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ゴブから始まるヴァンパイヤロード  作者: とかじぶんた
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第7話 一般教養ってなに?

 一般教養のスタートで挫けそうになった。


 ①魔物は基本的に弱肉強食である。

 ②知的な会話がなり立つ場合、戦闘前に挨拶をする。

 ③生殺与奪の権利は勝者にある。


 なにそれ?


 確かに森でアントに会った時もそうだが、ゴブリンとサイレント・ディアの戦闘は名乗りなどなく、ゴブリン側は狩猟をしている気しかしないだろう。どちらかというと②に驚いた。どこぞの騎士よりもよっぽど正々堂々としている。ただ、戦いを回避できれば良いと思うのだが、逃走したとしても相手側がやる気なら避けようもないらしい(つまり③が成り立つ)。


 なので、最初にお辞儀をした俺はハナから魔物の教養失格の烙印を押されるばかりか、魔物としてのヒエラルキーの底辺だと相手に認識されるらしい。まぁ、魔物の底辺であっても実力が違えばいいのではないか?と俺は思っているが、それを伝えたしたときのナスカはゴミムシ以下の視線を俺に向けた。


 「そんな貧弱な精神で魔族やるなよな」


 いままで一緒に釣りとかして遊んだとは思えない視線で、俺の机の角を蹴ってきた。魔物の常識が怖すぎる。


 「い、いや、俺だって戦うぞ?」

 「パパにも?」

 「おまっ、それ言うの?先生、先生ならナスカのオジさんと戦いますか?」


 俺の発言にナスカが固まり、先生が脂汗をかきはじめる。誰も話さない沈黙を破ったのは優秀なメイドであった。


 「スダッツよ、答えるがよい」

 

 ヒッィ!


 目の前のスダッツ先生(教養部門)が小さな悲鳴をあげた。確かに上げた!!!それにアンさんから異常なほどの圧力が放たれ、部屋全体を重苦しい空間にしている。


 「すいません。僕の冗談が過ぎました。授業の続きをお願いします」


 俺の助け舟にすぐさま飛び乗ったスダッツ(もう先生じゃねぇ)は、部屋を歩きながら魔族の常識、これまでの歴史を語り出した。ナスカは暇そうに聞いていたが、俺はどの話も初めて聞くものばかりで好奇心をひたすら満たすため質問を積極的にする。スダッツも最初は俺の質問のレベルの低さにうんざりした様子を隠しもしなかったが、自分の考察を踏まえて質問を重ねていくと「おっ、その考え方はなかったな」と感心してくれた。


 あまり勉強で褒められたことがない(小学校以来か?)俺はそれだけで笑顔になっていた。なんか勉強ってもっと面白いものだったんだろうな、と今更ながらに高校のことを思い出す。ナスカはそのうち俺とスダッツの問答に心惹かれたのか、一緒に質問をしたり考えたりするようになった。教養の時間はあっという間に終わり、昼ごはんの時間を迎える。



 終了時、スダッツがアンさんにどこかに連れて行かれた。


 俺の中に「④時間じゃ解決しないこともある」が魔物ルールとして加えられ、すぐに「⑤アンさんはただのメイドじゃない」が追加することになる。赤点はとりたくないので必死に覚えるだろう。文字通り、必死に。


◇◇◇◇◇◇◇


 「それにしてもゲインは考え方が面白いな」


 一緒にランチ中のナスカが丁寧なテーブル作法で俺に話しかけてくる。俺としては、こんなきちんとしたナイフとフォークを使うランチなんてしたことはなく、目の前のクリーム仕立ての魚に四苦八苦している最中だ。骨ごといってしまえば問題ないのか・・・食えるのか?


 「自分の考えがおかしいのか分からないが、この環境はあまりに待遇が良い。僕で恩を返すことができればいいのだが」

 「『俺』じゃないの?僕って柄でもないんだろ?」


 ニヤニヤしながらナスカがグラスを手に取り、悠然と飲んでいる。クッ、さまになる美少女だが、言っている内容が非常に腹立たしい。


 「まぁ、言葉遣いができないお嬢様のお手本になろうと『僕』と言いましたが」

 「き、きさま、いい覚悟だな!!!」


 テーブルがいい具合に揺れている。地震も魔族領で発生するのだろうか。ちなみに天井のシャンデリアは揺れていない。アンさんと目が合うがとても楽しそうに笑っている。


 「そのアホ面、つぎの戦闘訓練で泣き顔に変えてやろう」

 「あははは。無駄だ。泣く前に腫れていて気が付くのは不可能だ!!」


 とてつもない負け惜しみを自慢げに言い放ち、ナスカの度肝を抜けただけでスカッとする。「ざまぁ」な展開が何だって言うんだ、今は作戦『命大事に』の最中で、訓練で得られるのなら戦闘はいくらでもしよう。なぜか痛みに慣れているのは、あまり考えたくないが魔物になった影響かもしれない。体が心を引っ張っていく。


 『ごちそさま』をして席を立とうとすると、ナスカから定番の『ごちそうさま』についての質問が来た。


 もちろん、無視したが、よくよく考えるとお世話になっている当主様の娘なので丁寧に対応すべきかもしれない。




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