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ゴブから始まるヴァンパイヤロード  作者: とかじぶんた
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第42話 氷像祭り その1

 「もう朝か・・・」


 昨晩の美味しい料理はテンション・ゲキ上がりだった。ついでにワインも飲めたので余計に楽しかった。久しぶ・・・あぁ〜・・・うん、異世界で魔族になると気にせず飲めるのは役得だ。



 当然、帰りに酔ったネーリスさんを自宅まで送った。ただ、ご自宅に入ることは難攻不落でスキも見せず、これが戦闘なら勝ち目がないことが早々に分かったので退散することにした。別れ際に「またデートしてくださいね」とまったく想像しなかった言葉にクリティカルヒットを受けた俺は歓喜の表情のまま走り出した。



 なんか胸が熱いんですけれど。

 ゴブリン・キングですけれど。

 びっくりする歩幅でスキップするピンク頭の尖り耳ですけれど。


 そんなことを思い出しながら顔と体を『ウォータ』でしっかりと洗い、『クリーン』をかけて清潔にする。ついでに昨晩借りた?ドレスシャツと黒パンツにも『クリーン』と『ウォータ』、『ウィンド』で洗濯&アイロンも忘れない。



 「一応、明日もこの格好で商会に来いと言われてたからな」


 魔法コントロールのおかげだろう、きちんとした出来栄えに満足する。なんか妙に魔力も体力も上がっているのが気になる。戦闘経験もそれほどないのに上がるものなのだろうか。こないだのソウベエとフラッドの戦闘を見ても手抜きしてるんだろ?くらいな感じだった。どこぞの戦闘民族に種族進化したのか?



 それにアントもデカくなっただけじゃなく、魔力総量もかなり上がっていた。多分、厩舎のお姉さんに地獄のシゴキ・・・うっぷ・・・俺がジグさんに受けたのを思い出し吐き気がする。完璧にガチ・トラウマ。



 時はすべてを風化させる、それに期待しよう。まずは朝食だ。



◇◇◇◇◇◇◇



 ポルテ商会は朝からバタバタしていた。準備や運営方法をまったく知らされていないので早朝に来たのだが、皆、忙しくて俺に気がつかないほど走り回っている。


 「あっ!!ゲイン!!!」

 「なにぃ!!!ゲイン、来たのか!!」


 俺に気がついたエドが声を上げると、目をギラギラした厨房スタッフがワラワラと集まって囲まれる。


 「頼むぜ、審査員!!」


 うん、俺の今日の役目がなんとなく分かった。


 「おぉ、ゲインよ。よくぞ来た」


 どこぞのゲームの王様のセリフを思い出す。俺の職業は遊び人でいたいのにダメなようだ。勇者だけには絶対にならん!!


 「おはようございます。ポルテ会長、きちんと説明してくださいね」


 節目正しくお辞儀をし、顔をニッコリ笑顔であげる。まだ氷魔法を使っていないのにポルテ会長の挙動がガチガチになっている。


 「ゲ、ゲインよ。すまん。いろいろとあってな」


 あれ?ほんとうにポルテ会長らしくない。とりあえず、恩義もあるので氷像祭りはきちんと終わらせる。


 「氷柱の設置場所と数が必要です。あと、何本包丁必要?」


 ポルテ会長は俺の言葉に目を輝かせる。まぁ、それくらいは仕方がない。こちらからもお願い事があるからね。


 「増やせるのか!?」

 「増やせます。あとでお願い聞いてくださいね」

 「恩に着る!!8本ほど増やしてくれ、品質はあの3本以下のもので」

 

 また難しいことをサラッと入れてきた。ガチ鍛冶士じゃないので品質を下げて造るのをやったことがない。とりあえず鍛冶炉を借りるためにもギブリの店へと向かう。




◇◇◇◇◇◇◇


 『ゲインなら炉まで来い。他は入るな!!店主:ギブリ』



 ・・・。


 店に張り紙が貼ってあるがこれで良いのか、ギブリよ?俺はカウンターから炉へ続く道を歩きドアを開ける。


 「遅い!!早く手伝え!!」

 「えっ!?何言ってるの?俺はミスリル包丁作成しなきゃダメなんだけど?」


 ポルテ会長からギブリにノミの追加生産のオーダが入ったらしく、すべて同じ程度で60本新品を仕上げて欲しいとのこと。ギブリもゲスト参加するため主催者に断ることはできず、昨日から炉で作成していたらしい。鋳造(ちゅうぞう)で作成しており、あとは研ぎの工程が10本残っているとのこと。


 「これ詰んだんじゃね?」

 「バカやろう!!鍛冶士が簡単に諦められるか」


 罵声を飛ばしながらも手を休めないギブリ。俺の研ぎとは次元が違いすぎて本当なら目に焼き付けたいのだが、いかんせん自分の包丁を作らなければならない。ギブリの鋳造型枠の精度の高さに感動ものである。


 「ギブリ、この型枠転用していい?」

 「あ”ぁ”!?好きにしろ!!!」


 俺の時は研ぎ中に答えたら殴るとか言っていたが師匠は格が違う。なにも教わってないけれど鍛冶の師匠である。ギブリの型枠はミスリルで出来ていた。魔法親和性が高いミスリルは異様に魔力を使うが変形させることもできる。


 

 「んなぁああ!!!」

 

 型枠を両手で掴み、いっきに魔力で包み込む。魔力が飽和したミスリルがつぎつぎに光輝き、ノミ4本分の型枠を包丁3本分の型枠へと変化させる。ごっそりと抜ける魔力と繊細な魔力操作が必須条件だ。



 「なっ、なんてことすんだ、おまえ」


 少し後ろで作業をするギブリ。師匠、研ぎの手が止まってます。


 「はぁはぁはぁっーーーー。疲れたぁ。あとはこれに流し込めばいけますね」

 「おまえ、ミスリルの温度差考えてるのか?」

 「はい、そこは粉末状にした魔鉱石を型枠側に散布して作ろうかと」

 「馬鹿げた魔力量と神業みたいな魔法操作だな。久しぶりに良いもの見た」


 やばい、涙出そうなんだけど。はじめてギブリに褒められたかも。


 ジワッと涙腺を揺らされていると背中に衝撃が走る。


 「早く仕事にかかるぞ!!」

 「はいっ」


 ギブリの研ぎを手伝い、型枠にミスリルを流し、ゴリゴリの力業で冷却、再加熱、冷却、研ぎ処理をする。すでにギブリと俺は無言でお互いに何も言わずともテキパキと鍛冶炉周辺を動いていた。



 追加包丁9本、ノミ60本がすべて出来上がったのは昼前だった。




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