第11話 魔法と絡める
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朝食に珍しくデザートが振る舞われるとのお触れ(?)が出ており、ナスカは見るからにソワソワしている。これだけ見ると年相応なのだが、話すと少年、戦闘力は大人も真っ青である。将来は美人確定だが恐妻家になるであろうことも確定である。
「それでゲインがこれを作ったのは誠か?」
「はい、お口に合えば幸甚です」
「・・・ふむ、では頂こう」
すでにデザートの時間を迎え、当主はいつもなら軽くコーヒー1杯を飲む程度とのことをアンさんから聞いている。口に合えば良いが、合わないからって殺されたりしないよな?妙な緊張が俺を包む。
「んん!!おいしいよ、これ。普段のプリンよりも甘苦い?って言うの?私は好きよ」
手放しで褒め称えるナスカが目の前でスプーンまで舐めている。先ほどまでとは違い行儀と言葉遣いが悪くなってる。
「ふむ。苦さと舌触りが新鮮だな」
その言葉のあと、当主は無言のまま完食してくれた。たまに作っていたお家プリンが役に立って良かった。
「ところで、このカラメルはレシピをオープンにするのか?」
「どういうことでしょうか?」
「アン、ゲインにあとで説明しておくように。ゲインの好きなようにして構わん」
「はい、承りました」
謎を残したまま当主は席を立つ。アンが後で説明してくれるとのことだから、俺は今分からなくても問題ないだろう。それよりも俺たちの食事が終わったからか、アンが自分のプリンを早く食べたいという願望が圧力へと変わっている気がする。
「午前は魔法の講義で、午後からはそれぞれバラバラの講義となります」
ナスカの後ろに控えていた白髪の執事が控えめな声でナスカと俺に伝える。アンさんとは対照的な雰囲気だが、いかにもな執事である。俺が妙齢のオッサンになってもあんな雰囲気はでてこないだろう。いまのところ方向性としては、ぬいぐるみ系で人気キャラを狙うしかない。
◇◇◇◇◇◇◇
魔法の講義も講師がつくと思っていたが、そのまま白髪の執事が講師としてナスカと俺の前に立っている。
「ナスカお嬢様の魔法適性は把握しておりますが、ゲイン様の能力を知り得ません。教えて頂けますか?」
「えっと・」
「私のことはジグとお呼びください」
多分、『アナライズ』はすでに当主様がされており、俺の能力などすべて筒抜けていると思うが、便宜上の会話でしかないだろう。それか・・・試されているのか。
『ステータス』を念じる。
名前:ゲイン・シュバルツ
種族:ホワイト・ゴブリン(亜種)
適性:光魔法適性、火魔法適性、水魔法適性、体術適性、鍛冶技術、種族進化
スキル:言語操作Lv 5、魔力操作Lv 3、体術Lv 4、光魔法Lv 2、火魔法Lv2、水魔法Lv2
特技:種族進化Lv1(23/100)
「ジグさん、僕の適性は、光、火、水、体術と鍛冶になります」
「結構多いですね。得意な特性はありますか?」
「正直、どれが得意なのか分かっておりません。この適性以外の魔法は使えないのですか?」
「その辺りから講義が必要なんですね。わかりました」
そうやっていくつかの質問をすり合わせることで、ジグさんは俺の持つ知識とレベルを把握してくれたようだ。できる執事は会話も時間も無駄にしない。横でナスカが暇すぎたのかアクビをしている。
「これから私が『アナライズ』をゲイン様にかけます。不愉快な感触が続くと思いますが、その状態で自分が使える魔法をすべて私に撃ち込んでください」
結構な脳筋発言な気がしたが、それで魔力の廻りや発動までにかかる時間などで、個別の特徴を掴むとのこと。もうジグさんってば万能すぎじゃないだろうか。しかも教え方も非常にやさしい。
この時は本当にそう思っていた。・・・ただ、そう思っていた俺が馬鹿だったのは間違いないだろう。
◇◇◇◇◇◇◇
もう無理!!動けん!!!というか、魔力切れとはこのことか?と鈍い頭痛と車酔いを足したような状態で考える。あれからジグさんに適性のある魔法をいくつか教えてもらい、それをまたジグさんに撃ち続ける。すべて魔法が成立し、撃ち終われば次の魔法を教えられる無限ループへと突入した。3回目くらいで「これあかんやつだ」と気がついたが、自分の魔法の威力も跳ね上がっていたので調子に乗った。
ナスカが「結構やるじゃん」という戦闘系で初めてお褒めの言葉を頂いたところで終了となる。
「ま、また、俺は気を失い、午後からの講義がでられなくなるのか・・・」
地面の冷たく硬質な感触が頬に伝わる。
「午後からは鍛冶の講習なのですが難しそうですね」
アンさんが朝の意趣返しのつもりなのか、とてつもなく残念じゃなさそうな顔をこちらに向けている。
まだだ、俺の専用武器を作るまで何としてでも気を失うわけには・・・
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「あっ、限界を超えてしまいましたね」
「アンよ、これほど簡単に限界を超えるなど通常あり得ぬぞ。ゲイン様はいったい何者なんだ?」
「私には何もわかりません。当主様の命に従うのみでございます」
「左様か。失言であった、忘れてくれ」
「お気持ちは十分に察します。私もカラメルには心を奪われましたから」
ジグは『アナライズ』で隅々までゲインの魔力循環と発動の特性を観察していた。ナスカお嬢様は天才と呼ぶに相応しく、いずれ自分を超える能力をお持ちだと確信していたが、ゲイン様については正直どこまで伸びるか測ることすらできなかった。この成長の仕方はあきらかに才能で語ることはできず、異常であり、アブリュート家に将来遺恨を残すことも頭に過ぎる。
「それでも当主様の御命令である」
すでにアンにお姫様抱っこをされゲイン様は自室へと戻られている。ナスカお嬢様も魔法の鍛錬には乗り気であるが、今日はよりノッテいたことは間違いない。誰にも聞こえない独り言をつぶやき、ジグは当主への報告へ向かう。




