

昨日も一昨日もご飯抜きなのに。


それより、やべ、そろそろ7時半になる。

カラコン入れて下地塗って日焼け止め、うわーニキビ出来てる、コンシーラー コンシーラー、コンシーラー.....で、眉毛書いて 涙袋でしょ、あとあれ、色つきリップ。あーーーー、マスカラ!忘れてた!

これが私の最大限の学校用メイク。

校則が甘いとはいえ、真子はこの間ツケマ没収されてたしな。


弟には ねーちゃんケバい、と言われるけど これ以上何処を削れってんだ。男ってのは分からないもんだなと、つくづく。



うちの学校は本当になんの変哲もない地元の高校だけど、何が良かったって、あのやっくんがいる。やっくん。中学の頃からずっと目で追っていたあの。

放課後居残りさせられていたときに、たまたま見かけた美術室で見た横顔が 今でも鮮明に思い出せるくらい 本当に好きで。

その時同じクラスじゃなかったから、色んな人に調査しまくって やっと隣の隣のクラスの矢島陶真(やじまとうま)だと分かった時は嬉しかった。



一目惚れって、ああいうのを言うんだと思う。





「ちょっとお前、今日メイク下手くそ過ぎるんじゃない?」

「お前とか言わないでよね〜、寝坊したの。あーあ、やっくんが来るまでにメイク直し終わるかな」

「ホント好きだね」


真子、聞き飽きたって顔。

私は本当に 好きな男の事になると、どうにもそればっかりに気が行っていけない。


「美緒」

「う、わ やっくん」

「うわってなんだよ、今日も美術室 来るの?」

「あー、うん。行きたいと思ってたけど、邪魔にならない?部員じゃないのにさ」


やっくん、睫毛長い。


「まあね、どうせなら美術部 入ればいいのにとは思うけど。神田先輩も喜ぶよ、きっと」

「ああ、神田先輩もね、そうかも」

「じゃあ放課後迎えに来るわ、後でな」

「はーい」


折角やっくんと話せたのに、やな気分。


「神田先輩、嫌なんでしょ」

「バレた?そりゃそうでしょ、美術部の部長だからってやっくんの隣独占してるし 最悪。おまけに巨乳。」

「矢島は胸の大きさに興味無いでしょ、知らないけど。それに神田先輩は独占する気ないだろうけどね」

「あーあ、私も絵が上手かったらなあ」

「そうだよ、美緒。絵、練習したら良いじゃん!矢島と話す機会も増えるよ、それに美術部に入っちゃえば良いし」

「簡単に言うよねえ、真子は」


そりゃそうだけど。

眉間に皺を寄せたやっくんがウンウン唸りながらキャンバスと向き合ってるの見てたら、半端な覚悟で入部も出来ないし。


とか何とか、やっくんの事を考えていたらいつも授業は終わってるし ノートは真っ白。やってしまった.....、真子にでも写させて貰おう。




「あー!やっと昼だよ真子、お弁当食べよ」

「はいはい、分かった分かった。机叩かないで。

でさ、美緒に言いたい話があんの。」


顔の前で深刻そうに手組んだりしないでよ。不安になる。


「やだ、ちょっと 何。」

「矢島に好きな女の子のタイプ、聞いたんだけどさ」

「......何それ、聞きたいけど 聞きたくない。神田先輩とか言わないよね」

「ごめん、違うとは言いきれないかも」


ああ、中学からの4年間 私は何のための時間を過ごしてきたっていうの。そりゃ付き合いたいとかそこまで具体的には考えていなかったけど、そこが悪かったのか。心臓の辺りが痛い。


「それで、どんな人がタイプって?」

「"絵が上手い人"だってよ。」

「ああ、え、あー、ああ.....いや、そんなの神田先輩の事でしょ。あの人賞も取ってるし、もうおしまいよ真子。私明日から何を楽しみに学校に通えば良いの」

「だから、諦める方向にいかないでって。4年間も片想いしてたの捨てるのか」

「あいた、デコピンしないでよ。ただでさえ心に傷を負ってる友人に。どうすればいいと思う?」

「ちょっと泣きそうな顔しないで。やっぱり美緒も、絵 描きなよ。」


絵なんて描けない。



真子には言ったことがなかったけど、中学でやっくんを好きになってから 絵を描いていた時期はあった。絵画教室にも通って 簡単なデッサンから学び始めて、油絵まで描くようになった。まだまだヘタクソだったし、家族以外誰にも話してはいなかったけど。


でも、去年 絵を描くことを辞めた。

真剣なやっくんに圧倒されていたからなのもあるけれど、それは1番の理由じゃない。1番の理由は、神田先輩の絵を見たからだった。


「発端」と名ずけられたその絵の猫背の青年は、顔が似てるとかじゃなくて、それでもはっきりと やっくんだと私には分かった。紫と黄色の美しく咲きみだれる花々や 隅々まで丁寧に描き込まれたそれは、私に圧倒的敗北感を感じさせた。

彼を愛していると、ひしひしと伝わってきて。



そう、その時から分かってたの。

気付いてたんだよ、真子。

やっくんは神田先輩の事が好きで、神田先輩もやっくんの事が好きだって。勘違いとかじゃなくて、間違いなく。



「まあ 気が向いたら真子の言う通り 絵、描いてみよっかなー。」

「その意気!応援してるから、私」

「あ、もうお昼休み5分しかないじゃん。その卵焼き、食べないならもーらおっと」

「はあ!?好きな物残す派なのに!」




放課後、美術室行くのやめよっかな。そろそろ。


ダメだ、ポンコツ過ぎる。私が。

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