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ゴブから始まるヴァンパイヤロード  作者: とかじぶんた
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第14話 狩りと戦闘

 「ナスカ、そっち行ったぞ!!」

 「おう!!『ファイヤ・ボム』」


 ナスカの方へ向かったゴブリン・ジェンラルが爆炎に飲み込まれる。凄まじい熱量だが周りに飛び火することは無く、そのエリアだけ切り取られたように焦土と化す。


 「報告よりもゴブリンが多く無いか?」

 「まぁ、すべて焼き尽くせば良いだけだ。ゴブリンなど恐るるに足らん!!」


 手綱を片手に剣を掲げたナスカは絵になる。ちなみに目の前の俺もゴブリンなのだが、その辺りの配慮は全く無いようだ。まぁ、俺も同族だろうと既に10体程度は魔法で処理している。物理はまだ剣も使い慣れていないし、実戦で試す気にはならない。ナスカに1本取れてからにしようかな・・・。いつになるかは気にしたら負けだ。


 森を進み少し開けた場所で小休憩を入れることにした。こちらはナスカ、俺、アント、バーム(ナスカの愛馬)の編成である。他にも数名従者が森に出ているとのこと。もしものときは緊急信号を飛ばせばいいと話は受けているが、ナスカと俺を2人で組ませるのはどうかと思う。


 「ナスカ、これってゴブリン以外の足跡もあるな」


 休憩の広場に残された足跡を示すとナスカは怪訝な顔をする。


 「あぁ、間違いない・・・。この辺りにある村だとオーガか、しかも子供だな」

 「おまえも十分子どもだと思うが・・・魔法はやめろ!!ガチであぶな、って危ないって!!!」


 ナスカの『ファイヤ・ボム』を俺が『ファイヤ・ボール(特大)』で相殺する。


 「無駄に魔力使わせるなよ。これまでで1番魔力減るわ」

 「余計な、不用意な言葉を使わないのが身のためだぞ。森での事故はわからん」

 「どこにもミステリィの要素などない!!犯人はお前だけだ」

 「アホなことはさて置き、ゲイン、どうする?」


 ナスカも真面目に考えているのか、目の前で両腕を組み、足でリズムを刻んでいる。


 「俺からの提案だが、まず様子を見に行こう。いつでも撤退できる前提で動き、撤退に失敗したら即緊急信号を使おう。決して俺たちだけで解決しようとしないこと。いちばん嫌なのは人質として連れ去られた子を使われることだ。それなら時間は必要だが、大人数を使って一気に制圧した方が良いと思う」

 「うむ、妥当なところだな」

 「お互いに冷静じゃなくなる可能性もある。相棒にも怒ってもらうくらいは許容しておいた方が良い」


 どうみてもバーム(愛馬)はナスカに遠慮している。付き合いも長いだろうに、もっと連携できると思うのだが。

 


 ルドルフさんが用意してくれたサンドイッチを皆で食べ、水分補給したところで設置した簡易かまどを壊す。アントが好き嫌いをしなくなっていたことに驚いた。俺の意図を汲み取ったのかドヤ顔でこっちを見ているのが腹立たしい。



◇◇◇◇◇◇◇



 全員ゆっくりと徒歩(馬鹿コンビは元々歩きだ)に切り替えて痕跡を追う。ハンターのような気持ちになるが、逆に狩られる可能性も残っていることを念頭に入れる。俺の油断でナスカに怪我などされたら一生目覚めが悪くなる。半身ずれてナスカの後ろを周囲を警戒しながら歩く。妙な視線、多分3人くらい感じる。


 「ナスカ、視線を感じないか?」

 「ん、なに?ゲイン、ビビってるの?」

 「いや、そうじゃないんだが・・・」


 そんな会話をしていると視線は感じられなくなった。逆に会話でなくなる方が不自然なんだが、あまり敵意みたいなものを感じない。いまは追いかける方を気にすべきか・・・。


 それからしばらく獣道を歩き、途中でアントとバームには厳しい道幅となったので小休憩した場所まで戻ってもらうことにする。少し先に複数の気配が感じられる。


 「もう少し先にいるね」

 「あぁ、ここからはサインで行こう」


 簡単なサインを決め、少しずつ進んでいく。森は入り組んでおり住んでいた湖近辺とは気配が違う。何よりも日差しが入る場所が少なく、鬱蒼としていて全体的に暗い。


 ナスカが指2本を左右に振る、『止まれ』だ。あっ!!俺、指4本しかないじゃん!!!全く関係ないことで焦ってしまう。すっかり人族の気持ちでいた。


 そんな動揺をナスカが知る由もなく、ナスカの視線の先を俺も藪から覗く。少なくとも角が生えた子どもが3人、それぞれ赤、青、黄色の髪で、まるで信号みたいだ。少なくともここまで喚き声が聞こえるのだから元気なのは間違いないだろう。


 左右注意

 散開


 次々にナスカがハンドサインを出しナスカと速やかに距離を取る。先ほどまでいた藪に矢が5本刺さるのが見える。


 もう見つかってるのかよ、斥候を見逃してたのか?


 ナスカはすでに魔法を放っており、近くで焚き火を囲んでいたゴブリン5、6体がまるごと消失する。


 「ナスカ、魔力切れに注意しろ!!奥に50はいるぞ!!」


 ナスカの方を向いていたゴブリン達が俺の叫び声に反応する。接近戦は嫌だったが諦めよう。腰から拝借した剣を抜き、ナスカ相手に使っていた剣術もどき(剣道の成績は良かった。瞬発力だから)で斬り倒す。


 「思った以上にグロいし、ヤッば!!!斬れすぎだよ、この剣」


 謎の威力で相手を斬り伏せていく。ナスカとの模擬戦を考えると、ゴブリンではスピードもパワーも比較対象にならない。


 グギャウガウ、ガガキギギャ


 結構な数のゴブリンに囲まれつつあるが片っ端から切り倒していくと頭に声が響く。


 『種族進化の上限に達しました。選択が可能です』


 知らねぇよ!!!この囲まれた状態でなに


 『種族進化の上限に達しました。選択が可能です』


 ほ、保留!!保留する。


 『保留により、種族進化Lv2となります』


 え”ぇ!?ちょっとイミフな発言やめてくれ!!!って、こっのぉお!!


 右から来たゴブリン・ウォーリアの剣をバックステップで躱し、引き戻す前にこちらの剣を叩き込む。ナスカの方を様子を確認すべく、いったん、上空へ風魔法を併用して飛びあがる。


 「『ウィンド』」

 「きゃぁ!!」


 ナスカを見ると同じように囲まれつつあるが、やっかいなことに仲間のゴブリンを気にせずに範囲魔法を放つヤツがいた。


 「『ファイヤ・アロー』」


 ジャイロ回転をイメージし、魔力を放射すると気持ちの良い直線と速さでゴブリン・マジシャンの眉間へと突き刺さる。


 「ゲイン、ありがと!!」


 こちらを振り向くことなく、ナスカは両手に短剣を装備した。あぁ、無双が始まる・・・。もう心配しなくて良さそうだな。


 着地地点で絶賛歓迎中のゴブリン(大)は種族は不明だが、無駄にマッチョで他のゴブリンよりもでかい人型だ。話してもおかしくはないのだが、いかんせん「ゴブゴブ」しか言わない。一応、名乗りを入れてから相手の棍棒と剣を交わ・・・断ち切った。後で絶対に武器のことを確認しよう、不安でしょうがない斬れ味だ。




 「粗方終わったね」


 途中からナスカ無双が始まったので、俺は周辺だけ片付けた後は子ども達3名の保護をしていた。ナスカにヘイトが集まりすぎてて、俺は隠密的に動いていたつもりだが成果は不明である。子ども達の方は普通に俺に気がついていた。


 「まぁ、ナスカさまさまだ」

 「えっ!?なに?ちょっと聞こえない」


 明らかに聞こえていた世辞をもう1回聞きたいらしい。ニマニマして耳に手を当ててまで聞きたいのだろうか・・・。


 「ナスカのお陰だ。信号弾を使おうかと思ったくらいだし」

 「正直、ゴブリン・マジシャンやってくれたから助かったんだよね。そこから油断しないようにしたし」

 「油断だけは頼むからしないでくれ。俺に悲しい報告は絶対にさせるなよ」

 「はいはい」


 すでに興味が無いのか、ゴブリンの死体を1箇所にまとめてるためポイポイと投げている。このままだと腐臭が酷いことになるだろう、俺も子ども達も手伝うことにした。




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