第0話 プロローグ
よろしくお願いします。
「赤、青、黄色のどれにする?」
目が覚めると頭に声が響いた。俺・・・あれ?ここどこだ。
「赤、青、黄色のどれにすると聞いている?早く選ぶがよい」
焦燥する俺を理解はするが、察する気はないという意志が込められた声だった。
『えぇ〜、と。色を選べと?』
「そうだ」
『ちなみに色は何に関係しますか?』
「最初に配属する国が決まる」
国・・・そういやクラス研修のバスに乗ってたのにな。ん?国って!!!
『国ってまさか異世界転生か?』
「・・・察しがいいな。そちらでいう異世界転移・転生というものになる」
『じゃぁ、ヴァンパイヤ!!ヴァンパイヤに俺はなる!!!!』
「・・・」
自分でも驚くほどテンションがあがっていた。こんなチャンスは2度と来ない。自分の目の前の境遇はいつも読んでいたラノベのようだ。これからの不安要素よりも「俺ならヴァンパイヤ一択だな」とずっと独り言を漏らしていた夢が叶う。
『ってあれ?なにも答えてくれないけど、ダメ?』
「国を選べと言っている。種族は人族に類するものになるだろう」
『ヴァンパイヤは人族でしょ?人型だよ?あっ、あの、蝙蝠になれますか?』
断っておくが俺はクラスで地味系ぽっちゃり型、だが、動けて踊れるデブである。中学時代にそのキレッキレの動きがあまりに気持ちが悪いと評判になり、一時期、Youtu○eにアゲラレそうになった過去がある。欠点は持久力が著しく低いこと。20mダッシュならいいタイムが出るだろうし、バスケなら3分は持たない。
「国を選べと言っているのがわからないのか。こちらで決めて良いか?」
『あっ、あの。転生先の神様なんですよね?国は決めてくださって構いません。どうか、どうかお願いします。神様、ヴァンパイヤになりたいです!!』
「ヴァンパイヤになったら何がしたいんだ?」
『ウィンウィンしたいんです。美形のヴァンパイヤに魅了された女性の美しい女性の足を」
「残念だがヴァンパイヤは無理だな。ただ・・・」
神様らしき声に人間味が込められていた。無性に喉が渇く。
『ただ!!』
「ゴブリンなら行けるそうだ」
『ゴッ、ゴブリン!!!?ゴ、ゴブリンってあのゴブリン!☆▲!?』
「そう、ゴブリンだ。転生はゴブリンで良いな」
『いやいやいやいやいや、詰んでるよね?神様、ゴブリン1匹転生って意味ないでしょ?無駄な神力でしかないでしょ?普通のポップでいいでしょ?』
「ゴブリンか・・・初めてだな」
神様の顔は見えないが絶対に悪い顔してる!!ちょっ、ほんと神様なのかよ!!!!!
『ねぇ!!!ちょっとゴブリンで進めないで!!お願い、死んじゃうから。いや、もう1回死んでるみたいだけど、意味ないでしょ?チャンスを下さい。努力は惜しみません。ヴァンパイヤになるチャンスを!!』
「・・・それでは期待しているぞ、ゴブリン。転生先は魔界だ。スキルはこちらで考えておく」
最後に随分と重要な話があった気がしたが自然と意識が遠のいた。視界が暗闇に閉ざされていくなか、俺はどこか冷静に「ゴブリンだけは嫌だ」と
◇◇◇◇◇◇◇
「しかし、あそこまで勝手に決めたのに我に文句を言わなかった者は初めてだな」
すでに最後の転生者の転移先も決まった。通常、そこまで転生者や転移者に関心を払うことはない。大体の転生者は仲良く行動し、多かれ少なかれ世界の糧になる。その変化こそが、観察そのものが神の好奇心を刺激する。
「2人もいること自体がな・・・」
無機質な灰色の空間で声が漏れる。聞こえるものも、聞いているものもいない。