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彼女と共に、歩み続ける  作者: 七瀬夕
3/8

第二話 お弁当

第二話となります。

引き続き、宜しくお願い致します。


 ジリリリリと目覚ましの音で目を覚ます。

 想一はいつものように着替えて下へと降りる。

「父さん、母さん、おはよう。」

「おう、想一おはよう。」

「想一、おはよう。ご飯出来てるわよ。」


 想一は椅子へと座り、朝食を食べようとするが、違和感を覚える。

「あれ……あの人が殺せそうな緑の液体Xは? 飲まなくて良いのは嬉しいが。」

 想一は緑の液体Xと名付けた、健康飲料が無いことに気付き問いかける。

「あぁ、あれか。この前、希美ちゃんにも勧めたんだが「人の飲み物ではない」と言われてしまってなぁ。」

 父はガックリと肩を落として言う。

「そう、だから今度は自作飲料じゃなくて野菜で美味しく摂る事にしたの。だからピーマンやニンジンがマシマシよ。」

 最後にウインクをして想一へ嬉しそうに話しかける。

 ――マジか。


 緑の液体Xを飲まなくて済み嬉しいが、再び落胆する想一。


 想一は野菜が嫌いでは無いが、ピーマンが苦手だ。

 だが、両親はピーマンが大好物なのだ。

「それで、こんなにピーマンが散らばってるのな。」

 想一は皿いっぱいに散らばるピーマンを見て箸を止める。

「そうだ想一、嬉しいだろう。これなら美味しく、嬉しく栄養を摂れるからな。」

 父はそう言って嬉しそうに口へ放り込む。

「俺が苦手なの忘れてるだろう。食べるけど……明日から無くしてくれると助かる。」

 想一も文句を言いながら渋々食べる。

「あら、そうだったかしら。私や仁郎さんが好きだから忘れてたわ。」

 想一は(確かにな、何で両親が二人とも好きなのに俺が苦手なんだ?)と、疑問に思う。


「明日から想一の分はピーマン減らすから、早く食べなさい。」

 母の言葉で再び箸が動き出す。

「最近、この芸人テレビに出始めたな。私は好きだが想一は好きな芸能人は居ないのか?」

 父がテレビに映る二人組の芸人を観て聞いてくる。

 テレビの画面には強面の男性とぽっちゃりとした男性が焼きそばのCMで「イカスミマヨビーム」と言って黒いマヨネーズを焼きそばへかけていた。


 これ美味しいのか?と少し引きつつ、知ってる芸能人を思い浮かべる。

「いや、あまりテレビ観ないし、これと言って好きな芸能人は居ないな。」

 部屋でゲームや漫画を読む想一は。芸能人に興味が無い。

「そうか。想一は希美ちゃんしか興味がないもんな。」

「何でそうなるんだよ。」

 何でもそっちへ持っていく父に呆れつつ、実際に的を射てるので全否定も出来ない。


 こうして談笑しながら朝食を食べ終え、希美を待つ想一。

 明日は土曜日だ。

 たまには一緒に遊びに行きたいが誘い辛い。


 二人だとデートと思われてしまうだろうか、だが他を誘いたくない。

 そう葛藤をしていると。


 ピンポーン。

 

 玄関のチャイムが鳴る。

「ほら、来たぞ想一。行ってらっしゃい。」

「想一、行ってらっしゃい。気を付けて行くのよ。」

「あぁ、行って来ます。」


 そう返事をして想一は外へ出る。


「おはよう、想一くん。」

「ああ、おはよう希美。」


 こうして希美と一緒に学校へ向かう。


「よっ、想一、希美ちゃん。」

「おはよ、想一、希美。」

 教室へ入ると光太と優香が手を上げて迎える。

「おう、おはよ。」

「光太くん、優香ちゃん、おはよう。」

 そう返事をして想一と希美は二人の所へ向かう。


「想一、この前は購買へ行かせたからな。今日はお前に行って貰うからなぁ。」

 光太はそう言って指を指してくる。

「あー、あったな。忘れてたわ。」

「忘れるなよ!? 馬鹿にしやがって、今度はお前が樋口一葉さんと一緒に購買へデートして来い!」

 光太が熱く言ってくる。

「あれ、新渡戸稲造(にとべいなぞう)さんじゃ無かったか?」

 めんどくさい想一は旧五千円札の新渡戸稲造さんではぐらかす。

「ちげぇよ! その人は旧五千円札の人だろ! つか今の学生は樋口一葉さんしか知らないだろ!」


 失敗に終わった。


「いや、お前も知ってんじゃん。」

「そうだけど、そうじゃない! とにかく、今日はお前が買ってくるんだよ。いや買って来て下さい。」


 最後はお願いに変わった。


「分かったよ。」

 諦める想一、だが隣から予想外の言葉が来る。

「あ、あのね。今日は……その、おぉお弁当が、あ、あります!」

 希美が顔を真っ赤にして恥ずかしそうに声を出す。


「「「えっ!?」」」


 希美の発言に想一だけで無く、光太や優香も驚く。

「えっマジで、ヨッシャー。」

 不意の事で周りを気にせず、想一はガッツポーズをとっていた。

「希美……やるじゃん。愛妻弁当ですかぁ。」

 優香は驚きから嬉しそうな表情に変わる。

「あいっさー!?」

 愛妻と言う単語に希美は裏声で変な返事をする。

 想一は内心でガッツポーズを10回程繰り返す。


 そして平静を装いながら光太へ向くと、そこには魂が抜けて年老いた光太が固まっている。


「おおぅ。光太!? 平気か!?」

 想一は光太を揺する。

「はっ、お、おう想一。おはよう。今何時だ?」

 光太は数分間の記憶を無くしたらしい。

「目を覚ませ光太、現実を見ろ。俺は、お弁当を作って貰った。つまり、購買へは行かん。」

 光太は涙目になる。

 子供か、と思いつつ想一は続ける。

「つまりだな。昼休みは光太、お前が樋口一葉さんとドゥエートをするんだ。俺は、弁当を準備しながら待ってるよ。弁当を……準備しながら……なっ。」


 ――決まった。


 想一は勝ち誇った顔で自分の席へと向かう。


「あ、そろそろ時間だね。じゃあ昼休みで。」

「私も、戻るね。」

 優香と希美も席へと戻る。


 光太はその場で立ち続けた。


 藤先生が来てもずっと……。


「田島、何があったか分からんが相談があったら乗るぞ。後でな。今は授業時間だ、座れ。」

 藤先生は光太の前に向かい優しく諭す。

「はい……。」

 涙目の光太は席へ座る。


 その背中は、好きだった人と結婚したけど、1年もしない内に呆れられ、離婚となって絶望した。そんな背中をしていた。


お読み頂きありがとうございます。

日々、皆様に楽しんで頂けるように頑張ります。


今後も引き続き、お付き合い頂けると嬉しいです。

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