第52話 再会
評価ありがとうございます。
少しエロ入ります。
「あはははは!!いやっ、こっち見るな!!ウケル、ガチウケル!!」
俺はただただデカくなったカナデを見て爆笑していた。涙で霞む視界にソウイチロウとオトハが見えた。
「てめぇ!!誰だっ!!」
倒れ込んで腹を抱えている俺の背をガシガシ蹴る、カナデ。おまえ、150cm無かっただろっ!!
結構な蹴り込みの勢いと回数に周りの酔いも覚めたのか、いつの間にか静かになった食堂から視線を感じる。カナデもやっと気がついたのか、今更、テヘペロ気味にしながら頭を掻いている。あとでケモ耳を触らしてもらうことは確定した。
「おう!!久しぶりだな!!」
「だから、おまえはだ」
「合わせろ、宿に迷惑だろ?」
さすがのメイプル嬢も状況に頭がついていけず固まっている。宿で固まったメイプルは新鮮だが、さすがに客が迷惑を一方的にかけ、しかもその本人であれば申し訳なさでいっぱいになる。カナデの肩に腕を組み、小さく呟いた。
「おぉー!!久しぶりだな、飯でも食うか?」
「オッケー、今日は俺が驕るよ」
オトハとソウイチロウにも視線を向け、4人で食堂の丸テーブルへと移動する。メイプルにチップ込みで「1週間分をそれで」とお願いすると、やっとメイプルに笑顔が戻り厨房へと向かっていった。それが契機だったのか、食堂に喧騒が戻り、いつもの宿屋”ピコ鳥の休息”になった。
◇◇◇◇◇◇◇
「いくつか聞きたいことがあるのですが」
オトハは冷静さを保ちつつ、俺の様子をじっと伺う視線は外す気がないようだ。
「モノによる。スリーサイズとかはダメ」
「ほんっっと、おまえ誰だよ!!」
オトハの冷静さと見比べるもなく、カナデがすぐに激オコになる。沸点、異世界に来て低くなりすぎて無いか?
ソウイチロウは何も話さず、腕組みをして俺を見ている。その風体だけ見るとどこぞの用心棒のようだ。護衛Aよりも優秀であることを願うばかりだ。
「オトハ、カナデ、ソウイチロウ、3人とも無事で良かった」
俺はカナデの質問に答えず、率直な気持ちを伝えた。もう異世界に来て5ヶ月くらい経っただろうか。すでに異世界として認識するよりも現実とどう向き合っていくかが大事な時期だ。これまで無事に生き残ることは、結構難しいことだと思う。少なくとも俺は何回か死を感じた。
「えぇ、ありがとう。『名無しさん』」
「あ”ぁ”・・・あぁ、『名無し』かぁー」
「・・・」
いや、ソウイチロウは何か反応を示せよ!!!オトハが俺の動画サイトで使っていたアカウント名を言い、間接的に皆に俺のことを伝える。やっぱり分かるやつには分かるのか。知っているヤツだと分かった3人の空気がすぐに軽くなる。
「どこで分かった?」
「カナデ指差して爆笑してるところ」
さすがに冷静さを保つ必要がなくなったのか、オトハが思い出して吹き出して笑った。横でカナデが目を真一文字にしてオトハを見ている。そのやり取りが懐かしく、また俺の笑いのツボをギューギュー押しそうだ。
「あぁ、もっ・・・もう笑わない。ただ、俺のことは忘れて貰った方が良いかも」
俺の言葉にカナデもオトハも憮然とした表情をする。当然、その理由を伝えなければ分からないだろうが、説明した時点でいろいろと巻き込みそうな気がしてならない。どこまで話そうか迷っているとメイプルが「夕食もってきたよー。お父さんが『結構良いモノ使ってみた』って」とプライスレスな笑顔と大皿を給仕してくれる。
俺は腕を頭の後ろで組み、椅子の背もたれに身を任せる。天井には木の目があるだけで何も答えは浮かんでこなかった。
「なぁ、ソウイチロウとオトハは最初にカナデ見て誰か分かった?」
◇◇◇◇◇◇◇
そのままなし崩し的に美味しい食事に心を奪われ、悪い顔をしたメイプルのお酒のオーダーにのったところまでは覚えている。これまでお酒で記憶を飛ばしたことはないが、久しぶりに友人たちに会えてタガが外れたのかもしれない。気をつけよ。
「『キュア』・・・あーーースッキリ!!」
体を起こしてベッドから足を下ろし、ひと伸びする。二日酔いに効く魔法に心から感謝する。早朝とまでは行かないが窓から入ってくる光の位置で朝だと分かる。ふとベッドに目が行くと女性の素足が毛布から伸びている。
「・・・えっ・・・?」
なにこれ?あ、あっ、あれか?おれ、知らないうちにやった系?まともにまだヤッた事が無いのに?ガチで?
「んっ・・・」
ヤヴァァァイ!!!起きる、起きちゃう!!!!逃げる?ダメだ。どうせ逃げてもメイプルに俺用に部屋の確保をお願いしてる。それにさっき漏れた声だとカナデやオトハでは無い。その事に気が付きひどく安堵する自分に少し笑えてくる。ここまで来て数少ない友人とヤラなくても良いだろう。
「もう葛藤は終わりですか?」
ムクっと起き上がり、毛布を跳ね除けるとスタイルの良い肢体が現れる。
「アンさん!!!!良い加減にしてください!!!」
俺の魂の叫びが戦闘メイドに届く日は来るのだろうか・・・。だが、しっかりと網膜と記憶SSDに永久保存することを俺は忘れない。
「白金貨1枚です」
「いやいやいやいや、おかしいでしょ?勝手に隠さず起き上がったのアンさんですよね?」
「隠していないことを知っているだけでチャージ料が発生します」
「そんなこといいから隠せよ!!バカメイド!!!」
問答自体が意味をなさなくなってきた。全く肢体を隠そうともしないアンさんがゆっくりと笑みを浮かべる。
「朝から元気ですね」
「うるせぇええええ!!!!」
ドォン!!!
俺の声が聞こえたのか、メイプルがドアを勢いよく蹴飛ばし、箒を持って立っていた。
「あっ・・・、ごゆっくり〜」
メイプルがすぐに俺とアンさんに向かって言うと、ドアを閉めずに走り去っていく。メイプル、大人過ぎだろ!!!
「さっ、続きをしましょ」
「最初からしてないから!!!」
「ドアを開けたままというのがオツですね」
「そんな趣味はねぇ!!」
誰だ、こんなことをアンさんにさせているのは!!少なくともアブリュート家の当主様では無いことだけは確かだ。ナスカが俺への試練としてやっているとしたら、相当性格が悪くなっているのは間違いない。
「これは自主的に楽しいからです」
俺の首へと細く白い腕を回すアンさんに勝てなかった。




