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ゴブから始まるヴァンパイヤロード  作者: とかじぶんた
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第59話 予想通りの襲来

評価&ブックマークありがとうございます。

 アインス村での暮らしも2ヶ月を過ぎた頃、予想通り村が襲来されることになる。


 「おい、うちのものがお世話になったな?」

 「貴様も魔族なら名乗るが良い、私がお相手しよう」


 すでに臨戦対戦に入っているソウベエを手で制止する。入口に来たときは俺を呼ぶくらい冷静だったのに、俺が到着すると異様に戦闘ウズウズ病の発作にかられている。脳筋すぐる。


 「うちのもの?とはどなた様でしょうか」


 俺が推定ヴァンパイヤと思われる男性へ声をかける。見た目は紳士の執事のような黒服とネクタイを締めているが、口がどこぞのチンピラである。肩に片手剣をトントン当てながら話しているが、俺には木刀持ってるヤンキーに見えた。ミスマッチに萌える方だがベクトルが余りに違いすぎる。


 「なぁ、ゲイン。あれが言っていた敵なのか?」

 「う〜ん、わからん」

 「おいっ!!おまえらボソボソ言うな。はっきりといいやがれ」


 威勢だけは良いヴァンパイヤ(仮称)に俺もカナデもゲンナリしている。ソウイチロウはなぜか腕を組み、やる気を見せているのが気になるところではある。


 「ややこしいのは抜きにしてやろうぜ!!」


 どこかのバトルジャンキーのようなセリフに俺の中の厨二ですらドン引きである。横を見るとカナデも同じ気持ちなのか目が合った。その奥にいるソウイチロウがなぜか肩を回している・・・。


 「俺はソウイチロウだ。冒険者ランクBだが良いか?」

 「ん?なんで人間がここにいるんだよ?」

 「ダメってことも無いよな?」


 アントに確認をすると「ダメってことはありませんが、非常に珍しい事態です」とシレッと言う。なぜ最初にそれを言わんのだね、君は!!


 「俺はジャンボローだ。ヴァンパイヤと名乗っておく」


 人族相手にもしっかり名乗りをあげ、サービスなのか種族まで教えてくれた。


 「ソウイチロウ、悪いけど今度な。ソウベエ行ける?」

 「私ですか?命を捨てる覚悟などいつで」

 「却下。アントは?」

 「我、余裕です」

 「了」


 アントがジャンボローの目の前までゆっくりと移動する。ジャンボローは最初こそ余裕の笑みを浮かべていたが、アントが近づくにつれて顔が引きつっていく。アントがゆっくりと普段留めている魔力と圧力を解放していく。



 「フッーーー、我はアントニオだ」

 「ジャンボローだ。参る」


 ジャンボローが肩にかけていた剣を中段に構え、いっきにアントに近づく。中段から突きを繰り出すも、アントが悠々と角で捌く。お返しとばかりに逆側の角で振り切るとジャンボローがバックステップで躱す。剣戟といっても良い打合いが重ねられる。アント、全然本気だしてないや。

 

 「ねぇ、アントって『アントニオ』なの?」

 「まぁ、正式名称はそうだね」

 「伸びなきゃいいね」

 「あぁ、その心配はなさそうだけどね」


 俺とカナデが呑気に話をしている横でソウイチロウは脂汗を流している。多分、ソウイチロウなら2撃目でグッバイである。魔物ランクで言えばSは確定だが、人族と魔族の壁はかなり厚いと思う。そして、この戦いをじっと見据えれるくらいカナデの実力が急上昇中している。アホみたいに集落の魔族と毎日模擬戦をしているものだから、誰よりも名前を呼ばれているし、ご飯に呼ばれたりしている。


 「てめぇ、本気でやりやがれ!!」


 痺れを切らしたジャンボローが大振りとなったところで、ギヤを上げたアントに首を撥ねられる。


 「クックックック、やっぱり強ぇなぁ、オイ!!」


 跳ね飛ばされた頭の後から羽が生え、自立したままの動体へと飛んでいく。しゃべってる場合じゃないと思うのだが。


 「『サンダー・レイン』」


 ジャンボローが立っていた一帯が雷の雨が降り注ぐ、間違いなく何度も直撃を受けたジャンボローの体が黒ずみ、煙りをあげている。


 「『サンダー・ボム』」


 アントの角の間に高濃度の魔力を感知すると、すぐに黒い稲妻となった球体がジャンボローに向かった飛んでいく。直撃すると思った魔法が何かに弾かれて上空で爆発を起こす。


 「ん?」


 魔族の戦いに横槍ってオッケーだっけ?上空でハーピーのような両手が羽になっている半人が何体か飛んでいる。


 「アント、それでセーブしてたのか」

 「我、集落の影の支配者となるべく・・・鍛えてまいりました」

 「あっ」


 ハーピー(仮称)がどんどん集落の皆に落とされていく。パイルドライバーなんて実戦で使っているヤツを初めて見た。地面にそのまま突き刺さり、絶命は免れないだろう。うちの住民はなぜかサムズアップして去っていった。名付けたときよりも実力は確実に上がっている動きだった。


 「あまりしごき過ぎるなよ。うちはホワイト集落なんだからな」

 「主の種族名に恥じぬよう、『ホワイト』なまま敵を血祭りに上げて見せましょう」


 いや、違う。その返り血を浴びずに絶滅させるとか目指す集落じゃないから。絶対にそんな意味で言っていないが、そもそもホワイト企業って表現がこっちで伝わるわけがない。そもそも休日の概念は現場ならともかく、商店などもシフト勤務が浸透している社会なのだ。



 「うしっ、それじゃぁ皆退避してる?」

 「ゲイン様、集落とここに集まっております」

 「じゃぁ、いくわ」



 空で残りを片付けているアントの横に風魔法を応用して立つ。一瞬で横に立ったものだからアントがビックリした顔で俺を見上げている。


 「主、我を驚かすのはもう十分です」

 「いや、それほど驚かせてないよね?」

 「本気でおっしゃっているのが怖い・・・」


 アントがなにやら愚痴っぽいことを言ってるが無視し、周囲を索敵し次々に倒していく。うちに文句がある相手に容赦はしないし、横槍した以上は覚悟してもらおう。これで取り逃して村民に被害が出たら俺は後悔してもしきれない。



 「あっ、ジャンボローに止め刺し忘れてた」

 「主、そろそろ我のストレス耐性が崩れそうですが」

 「任せたよ、もともとアントと戦ってたわけだし」


 俺は少しずつ近づいてくる気配に身構え、アントを皆の元へ向かわせた。



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