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ゴブから始まるヴァンパイヤロード  作者: とかじぶんた
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第32話 冒険者ギルドでの再会

評価&ブクマありがとうございます!!

燃料に変え、キーボードで音を鳴らします。

 暑苦しいおっさん達に別れを惜しまれつつポルテ商会を後にする。コーネリアさんから握手を求められ、握った瞬間に「約束忘れんなよ」と怨念を込められた。どちらが依頼している立場なのか、すでに境界線は無くなり、あるのは食べ物への執念だけである。



 商会にほど近い冒険者ギルドに入り、そのまま依頼用掲示板を覗く。朝早くはギルドが混むらしく、料理を教えて丁度いい時間調整になった。魔物系討伐と薬草系採取のお決まり依頼が最初はいいかなぁ。そんなふうに掲示板をみていると横から聞き覚えのある声が聞こえた。


 「ったく、街道の件で確認って何でいまさら呼び出しくらうんだよ!」

 「あの時の魔物強かったな」

 「っ、冗談じゃねぇ。アイツ、誰だったんだ?」


 おいおいおい、俺に服を買って来なかった2名様じゃないか。


 「おはよう」


 イケボで爽やかに声をかけたところ、すぐに二人は話題の主を思い出したらしく小刻みに震えている。


 「冒険者ランクDで最初に受ける依頼を探してたんだ。()()()()()()()()()()()()()()()()()

 「おっ、おっまえ・・・」

 「なんでここに居るんだよ」


 さすがに周りに配慮しているのか俺に対する声は小さい。


 「服のお代は返さなくていいよ。先輩達は冒険者ランクなに?」

 「なんで魔物が平然といるんだよ!!」


 堪えきれなかったアツシの声が冒険者ギルドのホールにこだまする。ざわつき始めたパブスペースから視線が集まってくる。


 「言っただろ?俺はDランク冒険者だ。おまえらに文句を言われる筋合いはない」

 「名前を教えてくれ」


 ケイゴが俺にストレートに名前を聞いてきた。アツシに比べたら随分と冷静な立ち回りだ。使用するスキルが魔法使い系なのもわかる気がする。


 「ゲインだ。あと、魔物じゃ無く魔族な」


 偽名でも無いが冒険者登録時の名前をそのまま伝える。ケイゴは俺の名前に何も反応をしめさない。学校でゲインと言われても何も思い浮かばないだろう。少なくともケイゴには分かるはずもない。



 もう話すことも無いので俺は受付カウンターで魔物討伐と薬草採取の依頼手続きをする。シグルさんが丁度良くカウンターにいたので挨拶をする。短い会話だったが数少ない知り合いと話せることは、ボッチ生活が長い俺には心の潤滑剤になる。とりあえず、南門を出て街道外れの西の森へと向かおう。



◇◇◇◇◇◇◇



 西の森での討伐対象はグリーン・オークだ。討伐対象はC+で俺のランクよりは上だが、他に良さそうな魔物討伐が見つけられなかった。多分、魔族の森でもオークを狩ってたから大丈夫だろうという安直な発想で依頼を受けた。


 「おっ、いたいた」


 森にたどり着くとすぐにグリーン・オークを索敵で見つける。結構な個体数が森にいる、そして冒険者らしき気配もかなりいる。


 「あまり獲物が被らずに討伐した方がいいな。揉め事は増やしたく無い」



 西の森の街道付近で狩りをする冒険者が多く、森の奥へ駆け抜けていく。身体を久しぶりに動かし気持ちがいい、こんな感情は前世のポチャ時代にはあり得なかった。肉体が精神を支配するのか、精神が肉体を操るのか謎だ。



 暇つぶしみたいな疑問を浮かべながら3体のグリーン・オークを見つける。



 「一応確認ね。ゲインだ。討伐する」

 「グルァウアアーー!!!」


 返答の代わりに棍棒を片手に持つ手前のグリーン・オークが襲いかかってくる。後ろの2体は俺を挟むよう左右に分かれた。会話はできないものの、知恵はいくらか回るようだ。



 ゴウン!!!


 振り抜かれた棍棒が地面を抉り、土煙をあげる。躱さずに腕を切り落とそうか迷ったが、血抜きに影響するため後ろに回り込み、ダガー を首筋からスッと引く。



 棍棒のヤラレ方に勝ち目が無いことを悟った左側のヤツが逃げ出した。右側はそのまま身体強化をして俺に殴りかかってくる。魔法使えることに驚きつつ、両腕をクロスして試しに受け止める。威力はそこそこで、踏ん張っていた足が後ろにズレた。


 「うん。全然余裕」


 動きが止まったグリーン・オークを投げ飛ばすと勢いよく何本か樹を押し倒した。受け身も取れず気を失ったのか、すでに絶命したのかは不明だが、同じくダガーでとどめを刺す。逃げた1体は追いかけはせず、仕留めた2体を樹に括り付けて血抜きを行う。この世界、恐ろしいことにオークの肉も立派な食用だ。皮は加工して鎧の素材にするし、魔石もあるからグリーン・オーク討伐の報酬は良い。



 そうだ。俺にも魔石があるのか・・・。



 ちょっと嫌だなぁ。C+のグリーン・オークでこのレベルなら、俺ってAランクくらいの魔石だろうか。Sランク冒険者とかいたら狩られるだろう、あまり目立たず、人族に敵対せずにやっていきたい。魔族と人族の一番の違いは、相手に対する執着というか、執念だろう。


 魔族は基本的に強ければ相手を敬う、というか弱肉強食の世界で、私怨とかあまり聞かない(当社5ヶ月未満魔族調べ)。ただ、人族はきっと違う。魔物に親を殺された子は、冒険者になったときに討伐依頼に傾倒するだろう。この辺りのことはアブリュート家で色々と考えてみたが、俺自身がどう思うかはいまのところハッキリしない。



 人族と魔族の間で心が揺れる。



 まっ、なるようになるか。


 「行けばわかるさぁ〜」


 血抜きを終えたグリーン・オーク2体を括り付けた樹を担いで森をでる。薬草採取の依頼を忘れていたことに気がついたのは南門に着いたところだった。



◇◇◇◇◇◇◇



 「おい!!!ちょっと待て!!」


 南門へ近づいていくと門兵に大声で止められ、ものすごい剣幕で俺に向かって来る。なぜか後から他の門兵も集まってくる。


 「どうかしましたか?」

 「はぁはぁはぁ、どうかしたか?じゃねぇ!!お前、グリーン・オークの討伐に行ったのか?冒険者ギルドから何も聞いてないのか?」

 「えぇ〜と、肉と皮、魔石が素材になると」

 「なら丸ごと2体も街道つかって担いでくるな!!血の臭いで他の魔物がくるだろうが!!』


 滅茶苦茶大声で怒鳴らなくても聞こえるのだが、門兵はゲキオコでこちらの言葉を聞く余裕もなさそうだ。


 「一応、血抜きはできてます。あと、『クリーン』魔法で移動中もキレイにしてたので、血の匂いも問題ないかと」


 俺の言葉に理解が追いつくまで時間がかかった様子で、ゲキオコ門兵は俺の通ってきた道とグリーン・オークの状態を確認する。少なくとも今は血が落ちるようなことはない。


 「ここまで非常識なヤツはリヒト以来だな」


 感じの良い方の門兵(名前知らん)が長く息を吐きながら言い、ゲキオコの門兵がそれに賛同する。


 「あのっ、『リヒト』って?」

 「あぁ、聞こえてしまったか。前にゲインと同じく魔族の森から来たダーク・エルフの冒険者だ」

 「かなり強かったんですね」

 「強さだけで言えばずば抜けていたな。少しだけ、おまえに雰囲気が似ている」


 懐かしい名前を聞いた。もし俺の知るリヒトだとしたら、前世のときの数少ない友人、鏑木(かぶらぎ)がオンラインゲームで使っていたキャラクター名である。もしかしたら本人かもしれない。


 全然意図しないかたちで情報を得て、少しだけ説教をくらってから街に入る許可が下りる。他の冒険者は代車を手配して運び入れていたが、そっちの方がよっぽど街道を汚していた。ベテラン門兵はそのことに気付いており、苦笑しているのが印象に残った。





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