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ゴブから始まるヴァンパイヤロード  作者: とかじぶんた
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第55話 新旧

評価&ブクマ、ありがとうございます!!

モチベです。大事なのでもう1回書きます。

モチベです。

 「ゲイン様・・・。ゲイン様・・・っ、ゲイン様!!」

 「あっ、あぁ・・・ごめん。ちょっと頭にきてて痛かった?」


 アンさんの手を握ったまま冒険者ギルドを出てここまで無言で歩いていた。なるべく怒気を漏らさないように歩いたつもりだったが、街の人々が若干引き気味で俺たちを避けるくらいは漏れていたようだ。


 「申し訳ありません。私が」

 「アンさんは悪くない!!!」


 絶対に悪くないから謝らないでほしい。なんか周りからは修羅場なのか?とゾロゾロとおばちゃん率が上がってきた気がする。


 「俺は間違ったことを言っていないし、アンさんも絶対にしていない。さっ、メイプルと一緒に美味しく食べましょ」



 声を意識的にやわらげ、アンさんの頭を撫でる。天使の輪つきの茶色の髪は細く、手触りもなかなかに満足度が高い。どこともなく期待を裏切ったのか舌打ちが聞こえた。


 「ゲイン様、これはずるいです」

 「えっ?なんか言った?」


 アンさんの確かに温かい手を握り、そのまま”ピコ鳥の休息”へと向かう。すでにアンさんは俯いておらず、俺も自分の気持ちの整理ができた。今後もちょいちょい撫でて行こう、精神安定のために。




◇◇◇◇◇◇◇



 「あっ・・・ゲイン、アンさん、おかえりなさい!!」


 入口に着くとすぐにメイプルがかけてきた。マスターがいそいそとシルバーを拭き始め、4人用のテーブルに皿と温められたポットやティーセット一式が用意される。


 「やっぱりこうじゃなくっちゃね!!」


 アンさんの手を引き、席へエスコートする。アブリュート家のマナー講座が身についており、滑らかなエスコートができたと自画自賛だ。アンさんも俺のエスコートにされるまま席につき、思い出したかのようにクスッと笑う。


 「はい、ちょっと避けて〜」


 メイプルはどこにその力があるのか不思議だが、ケーキをしっかりと運びテーブルの真ん中にセットする。そのまま紅茶を皆に給仕し、ケーキに包丁を入れようとしたところで俺の顔を見て止まる。


 「えへへへ。いい?」

 「もちろん!」


 俺の返事に満面の笑みを浮かべたメイプルがスッとケーキをカットする。スッと切れてしまうあたりがメイプル・クオリティで、普通の子供はグチャグチャになる。そもそもまっすぐ切れないからな。そのあたりマスターは自覚しろよ!!!ケーキ、ガン見してる場合じゃないぞ、オッサン!!



 「それじゃっ、『いただきます』」

 「「『いただきます』」」


 メイプルが声を上げ、その後にアンさんと俺が続く。オッサンだけポカーンとしており、思わず3人同時に吹き出した。


 「お父さん、ゲインがいつも食べる前にやってるオマジナイだよ」


 フォローもできるメイプル、やっぱりできる子である。



◇◇◇◇◇◇◇



 「あのケーキという食べ物。極上でした」


 片付けをしようとしたがマスターから「せめてものお礼だ」と固辞されたため、いまはアンさんと2人で俺の部屋にいる。時間も夕飯まではまだ時間はあるものの、少しずつ街は明日の準備へ向かっているような時間帯。


 「今度はもうちょっと変化つけたいなぁ。マスターの感じだとまた作っても良さそうだし」

 「ぜひっ!ぜひぜひ作ってください!!!」

 「次作るとしても1週間以内か。集落戻ってからだと間隔空きそうだな・・・」



 ベットに寝転がり頭の後ろで腕を組み天井を見る。そうだ!!オトハ達のことすっかり忘れてた。ケーキもそのために1ホール余分に作ったのに。


 「アンさん、アブリュート家に戻るの?」


 普通に言おうと何度もイメトレしたが、とてつもなく情けない顔をしていたのだろう。アンさんがクスリと微笑むと俺の頬に手をゆっくり当てる。


 「どうしましょうか。紅葉も作れていないですから」

 「いてくれ」

 「ほんっっとダイレクトですね」


 アンさんの頬に当てた手すら熱くなっているのがわかる。その手に自分の手を重ね、ゆっくり引き寄せてアンさんをやさしく抱く。


 「無理にとは言わない。でも、居てほしい」

 「・・・少し。少し時間をください」


 アンさんはそう言い、強く俺に抱きついてから離れる。流れるように茶色の髪が俺の頬を撫でていく。


 「やだなっ!!寂しいし」

 「うふふ。そうですね。寂しいですね」


 微笑みながら言うアンさんの顔を見て本音を言ってるのが分かった。


 「まっ、待てるくらい器の大きい男だから。戻ったら甘いもの作るよ」

 「それは急いで戻らなければなりません」

 「うん、気をつけて」

 「はい、いってきます」



 窓から風が入ってくる。


 できるメイドは音も立てず現れ、人の布団に無断で潜むのも簡単で、扉の開閉も無音がデフォルトだ。ただ、去った方向が分かる程度に強くなった自分が少しだけ残念だ。



 「寂しいなぁ〜」


 言葉にしながら窓辺に立つとオトハ達がちょうど戻ってくるところだった。窓から声をかけようと思ったが、人通りが多いことを思い出し入口へ駆け下りる。タイミングよく俺に気がついたカナデが向かってくるのが見える。



 「てめぇええ!!イチャコラしてんじゃねぇよ!!」


 そのままダイナミックに飛び蹴りしてきたのを半身で躱す。


 「空手の技を素人に使うなよ」

 「()()()おまえは当たったことがねぇだろう!!」



 前世からカナデの飛び蹴りは当たったことはない。もし当たっていたらポチャの俺は大怪我していたに違いない。


 それにしてもカナデは笑いながら言うが、ホワイト・ゴブリンの頃なら当たるくらいスムーズな体術だった。5ヶ月間、運良く生き残ったわけではなく、実力で生き残ってきたのが理解できた。


 「なぁ、軽く模擬戦しない?」


 俺らしくもない提案だったがカナデが即答で了承する。鼻歌で上機嫌のカナデの後ろを俺はついていく。帰ってきたばかりなのに3人とも文句も言わずに再度南門へと移動する。前世でも勤勉な3人だった。こっちでも生き残りを真面目にやってきたのだろう、俺は思わず笑ってしまった。



 「イチャコラ、早く来い!!」


 距離が空いたカナデが振り返り大声で俺を罵倒する。勝手に『イチャコラ』とか呼び名をつけないで頂きたい。



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